ICTで生産ノウハウを共有!茨城の地域農業の成功例
2017/01/11
茨城県農林水産部産地振興課では、平成27年度9月から、県オリジナルのイチゴ「いばらキッス」のブランド強化のためにICTの活用を開始、着実に成果を上げている。県と一緒に現地実証を行っている濱野さんの圃場で話を伺った。
今回話を伺ったのは、左から鈴木さん(茨城県農林水産部産地振興課)、木村さん(茨城県農業総合センター農業革新支援専門員)、そして、いばらキッスを生産する濱野さん。
県の主導によるICT導入
2年目ながら順調に成果
茨城県では、特産品のイチゴについて、オリジナル品種「いばらキッス」を開発、生産促進とブランド強化に取り組んでいる。そのためには、品種特性にあった最適な栽培管理を徹底して、品質を向上させることが必要だったことから、昨年平成27年度9月からICTを導入する事業をスタートさせた。
「当初は環境データを見える化して栽培しやすくすることで、『いばらキッス』をさらに普及させていくのが狙いでしたが、情報共有で生産農家全体の底上げが可能なことがわかり、アグリネットを使った現在のカタチになっています」(鈴木さん/茨城県農林水産部産地振興課)。
仕組みは、ネポンが提供するアグリネットを県が購入、4軒(※2年目から8軒)の優良生産農家に実証用として機器を設置してもらい、収集した栽培環境のデータを他の生産者と共有するというもの。「永年培った栽培技術を、他の生産者に教える事になるので、設置を断られるケースも考えられましたが、今回お願いしたみなさんは、県産ブランド強化の意図を理解していただき、とても協力的でした」(木村さん/茨城県農業総合センター農業革新支援専門員)。
実際に機器を設置している濱野さんも、そのメリットは大きいと感じているようだ。
「30年以上イチゴを作っていますが、経験と勘がすべて。あやふやな部分もあり、そうした部分がデータで見える化できたことが大きい。例えば、ハウス内の温度は、冬場は日が出て8時半ごろから上昇しますが、地温は10時ごろまで下降が続くことがわかった。おかげで、年間を通して温度が一定な井戸水を、水やり用としてだけでなく、地温管理にも活用するようになったんです。また炭酸ガス(CO2)も、これまでは日の出前にプロパンを焚いて供給していましたが、データから明け方に地面から炭酸ガスが出ている事がわかった。供給する時間をずらし、短くできたので、約50%の経費削減につながりました」(濱野さん)。
アグリネット導入によって、昨年は品質・収量ともに向上、市場からも高評価を得た。作付面積も1年目の7.2 haから、2年目は8.6 ha(※推定)と増え、成果は順調に出ていると言えよう。
見た目も味もいい茨城県のオリジナル品種「いばらキッス」。今年は、天候不順で定植が遅れ、出荷は12月上旬からとのことだったが、クリスマスシーズンを控え、収穫前ながら「すでに予約でいっぱいだ」と濱野さんも嬉しそうに笑う。