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IoT導入でトラブル対応の迅速化へ! スマホですべてを「見える化」した注目の養豚場

世界的な潮流となっているアニマルウェルフェア。快適な環境下での飼養管理のため、そして労働力不足のなかでの効率化のため、注目されているスマート技術の活用について、学んでみよう。

メイン画像:2代目養豚家の日高義暢さん。「日本の養豚を衰 退化させないためにも、うちの事例をパッケー ジングして普及していきたい」と意気込む。

豚も人も
幸せな養豚を目指して

宮崎ブランドポーク認定豚肉として知られ、数々の受賞歴を誇る「まるみ豚」。生産を手がけている「協同ファーム」が、IoT技術を導入したのは約2年前のことだ。そのきっかけについて、代表取締役の日高義暢さんは、「トラブル対応を迅速化したかったから」と話す。
 
「当社では数年前に、従業員全員にiPhoneを支給し、始業の挨拶から台帳、伝票の共有まで、業務連絡を『LINEWORKS』で行うようになったことで、飛躍的に効率化が進みました。設備や機械のトラブルも、即時にLINEグループに通知が届くようにできれば、補修作業の迅速化、回復時間の短縮化に繋がるのでは、と考えたんです」。 
 


一頭あたりに十分なスペースを確保する豚舎。アニマルウェルフェアに基づいた肥育を行う。

 
水道管の破裂や凍結など水回りの設備をはじめ、養豚の現場に機械トラブルは付きものだ。日中ならトラブルにすぐ気づき、対処することができる。しかし、従業員不在の夜間はそうはいかない。
 
朝、豚舎に行って初めてトラブルを認識するわけだが、時すでに遅し。水浸しになった餌は使い物にならず、水に濡れて体温が下がった豚は体調を崩し、最悪の場合、命を落とす。人件費や修繕費用などを含めると、被害総額がひと晩で数十万〜数百万におよぶこともあった。



IoT技術のおかけで
豚と向き合う時間が増えた

「通知機能さえあれば、夜間でも即座に対応ができるのに」と考えた日高さんは、スマホで豚舎の稼働管理をする方法を模索。市場には実用的な既存サービスがなかったため、IoT・AIソリューションを得意とする「株式会社システムフォレスト」と共同し、独自に開発を進めることにした。
 
その結果、給餌や水の使用量、温度・湿度・CO2の数値、集糞や浄化槽の状況など、豚舎をあらゆる視点からモニタリングが可能に。もちろん、手元のスマホ一台で、だ。
 


水の使用量を測る流量計を常にモニタリング。豚の生態行動もデータ解析できるようになった。

 
「空調システムや飼料搬送設備、脱臭装置など、豚舎に導入しているそれぞれの機械は、もともと非常に優れていて、パソコンを開けば、個々の専用アプリを使って稼働管理を行えるものもあります。しかし、作業中にいちいちパソコンを開くのは現実的ではなかった
 
でも、iPhoneなら従業員全員が即時に対応することができます。iPhoneでのモニタリングが可能になったことで、どこにいても豚舎の状況が詳細かつ正確に把握できるようになり、チャットアプリによって従業員とのコミュニケーションも密になりました」。
 
スマホ上で使うアプリは、「LINE WORKS」豚舎内の監視カメラモニター、そして、「MotionBoard」の3つ。「MotionBoard」(ウィングアーク社)とは、工場内の各機器、設備のセンサーデータをリアルタイムに可視化・モニタリングするものだ。
 
個々に稼働管理しなくてはならなかった機械も、「株式会社システムフォレスト」との共同開発により、「MotionBoard」一括でのモニタリングが可能になったという。これらの技術は、今後、「株式会社システムフォレスト」を通じて市販化される予定だ。
 


米国産の飼料タンク用ロードセルを設置した飼料タンク。現場で逐一確認する必要があった飼料の在庫状況も「MotionBoard」で見える化した

 
「豚はストレスに弱い動物。ストレスをできる限り取り除くことは、豚の幸せの追求であり、その成果が私たちの成績となります。IoT導入のおかげでトラブルによる豚のストレスを軽減できただけでなく、効率化によって豚と向き合える時間も増えました。おかげで、豚の体調変化などにもすぐ気づけるようになり、より健やかな肥育が可能になりました」。
 
家畜も人も幸せな養豚のカタチを追求すべく、「協同ファーム」のスマート化はこれからも続いていく。
 


自動体重計測装置による豚の体重分布識別を行う。今後は、AIによる発育曲線の分析から出荷予測も行う予定だ。



CHECK!
トラブル発生から対処の流れ

1:iPhoneに自動通知
 

夜間、水の使用量を測る流量計が基準値から大きく外れると、トラブル発生をiPhoneに通知。

2:現場でトラブルを確認

通知後すぐ、担当スタッフが現場にかけつけ、トラブル原因を確認。水の使用量が増えたのは、天井をつたう菅からの水漏れによるもの。

3:修復作業

ホースが抜けている、緩んだネジを締め直すなど、修復作業自体は単純なものが多く、1人でも対処可能。即時対応が作業効率化のキモ。

4:従業員同士でシェア
 

トラブル通知はもちろん、現場状況もチャットアプリで逐一シェア。全員が状況を共有することで、スムーズに業務を逐行することができる。

DATA

有限会社協同ファーム

宮崎県児湯郡川南町平田3403
Tel:0983-27-4818


文・写真:曽田夕紀子(株式会社ミゲル)

AGRI JOURNAL vol.15(2020年春号)より転載

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