コロナ禍に商機を見出すJA! 地元消費者に寄り添うサービスを
2021/01/20
新型コロナウイルスの問題は農業にどんな影響を与えているのだろうか。アフターコロナの農業とJAの在り方を考える、中央大学教授の杉浦宣彦氏による連載コラム第3回。今回は、縮小傾向にある消費活動のなか、売上を伸ばしているJAの現状とこれからを聞く。
» 第1回目の連載記事はコチラ「アフターコロナで農業はどうなる? 人々の農業観に変化はあったか」
» 第2回目の連載記事はコチラ「アフターコロナで農業はどうなる? 外国人労働力だよりの農業、終焉へ」
コロナ禍で伸びるJA
その要因とは
緊急事態宣言が多くの地域で再び発出され、隣県への移動すらままならない状況になってきました。またコロナ禍がある程度収まっても、人の移動が以前の水準に戻るまでには相当な時間がかかるでしょう。
そんな中、各JAの直売所の売り上げが上がっているという情報を各地からいただいています。特に、大都市圏や大都市圏近郊のJAでその傾向があるようです。実際に筆者が訪問させていただいたJAでも同様の状況が続いていることを確認しています。
これはおそらく、巣ごもり状態が続く中で、自分たちが見える場所で栽培している農家から安心・安全な農作物を購入したいという消費者ニーズの高まりが要因にあると思われます。
また、都市型JAのように、地元で生産される農作物が限定的で、他の地域の農作物を販売している場合も、JAという組織に農産物の「目利き」力があるということを信じて(もしくは期待して)購入量を増やしているのでないかと考えられます。
どこに焦点をあて
経営方針をたてていくか
コロナウイルス感染拡大自体は大きな災難ですが、JAと地域のつながりが信用事業の中心となっていた地域にとっては、地域とのつながりを再び取り戻し、強化する大きなチャンスでもあります。
農業が盛んな地域のJAは、より地産地消が進むように、生産されている農作物を様々な媒体を使ってアピールする、多様な調理方法などを消費者に提案するなど、改めて地場農産物を意識してもらう機会にすべきです。
都市型JAにおいては、近隣スーパーとの差別化をはかることが重要となるでしょう。たとえば、生産地のJAとの提携を進め、地場では足りない質の高い農作物や加工品を常時直売所で販売することで、調理方法も含めた、農産物のエキスパートとしての地位を確立することができます。そうすれば、新たな都市型JAの形を広く消費者に認識してもらう機会になるはずです。
こうした、それぞれの形に合った直売所のアップグレードをはかることで、地域に必要なJAという存在感を示していくべきでしょう。
PROFILE
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
杉浦宣彦
現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。
AGRI JOURNAL vol.18(2021年冬号)より転載