多用途ハイブリッドトラクターとは!? 海外の有望スタートアップ企業が生み出す農業ロボット4選
2021/01/15
フランスで開催された、農業ロボット分野に特化した国際イベント「FIRA(国際農業ロボットフォーラム)」。そこで登壇した企業の中から、中小規模農業用を中心に開発する4社の、野菜や果物生産に向けたロボットを紹介しよう。
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フランス発
多用途ハイブリッドトラクター
2020年12月8日から10日までの3日間、「FIRA(国際農業ロボットフォーラム)」がオンラインにて開催。野菜や果物生産に向けた先進事例を紹介するワークショップでは、農業用ロボットの開発をすすめる有望なスタートアップ企業が登壇した。
フランス西部ナントを拠点とする産業機械メーカーのシティア社は、2014年以降、農業用ロボットの研究開発に取り組んできた。農業用ロボットのイノベーションを推進するプラットフォーム「トレクター・ラボ」を創設し、スタートアップ企業や研究者とも積極的に連携している。
多用途ハイブリッドトラクター「トレクター」はその代表的な成果だ。ディーゼルエンジンと電気モーターとのハイブリッドで自律走行し、轍間距離や高さを変えることで、露天の耕地や果樹園・温室など、さまざまな圃場で利用できるのが特徴。
シティアの多用途ハイブリッドトラクター「トレクター」Copyright 2016 © Sitia
轍間距離はミニ(狭)・ミディ(中)・マキシ(広)の3モードで切り替え可能。通路の狭い果樹園や温室ではミニ、露天の耕地ではマキシといったように、圃場に合わせて設定する仕組みとなっている。既存のトラクター用アタッチメントに幅広く対応しており、これを装着することであらゆる農作業を省人化できる。
同社は2020年12月時点で、フランスとオーストラリアで「トレクター」を販売。2021年以降、他の国でも順次発売していく予定だ。
耐久性に優れた
低コストな除草ロボット
オーストラリア・シドニー大学からスピンアウト(分離・独立)したアジェリス社が開発する「デジタル・ファームハンド」は、低コストで耐久性に優れた中小規模農業用ロボットだ。
アジェリスの農業用ロボット「デジタル・ファームハンド」Copyright The University of Sydney
圃場を時速6キロで自律走行しながら、農作物の生育状態などさまざまなデータを収集。人工知能(AI)により圃場の状況を可視化する機能に加え、雑草を精緻に判別してピンポイントに除草剤を散布する機能を備えている。
上部に装着されたソーラーパネルとバッテリーにより、稼働に必要な電力が太陽光発電でまかなわれるのも特徴だ。小規模農家を主なターゲットとして、オーストラリアのほか、東南アジアや南太平洋諸国での実用化を目指している。
大規模農場向け除草ロボット
AIを活用
アメリカ・ファームワイズ社が開発した「タイタンFT-35」は、大規模農場向けの除草ロボットだ。カリフォルニア州とアリゾナ州の大規模農家を対象に、圃場1ヘクタールごとに課金する定額制の除草ロボットソリューションとして提供されている。
ファームワイズの除草ロボット「タイタンFT-35」© 2020 – FarmWise Labs, Inc.
「タイタンFT-35」は、1日10〜15エーカー(4〜6ヘクタール)の圃場を自律走行しながら、カメラで検知した雑草を人工知能(AI)によって精緻に判別。12本のロボットアームを使って判別した雑草を引き抜く仕組み。レタス、カリフラワー、ブロッコリー、セロリなどに対応しており、今後、対象作物をさらに拡大させる計画だ。
温室内を自律走行する
トマト収穫ロボット
イスラエルのオートマト・ロボティックス社が開発する施設園芸向けのトマト収穫ロボットは、温室内を自律走行しながら、トマトの実を精緻に検知。その上で、熟した実のみをロボットアームで摘み取り、収穫箱に入れる仕組みだ。将来的には、除草や受粉などの作業も担えるよう、改良を進めている。
同社では、世界的に市場規模が大きい施設園芸をターゲットとして、イスラエル、スペイン、メキシコなどを対象エリアに、2021年にはこのロボットを実用化する方針だ。
文:松岡由希子