注目キーワード

政策・マーケット

欧州から学ぶ農協の経営戦略! 充実したプロモーション力は人材募集の面でも効果あり?

本誌にて「これからのJA」を連載する中央大学大学院教授杉浦宣彦氏のWEB連載コラム。欧州編第2回は、欧州農業組合の経営戦略に見る市場での地位作りと、IR力の重要性をレポートする。

欧州の農業共同組合に見る
経営戦略

前回、会社化している欧州の農業協同組合の現状に触れましたが、その後の筆者の調査でも、大規模な協同組合におけるガバナンスの在り方が諸方面から問われるようになってきており、ガバナンスコードがあるだけでなく、経営の透明性や役員の資質などが強く問われてきているように感じます。

これからJAは更に整理統合されていくのか、また、そのビジネスモデルはどうなるのか。議論がされ尽くしていない日本のJAに、欧州の傾向がそのまま当てはまるかと言われれば、もう少し先のことのような気がします。

しかし、欧州の農業系協同組合から学ぶことは多くあるように思います。

まず、経営規模を拡大してきている協同組合を調べていくと、特にオランダ、スペインなどで顕著なようですが、多くの地域農家を取り込み、その地域に合った作物の品種をできるだけ絞った大規模農業の形で生産しているところが相当数あります。

これは欧州において、農業は依然大きな基幹産業であり、周辺国・地域での価格・品質面での競争が激しいことや、比較的狭い地域であるにも関わらず、土質や気候が大きく異なることもあり、栽培作物の数が限定されることが背景にあると考えられます(この点は多品目化している日本とは背景となる状況が違い、筆者も単品目化せよという主張はできないと考えています)。

日本同様に欧州でも深刻化している後継者問題を抱えている地域では、農協が農家に後継者の紹介を行ったり、農協自体が農地信託の受託者となったりして、農地の維持や農作物の生産維持に努めている点が大きな特徴であるように思います。

(平坦な地域が多いというのもあるのですが)当然、大規模化できているわけですから、大規模機械の導入もなされており、農業の産業化が進んでいることを感じます。

しかし、それだけでは他地域との競争に勝てないため、最近では、農産物加工に熱心に取り組んでいる組合が増えているそうです。バターやチーズといったものばかりでなく、流通業の企業とコラボしたシリアルや健康食品の生産を行ったり、イタリアの組合では、ワインの生産をスタートし、イタリア国内だけでなく、他の欧州諸国でも評判のワインで収益を伸ばしているところもあります。

さらに、スペインやアイルランドの組合では、持っている技術をアメリカなどに提供し、その技術料を得たり、不作の際などに製品供給を受けることができる協定を結んだりするなど、市場での地位をしっかり維持するための経営戦略を持っているところもあります。



また、欧州にいて驚かされるのは、組合のプロモーション力です。

各組合のホームページは加工商品のプロモーションや製品解説、組合の説明やガバナンスの在り方など、日本のJAでは考えられないほどの充実度を示しています(中には、商談相談までできるサイトもありました)

また、組合のステータスの維持のためにISOなど様々な基準の準拠にも積極的です。日本でも、農産物のブランドが確立しているJAほど、プロモーション活動が盛んな傾向がありますが、欧州のそれはまさにここまでやらないといけないのかという一つの手本かもしれません。

また、HPでも人材募集を行っており、複数の組合にお聞きしたところ、地域の農産物、加工品のブランド化やアピールの成果は、人材募集の面でも効果が表れているということで、IR力の強化に関しては、日本のJAでも更なる検討が必要です。

ちなみに、オランダなどでは、上記で述べた農地信託のような形態も出てきていることから、組合が中等職業教育機関などに学生のリクルートをしに行ったりもするそうです。

疑問視される農業の
環境持続性

「ESG」に象徴されるように環境持続性という言葉がよく世間で出てきます。

以前は農業こそが環境保全の柱でしたが、最近ではコーポ―レートガバナンスコードの導入に伴い、むしろ、一般会社がいわゆる「グリーン対策」をどのように行っているかという文脈で注目される言葉に代わりました。

逆に環境保全の象徴でもあった農業は、大量生産のための農薬等の過剰散布や、有機栽培の基準のあいまいさから、ここ欧州でも農業は本当に「グリーン」なのか(環境保全に役立っているのか)という疑問が消費者団体も含め、世間から投げかけられています。

上述したような経営の透明性の確保という点からも、栽培状況や加工方法の公表、一般向けの見学会の開催など、一般向けのIRの更なる強化がやはり重要という話は当地の農業関係者とのインタビューでもよく出てきます。これもまた日本のJAでも、すでに様々な試みがなされているところですが、より積極的なアピール方法を検討していく必要があるでしょう。



PROFILE

中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
杉浦宣彦

現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。

関連記事

特集企画

アクセスランキング

  1. ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いは? メリットを専門家が解説
  2. 【農家にオススメの副収入】ソーラーシェアリングが学べるセミナー開催
  3. 最初に混ぜるだけでOK!? タマネギ栽培に欠かせない便利な肥料
  4. 人気沸騰間違いなしの新製品が続々! 日本上陸を果たしたスマート農機に注目...
  5. アフターコロナで農業はどうなる? 人々の農業観に変化はあったのか
  6. 2020年3月末で経過措置が終了、新「食品表示法」の注意点とは?
  7. あのランボルギーニから最新モデル!? クールな「高機能トラクタ」5選
  8. 農家の新しいつながりを作る! プラットフォーム6選
  9. 10年掛かる土壌改良が短期間で可能に! 天然腐植物質に含まれる「フルボ酸」の効果とは...
  10. いま人気なのはコレ! 押さえておきたい「売れ筋トマト品種」15選

フリーマガジン

「AGRI JOURNAL」

vol.17 / ¥0
2020/10/14発行

お詫びと訂正