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【JGAP畜産のススメ】JGAP認証取得のメリットや基準、かかる時間や費用を紹介!

飼料や光熱費の高騰に、鳥インフルエンザや豚熱などの伝染病の発生、世界的に叫ばれているアニマルウェルフェア(動物福祉)推進など、畜産農家に重くのしかかる、さまざまな課題。その解決策として、農業経営の持続化につなげる「JGAP畜産」についてお話を聞いた。

<目次>
1.7つの適切な農場管理の実践「JGAP畜産」とは?
2.JGAP認証取得のメリットとは?
3.JGAPの認証基準
4.認証取得までの時間と費用
5.「するGAP」と「とるGAP」の違いとは?


7つの適切な農場管理の実践
「JGAP畜産」とは?

GAP(ギャップ、Good Agricultural Practices)を訳すと「農業生産工程管理」で、持続可能な農業のために生産者が取り組むことをまとめた基準を指す。日本における標準的なJGAPの他、欧米をはじめ日本でも普及する「グローバルGAP」もあるが、畜産に対応するのは、JGAPのみである。

JGAPは、一般財団法人日本GAP協会が運営し、青果物や穀物、茶に続いて2017年から「JGAP畜産」がスタートした。食品安全、農場管理、労働安全、人権の尊重、環境保全、家畜衛生、アニマルウェルフェアの7つの適切な農場管理の実践を目指す。JGAP畜産の対象となる家畜と畜産物は「牛」「豚」「鶏」と、「生乳(牛)」「鶏卵」の5つ。2023年3月時点で認証農場数は269件、一番多いのは鶏卵(採卵鶏)で全国飼養頭羽数の約3割弱を占める。続いて豚(8.48% ※全国飼養頭羽数の割合。以下同)、肉用牛(4.28%)、肉用鶏(2.07%)、乳用牛・生乳(1.95%)の順だ。

JGAP認証取得の
メリットとは?

大きく分けて3つある。1つめは、「畜産経営のリスクを低減」。適切な農場管理の導入により、食品安全・家畜衛生・労働安全に関するリスクを減らすことができる。

2つめは働く人の意識改革、農場ルールの見える化や改善に必要なデータの蓄積などによる「農場管理の効率化」が挙げられる。

3つめは、「JGAP認証で選ばれる農場に」。バイヤーや消費者、社会に信頼できる農場であることをアピールでき、畜産物の調達や購入する上での目安になる。「審査を受けることで農場自身では気付かない改善点など、新たな『気付き』が得られるのも大きなメリットです」(石井さん)。

令和3年度JGAP畜産認証取得経営体へのアンケート調査

認証を取得した経営体による「JGAPに取り組んだ効果」のアンケート調査では、令和元年~3年連続で「労働安全面の強化」が最も多かった。「食品安全面の強化」の効果は年々増加傾向にある。


出典:農林水産省「令和3年度JGAP認証取得経営体へのアンケート調査」

 



 

JGAPの認証基準

JGAPの認証基準は、食品安全や家畜の健康(家畜衛生)や快適な飼育環境への配慮(アニマルウェルフェア)の他、働く人の安全対策、人権尊重、労務など、全部で113項目にも及ぶ。

「ハードルが高いように見えますが、実は日本の畜産農家はレベルが高く、既に実行しているJGAPの要求項目が意外と多いのではないかと思います。なので、認証基準の項目に対応する整備をゼロから始めるケースは少ないようです」(石井さん)。

認証取得までの
時間と費用

認証取得への期間は、半年から1年ほどが目安になる。審査を受ける前に、協会が発行する認証の項目をまとめた基準書をもとに、農場管理の仕組みやルールを構築し、これを実践する。自力で取り組むのが難しい場合は、専門のコンサルタントやJGAP指導員(畜産)のアドバイスを受けて進めていく。

「JGAP指導員は、オンラインなどによる2日間の有料研修を受けてテストに合格すると資格が得られます。基準書の内容がより深く理解できるので、農場で働く人が資格を取ることも多いです」(荻野さん)。

JGAP認証にかかるコストはあくまでも目安だが、通常の個別審査の場合、①審査料金25〜40万円②審査員の交通費と宿泊費③登録費10000円(税抜・年間5000円×2年間分)。認証の有効期限は2年間で、認証を継続するためには維持審査と更新審査を受ける必要があり、いずれの審査も①と同様の審査料金がかかる。他、必要に応じて、コンサルタント料、JGAP指導員研修(税抜4万5000円)などもかかる。

「するGAP」と
「とるGAP」の違いとは?

「『やっぱり認証を受けるのは腰が引けてしまう』という人は、まず『するGAP』から始めてみませんか?」(石井さん)。

GAPには認証を取る「とるGAP」と、GAPの認証基準を実行する「するGAP」の2つがある。認証の項目をまとめた基準書は、日本GAP協会のウェブサイトより無料でダウンロードできる。

「認証基準をもとに、自分の農場で既にできているGAPを探してください。できていることを知るだけでも大きな気付きとなり、農場がより良い方向へ変わっていくと思います」(石井さん)。

取材協力

(写真左)日本GAP協会 代表理事専務

荻野宏さん

(写真右)開発部サブマネージャー

石井豊希さん

「『無印良品 銀座』地下1階の『MUJI Diner』では、とくしま三ツ星ビーフや秋田県産桃豚など、JGAP認証農場の農畜産物を使ったメニューを提供しています。ぜひお立ち寄りください!」
 



 


取材・文:後藤あや子

AGRI JOURNAL vol.31(2024年春号)より転載

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