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クラブを”仲間同士”が”繋がれる”場に! 山形県4Hクラブ会長が見せた農業とクラブ活動への熱意

夏場はときに猛暑となり、冬場にはたっぷりと雪が積もる。厳しくも変化に富んでいるのが、山形県の気候だ。県内では、米から果樹、山菜まで豊富な作物が作られているが、その一方でさまざまな課題が残されているという。山形県4Hクラブの会長・横沢賢一郎さんに聞いた。

メイン画像:「山形県4Hクラブ」の会長・横沢賢一郎さん

販路拡大に
積極的に取り組む日々

山形県は、置賜、村山、最上、庄内の、4つの特色ある地方に分類される。横沢さんが拠点とするのは、山に囲まれた盆地であり、豪雪地帯にあたる置賜地方だ。置賜地方の中心部にあたる米沢市で、横沢さんは、リンゴや桃、ラ・フランスを栽培している。

「さらに詳しく説明すると、私の農園は、米沢市の西部にある館山地域にあります。館山地域は県内で一番古いリンゴの産地で、1876年頃からリンゴの栽培が行われています。また、この地域で生産されたリンゴは『館山リンゴ』と呼ばれ、米沢市の特産品の一つとされているんですよ」。

「横沢果樹園」で栽培されている館山リンゴ

現在、創業1931年の老舗農園「横沢果樹園」の園主をつとめる横沢さん。大学卒業と同時に就農したため、農業の経験年数は約10年になると振り返る。

「私が20歳の時、当時の園主だった父親が他界しました。中学の頃から、“いずれは農家になろう”と決めていたこともありますが、後継ぎが僕以外いなかったため、卒業後すぐに就農する流れになりました」。

家業を継ぐかたちで就農した人は、多くの場合、家族から農業を教わることができる。しかし、家庭内で唯一の農家だった父親を亡くした横沢さんは、何の後ろ盾もない状態で農業を始めることになった。ほぼ手探りの状態で果樹の栽培を始めたため、就農後10年ほど経つ現在も、農法に関しては確立されていない部分があるという。

また、例年にはないほどの大雨が降るなど、年によって気候が異なること、燃料や農薬といった物資の価格上昇も、不安要素のひとつになっていると話す。

「市場では売り値が決まっているので、農協をとおして販売している以上、収益の増加は見込めません。経営を維持するうえで販路の拡大は必須なので、近年は直売に力を入れたり、地元の飲食店に直接卸したりしています」。


艶やかに色づいたさくらんぼと桃



些細な悩みも
共有できる仲間づくりを

「山形県4Hクラブ」は、東北地方の4Hクラブのなかで、もっとも会員数が少ないクラブ。横沢さんによると、現在の会員数は、全部で35名ほどだという。

「あまり若手の就農者数がいないのが、会員数が少ないことの最たる理由ですが、若手を中心にコミュニケーションを求めない人が一定数いるのも、理由の一つだと思います」。こう、横沢さんは分析する。

農家を営んでいると、経営上の壁にぶつかることはあり得るもの。また、先代をはじめとする親族との摩擦など、人間関係のトラブルに悩むケースも見受けられる。

「『山形県4Hクラブ』では、技術や経営方法を共有するだけでなく、人間関係の悩みについても話し合っています。どんな内容でも構わないので、悩みを抱えてしまったら、ぜひクラブの門を叩いてほしいですね。クラブには同じような立場にあるメンバーがいるので、解決や緩和につながる話が聞けるはずです」。

今後横沢さんは、“仲間同士の繋がり”に重きをおきながら、会長としてクラブを指揮していく予定だという。


より良い食味を求め、工夫と改善を繰り返す日々

自身が中学生の頃、圃場で働く父親の姿に魅力を感じ、農家を志したという横沢さん。苦労や改善点はあるものの、農業に大きなやりがいを感じていると話す。

「果樹を直接買ってくださった方から、後日『おいしかったよ』と連絡をもらったり、卸先のスーパーのスタッフさんから『果樹が好評でした』という話を聞いたりすると、本当にうれしいですね。よりおいしい果樹を届けよう、と、俄然やる気になります」。

農業と4Hクラブに対し、十分な熱意をもつ横沢さん。きっかけ次第で、農園もクラブも、大きく成長させられるだろう。今後の動向に、引き続き注目したい。


PROFILE

横沢賢一郎さん

1987年山形県生まれ。大学卒業と同時に、「横沢果樹園」に就農。2016年4月に「山形県4Hクラブ」の会長に就任。趣味は一人旅・もの作り。
 

DATA

4Hクラブ(農業青年クラブ)


Text:Yoshiko Ogata

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