カリスマバイヤー直伝!商談力をアップし、販路を切り開くコツ

25年以上にわたってフードバイヤー、ライターとして活動し、2300件以上の生産者を取材してきた猪口由美さんが、”売る”うえでのポイントをレクチャー。バイヤーの視点を知り、販路を広げるコツをつかもう。

<目次>
1.商談会に先立つかたちで販路開拓をテーマとしたセミナーを開催
2.ペルソナを明確にし”届ける”つもりで商品をつくる
3.自社や生産物について深く知ることが相手に伝える第一歩になる
4.自信作を一つでもつくり価値をきちんと説明する
5.売る側もジャッジするつもりで商談の場に参加を

 

商談会に先立つかたちで
販路開拓をテーマとしたセミナーを開催


セミナーの内容はオンラインでも配信され、千葉県の生産者を中心とする多くの人がセミナーを視聴した

2027年1月、千葉県内の農林漁業者と都内の高級ホテルやレストランなどとのマッチングを図る商談会が開催される。本会を主催するのは千葉県農林水産部販売輸出戦略課で、運営は食メディア「料理通信」が担う。すでに商談会の周知と、本会への参加を希望する農林漁業者の募集が始まっており、今年5月27日には、千葉県内にてトークセミナー「顧客は自分で見つける時代、販路の見つけ方&伝え方」が開催された。

当日は、食メディア「料理通信」の代表・坂西理絵さんによるナビゲーションのもと、フードバイヤーでライターの猪口由美さんが販路開拓のポイントなどを語った。

※千葉県内の農林漁業者を対象に、商談会への参加希望者を募集中。
(千葉県内の農林漁業者を対象に、2027年1月25日に都内で開催される商談会への参加希望者を募集中。事前申し込みが必要(無料で参加可能)。申し込み希望者は、以下のサイトにアクセスし、必要事項の記入を。申込締切は、6/19の18:00まで)

>お申し込みはこちら<

 

ペルソナを明確にし
”届ける”つもりで商品をつくる


食メディア「料理通信」の代表・坂西理絵さん

坂西さん 今回は、「誰に届けるか」「相手にどう伝えるか」「価格をどう整理するか」という3つの視点をふまえ、猪口さんにお話いただきたいと思います。まずは「誰に届けるか」をテーマにお話いただきましょう。
生産物を販売するにあたっては、販路や価格ばかりに意識が向かってしまいがちです。でも猪口さんは、「販路や価格について考える前に、『誰に届けるか』を考えるべき」という考えをお持ちなんですよね。


フードバイヤーでライターの猪口由美さん

猪口さん 発想を変えて、生産物を”売る”のではなく”届ける”のだと考えると、見える世界が大きく変わります。おのずと買う側の目線に立って考えられるようになり、販路も開拓しやすくなるでしょう。自分が大切に育てた生産物を、誰に届けたいか。まずはこの点をしっかりと考えていきたいですね。

坂西さん 「お年寄りからお子様まで、みんなに喜んでもらいたい」とおっしゃられる生産者の方も、たくさんいらっしゃいます。その考えは見直す必要があるということでしょうか?

猪口さん 幅広い層に喜ばれるものは、大手企業がすでにつくっています。小規模の生産者がやるべきなのは、自分たちの生産物を届けたい相手を明確にし、その相手のために生産物を手がけるということ。それが自分の強みを生かし、売り上げを上げるきっかけにもなると思います。

例えば高級スーパーマーケットで生産物を販売したい場合は、そのスーパーマーケットが抱えるお客さんの像をしっかりとイメージしながら生産にあたる必要があります。

坂西さん かなり細かく、具体的にイメージするということですね。

猪口さん 例えばですが「子どもが1人いる30代のご夫婦で、世帯年収は700万くらい」「休日は家族全員で過ごすことが多い」といったふうに、細かくペルソナを思い描きましょう。このご家族に届ける前提で生産にあたることで、確実に求められる商品に近づきます。


「安定供給できることも、取引をするうえでは重要。安定供給するための仕組みづくりをしましょう」(猪口さん)とのアドバイスも。

販路を切り開くためのポイント
・意識を変えて、生産物を“売る”のではなく“届ける”と考える
・“届けたい”相手については、細かく、具体的にイメージする

 

自社や生産物について深く知ることが
相手に伝える第一歩になる

坂西さん 続いて「相手にどう伝えるか」という視点でお話いただきたいと思います。商品を売るうえでは、その商品の特徴や価値を伝える作業は欠かせません。その際は、相手にとっての価値を意識する必要がありそうですね。

猪口さん バイヤーが求めるものは、それぞれ違います。商品について説明する際、まずはそれを念頭におくのが大切です。事前に店舗を見るなどし、その店舗が抱えている客層などを把握してから、商品の魅力を伝えるのがベストですね。バイヤーは「うちで扱ったら売れるだろうか」「どの売り場に置けるだろうか」といったことを考えながら、商品を見ています。なので相手に合わせて、プレゼンの内容を少しずつ変えていくのが大切です。

坂西さん 相手によって伝え方を変えられるよう、自社や生産物の魅力を深掘りしておく必要がありそうですね。

猪口さん 一度、紙に書き出して分析してみるのがおすすめです。創業してからの歩み、生産物の特徴などを書き出してみると、自社や生産物を客観的な視点で見られます。すると魅力や強み、あるいは弱みも分かるでしょう。自社や生産物について深く知ることが、相手にしっかりと伝えるうえでは欠かせません


「バイヤーにとってのメリットも考えながら、商品のプレゼンをしましょう」と、猪口さん。

坂西さん 自社や生産物の魅力の伝え方にも、ポイントはあるのでしょうか?

猪口さん 例えば、有機栽培をやっている農家さんであれば、「有機栽培をやっています」とだけ伝えるのではなく、「小さなお子さんのいるご家庭で、安心して食べてもらいたくて有機栽培をしています」と伝えると、買い手も売り方をイメージしやすくなるでしょう。また、有機栽培に取り組んでいる理由は農家さんごとに違うはずなので、有機栽培を始めた理由もストーリーとして伝えると、より良いと思います。今の消費者は、ストーリーも含めて商品を買う傾向があるので、生産物にまつわるストーリーも表現すると、バイヤーの心を動かしやすくなります。

販路を切り開くためのポイント
・自社や生産物について分析し、強みや弱みを把握する
・バイヤーが求めるものはそれぞれ違うと認識し、相手に合わせてプレゼンの内容を変える
・生産物にまつわるストーリーを表現する

 

自信作を一つでもつくり
価値をきちんと説明する

坂西さん 最後に「価格をどう整理するか」というテーマのもと、お話していただきたいと思います。事前の打ち合わせで、安い商品が売れるわけではないと伺いましたが?

猪口さん はい、商品は安くすれば売れるというものではありません。それに価格を下げると、今度はその価格が基準になってしまい、価格競争の渦にはまって抜け出せなくなります。そうなると利益を出せる状況がどんどん遠のき、疲弊してしまう。大事なのは、価格を支える価値をきちんと作ることです。ほかよりも良いものを作るためにエネルギーを注ぐことが、非常に大事になると思います。

坂西さん 高くても選ばれる商品には、どのような特徴があるのでしょう?

猪口さん これまでに何千という商品を見てきたなかで、選ばれる商品には、キラッと光るものがあると実感しています。作り手の思いがひしひしと伝わってくる商品に、バイヤーはやはり心を動かされるんです。驚くほどおいしかったり、生産にまつわるストーリーがきちんと伝わってきたり、ほかにはない特徴があったりと、心を動かされるポイントはいろいろとあるのですが、選ばれる商品には選ばれるなりの理由があります

坂西さん 買う側に“納得感”をもってもらうことが、大切なんですね。

猪口さん 今よりも少しでも良いものをつくる、目標とする店舗で扱ってもらえるものをつくる、といったテーマを自分のなかで持って、商品をつくっていっていただきたいと思います。そして商品の価値をきちんと説明できれば、「確かにこの値段なら納得できる」と思ってもらえますし、商談は前に進むはずです。まずは一つでも良いので、“納得感”をもってもらえる商品をつくることが大事です。


セミナーの最後に設けられた質疑応答の時間では、「商品を購入した方の感想を知る方法には、どのようなものがありますか?」といった質問が寄せられた。

販路を切り開くためのポイント
・価格を下げるのではなく、価値のあるものをつくることに注力する
・相手に納得してもらえるよう、商品の価値をきちんと説明する

 

売る側もジャッジするつもりで
商談の場に参加を

坂西さん 商談会の活用方法についても、アドバイスをいただきたいと思います。

猪口さん 商談会と聞くと、なんとなく身構えてしまう方が多いと思います。でも商談会って、生産物をジャッジされる場ではないんです。ましてや、立場的にバイヤーが“上”で、生産者が“下”ということもありません。なぜなら生産物を売ってくれる生産者がいなければ、バイヤーだって困ってしまうからです。だから生産者の方々には、自分もジャッジするつもりで商談会に参加してほしいですね。「この企業に、うちの大切な生産物を出していいだろうか」という意識をもちながら、商談にあたってほしいと思います。

ちなみにバイヤーは、商品を選ぶプロであり、顧客が望むものを知り尽くしています。なので、もし「御社の生産物は、うちには合わないかもしれない」と言われたら、自社の生産物について知るチャンスだと捉え、「どんな商品だったら売れそうですか?」「パッケージはどうですか?改善点があれば、教えてもらえませんか?」といった感じで、どんどん質問してみるのがおすすめです。
 

Information

今回の商談会は、2027年1月25日に都内で開催される。事前申し込みが必要(無料で参加可能)。申し込み希望者は、以下のサイトにアクセスし、必要事項の記入を。

>お申し込みはこちら<

 

別事業のご紹介

千葉県は、商談会などの開催を通し、農林水産業と食品産業が連携した販路開拓を推進している。産直ECサイトでの販売促進事業もその一つで、現在、千葉県内で支援対象者を募集している。こちらの事業の詳細は、以下のサイトにて確認を。

>募集要項はこちら<

 
>お申込みはこちら<

 


取材・文/緒方よしこ

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