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知らないと損する?!農家が販促に使える持続化補助金

直売やインターネット販売、6次産業化で販路拡大を考える小規模農家や家族経営農家が活用しやすい「小規模事業者 持続化補助金」。今回は、この補助金を活用した販促ツール制作について解説する。

機械や技術だけじゃない!
必要なのは訴求力!

コロナ以前、野菜の販売先として多くを占めていたのが地元市場やJAなどの市場だ。しかし、コロナ禍で飲食店の多くが営業自粛を強いられ、それにより農産物の需要が激減した。需要と供給のバランスが崩れたことにより野菜の市場価格が下がり、苦しめられた農業生産者は少なくない。

コロナ禍の外出規制がかかるなか伸びてきたのが産直通販サイトだ。個人が農業生産者から直接農産物を購入できるサイトとして「買って農家を応援できる」ということで注目を集めた。農業生産者としては、手間はかかるが行き場のなくなった青果物を販売することができるということで、コロナ禍に産直サイトに登録した農業生産者は増加した。

だが、全国から数多くの出品がある産直サイトだ。買ってもらうためには、消費者に選んでもらうことが必要になってくる。さらにリピートに繋げることが重要となってくる。つまり農家は、栽培技術や栽培効率を上げるための機械だけではなく、売る力が必要になってくる。

どのようなこだわりがあり、どのような土地で、どのような人が作った、どのようなものなのか。それを消費者に伝えなければならない。

これは「道の駅」での販売も同じことが言える。地元での販売となると、同じ時期に同じ野菜が溢れる状況に陥りやすい。選んでもらうために生産者の値下げ競争が始まる、というのはよくある話だ。

補助金を利用した
販促ツール作成

消費者に選んでもらうためには「販売促進ツール(販促ツール)」が必要不可欠だ。例えば、商品に貼るシール。このシールに“朝採り”や“有機肥料のみ使用”など書いてあれば、消費者が選ぶきっかけとなる。文言はなくとも、○○農園と書かれたロゴシールが貼ってあるだけでも、他との差別化に繋がりリピート購入につながりやすくなる。

そういった他社と差別化するための販促ツールに利用できるのが「小規模事業者 持続化補助金(以後、持続化補助金)」だ。この持続化補助金は、小規模事業者の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としたもので、条件が合えば誰でも自分で申し込むことができるのが特徴だ。

一般枠でこの補助金を利用した場合、補助上限額が50万円。補助率が2/3となっている。つまり75万円の販促費用がかかったとしても、手出しが25万円で済むということだ。


出典)小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック第11版(全国商工会連合会)

 

家族経営農家が
挑戦しやすい補助金

持続化補助金の対象となるのが、家族経営で農業をしているような小規模事業者だ。対象となる事業規模は、下記の表通りとなる。


出典)小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック第11版(全国商工会連合会)

また、従業員数の要件に加え、下記のようないくつかの要件を満たす必要がある。
・資本金または出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%株式保有されていない(法人のみ)
・直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていない




 

補助金の対象となる
販促ツール

持続化補助金は、販路開拓等の取組や、販路開拓等と合わせて行う業務効率化の取組に必要な経費が対象となる。新たな市場へ参入し販路を拡大する際の商品の売り方の工夫や改良をする場合や、新たに通信販売などを始める際の商品に同梱するお礼状。その他にも、販路は変えずとも新たな顧客層獲得のためにロゴやパッケージを変更する場合なども適用となる。

つまり、ロゴデザイン、パッケージデザイン、チラシ、パンフレット、シールなどの販促ツール全般に使用が可能だ
それ以外にも新商品の開発費用や、資料購入費用などにも使用できる。


出典)小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック第11版(全国商工会連合会)

 

持続化補助金
申請の流れ

持続化補助金は、地元商工会・商工会議所に所属していれば補助金受付開始の通知が行われているが、所属してない場合は商工会・商工会議所ホームページで確認することができる。また、商工会・商工会議所に所属していない場合でも商工会や商工会議所で、持続化補助金の申請手続きなど無料でサポートを行っている

おおまかな申請のスケジュールとしては、申請書類の受付締切り日から約2〜3ヶ月後に交付決定。交付決定日から約6〜7ヶ月後までに事業を実施し、実施計画書の提出。実施計画書を提出後、審査があり補助金額の決定が約2ヶ月後。その後、数週間後に補助金の入金が行われる。


出典)小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック第11版(全国商工会連合会)

注意点としては、補助金が入金されるのが実施計画書提出後となるため、実施にかかる費用を最初に自分で負担しなければならない
また、現金購入は認められないため、銀行口座への支払証明書、引き落とし口座のコピーなどが必要となる。カード支払いを利用した場合、利用の翌月に引き落となり、申請書類が間に合わない場合もあるため注意が必要だ。

パッケージ変更で
売り上げアップ

ここからは持続化補助金を利用して、販促ツールを製作した実例を紹介したい。熊本県でトマト農家を夫婦で営む「とまといちえ農場」の松本さん。
市場出荷をメインに道の駅への販売も行っていた松本さん。しかし、トマトの一大産地である熊本は12月〜6月までの出荷シーズンには、ずらりとトマトの陳列が並ぶ。それでも、特色をだそうと最初は自分で作成したラベルを使い販売を行っていた。


そんな「とまといちえ農場」さんが持続化補助金を活用しパッケージを変更するにあたり最初に決めたのは、農園名。市場出荷をメインにしている農家さんの多くは、農園名などないのではなかろうか。松本さんもその例に漏れなかった。松本さんは、トマトが繋ぐ一期一会の縁という意味を込めて「とまといちえ農場」と名付けた。


トマトの一大産地ということもあり、道の駅でトマトを購入するお客様の一部は自分用ではなく、贈答用でトマトを購入していることが分かった。それでは、贈答用で選ばれるトマトのパッケージにしようと、ロゴやシールだけではなく贈答用ダンボール製作をデザイン会社に依頼した。
実際に完成したものがこちらだ。


贈答用でトマトを購入するお客様は女性が多いことから、かわいらしく明るいパッケージに。また「とまといちえ農場」では様々な種類のトマトを栽培していることが分かるようトマトのシルエットで表現している。また、使用するカラーを少なくすることで予算を抑えて製作した。

今では、道の駅でロゴシールを見て購入するお客様も増えており、知り合いからも贈答用でトマト箱の注文があったりと、注文が増えているという。
パッケージを変えることで、まさに松本さんの想いの通り贈答用トマトが縁を繋ぐ役目を果たすこととなった。

このように、想いを形にして売り場や客層にあった販促ツールを製作することによって小規模農家であっても売り上げアップを見込むことができる。年に数回募集される持続化補助金、ぜひうまく活用して売り上げアップに役立てていただきたい。

以上の内容は、2024年3月時点での持続化補助金の内容とする。




 

筆者プロフィール

株式会社LaTo 森本和
熊本県にある株式会社LaTo(らと)代表。デザイン業を母体に農家六代目として農業、農産加工を行う。さらに30年以上耕作放棄されていた牛舎を改装したレンタルスペース「LATO BASE」運営。月1回マルシェも開催している。

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