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新設備導入でコロナ禍をチャンスに! 新規就農者の取組み

コロナ禍に苦しむ農業生産者が多いなかで、積極的に新機材を導入することでピンチをチャンスに変えようと奮闘している新規就農者がいる。その取り組みについて取材した。

観光農園を立ち上げるも
コロナの影響で予約激減

東京から一時間弱の距離にある千葉県千葉市では、温暖な気候と肥沃な農地を活かした都市型農業が営まれており、その農作物は首都圏に広く出荷されている。

そんな千葉市で、新規就農者がイチゴ観光農園を立ち上げた。学生時代にITで起業した経験を持つ篠崎さんと、大学で園芸学を学んだ金巻さん。バックグラウンドの違う二人がコンビを組み新規で始めた『さんたファーム』だ。

2018年1月から千葉市の新規就農希望者研修を受講して研修生として農業を学び、2019年4月にハウスの建設を開始。2019年12月に営業を開始した。

本圃面積は20aで、別途育苗棟と管理棟がある。『紅ほっぺ』『かおり野』『桃薫』など5品種を栽培。順調に来場者が増え始め「これから!」という時に、コロナの影響により予約が激減。窮地に陥ってしまった。

ピンチになってしまった当時の状況を、篠崎さんはこう振り返る。「東京から近いこともあり、来場者の四割が東京からです。それと同じくらい県内からも来ていただいて、滑り出しは順調でした。それが昨年3月にコロナが急速に広がったことで、予約はほぼ全てキャンセルに……頭を抱えました。

そこで始めたのが、収穫したイチゴの直販です。もう獲ってもらうだけ、という状態のいちごがここにあるわけですから、何とかしたかった。幸い私は前職の経験からITの知識がありましたので、急いでウェブサイトを立ち上げて販売することにしました。

ただ、ひとつ問題がありました。大量のイチゴが腐る前に売り切るのは不可能なのです。また、普通にイチゴを販売しようとしても、特色を出すこともできません」

ピンチを逆手に3つの設備を導入
それぞれの効果とは

新たな保存方法で2t分のイチゴを売り上げ

「保存用に急速冷凍設備を導入して収穫したイチゴを冷凍。その冷凍イチゴを販売することにしたのです。これにより2t分が売れ、なんとか危機を乗り越えることができました」

イチゴ保存用に導入した急速冷凍設備

来場者と品質のためにハウス内環境を管理

『さんたファーム』では、いつ来場者が来ても楽しんでもらえるようにと、特にハウス内環境の管理に気を配っている。

「大切にしているのは、健康に育てる、ということです。これは簡単なことですが、とても重要です。苗が健康であれば、基本的に病害虫に強くなります。病害虫が広がってしまうと、来場者の方が獲るイチゴが不足してしまいます。それでは満足感は得られませんよね。お腹一杯になるまで食べても、まだまだイチゴがある、という状態を常に保つために、健康に育てることには気を使っています。

具体的には、ハウス内環境を良好に保つ、ということです。例えば、湿度が高くなり過ぎると病害が出やすくなりますし、生育には温度やCO2濃度の管理が大切なのは、いうまでもありません」

ハウス内に導入された、モニタリング用の内気象ノード

そこで導入したのが『アルスプラウト』。圧倒的な低コストで導入できる環境制御システムだ。DIYで構築するから必要な機能だけを選んで自分好みにカスタマイズできる。

ハウス内環境を見える化する「モニタリング」、環境をコントロールする「制御」、離れた場所からでもハウス内環境を見ることができる「クラウド」の3機能を備えており、遠隔操作も可能。ハウス内環境を最適に保つことで、収量増と品質の向上にも役立つ。これで低コストなのだから、小規模農業生産者や多棟分散でハウスを保有する農業生産者に最適なシステムだ。

『アルスプラウト』を選んだ理由について、篠崎さんが教えてくれた。「最大の理由は、圧倒的な低価格です。それでいて、DIYで自分好みに設定できる自由度の高さにも惹かれました。一般的なサービスはデフォルトで何となく始められるけど細かな設定は難しい。

『アルスプラウト』は構築から自分で行うので、小さな故障や不具合がでたときでも、自分で修理できる能力も身に付いてしまいます。小さな初期投資で始められるから小規模農家さんでも手を出せますし、多棟をバラバラに管理している農家さんにも便利だと思います」

 

消費者の元へ自ら“出向く”作戦へ


コロナのため、未だ見通しが立ちにくい状況だが、『さんたファーム』では更なる新機材を導入し、攻めの姿勢を崩さない。その象徴がキッチンカーの導入だ。

「もちろんハウスでも直売を行っているのですが、お客さんが居そうな所に行けばもっと売れるのでは、と考えました。そこで試しにキッチンカーを購入してみたところ、想像していた以上に反響がありました。冷凍イチゴを削ってかき氷のようにした『削りいちご』も好評です。

始めてみて感じたことは、需要はあるということ。ただ、お客様のところにまで商品を届ける仕組みがない。ですので、今後さらにキッチンカーを増やして、お客様の所に出て行こうと考えています」

施設内の直売所兼カフェや、キッチンカーでも好評の『削りいちご』

コロナ禍の苦境を逆手に取り、新機材を導入することで危機を乗り越えようと奮闘する『さんたファーム』。最後に将来の展望を聞いてみた。

「今はコロナでどこも大変ですよね。もちろん当園も直撃を食らっています。しかし発想を転換して、平時とは違うことをするチャンスだと捉えることにしました。冷凍イチゴや削りイチゴなんて、普通に観光農園を営業できていたら、絶対に思い付きませんでした。

今はコロナ後を見据えて、ハウスの増設やキッチンカーを増やすことも予定しています。密を気にせず来ていただける時に備えて、グッと力を貯えているのです」と力強く語ってくれた。

語り手:さんたファーム 篠崎俊介さん


 

問い合わせ

さんたファーム


編集協力:サカタのタネ ソリューション統括部
文:川島礼二郎
撮影:松尾夏樹

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