AIカメラから看板設置まで! 令和の「農作物泥棒」を撃退する最新防犯術
2026.06.19
ブドウやサクランボ、スイカ、メロンなどの農作物が、全国の産地で盗難被害に遭っている。令和の米不足では各地で米泥棒が相次いだ。だが、産地は手をこまねいていない。AIカメラ、センサー、地域によるパトロールなど、最新テクノロジーと地域の目の両輪で進む盗難対策の最前線を取材した。
画像:© SabbirDigitall/Shutterstock.com
不審者や車両を自動検知
AIカメラやセンサー

農作物防犯対策のポイント(出典 茨城県警察本部)
従来の防犯カメラと違い、AIが映像をリアルタイムで解析するAIカメラは、動体検知と画像認識を備え、不審者や車両を捉えるとスマートフォンへ直ちに通知する。警告音やフラッシュライトで不審者を威嚇するモデルもある。電源の確保が難しい場所では、ソーラー型の機器を選ぶ方法もある。
農作物の盗難防止を呼び掛けている茨城県警察本部は、防犯カメラ、センサーライト、センサー式音声警報器を推奨機器として挙げている。収穫物や、ハサミ・コンテナ・脚立など犯人に悪用される道具を畑から回収すること、保管庫の施錠、定期的な見回りの重要性も挙げている。
導入を後押しする自治体の動きもある。福島県伊達市は2024年度、モモを栽培する市内の生産者を対象に補助事業を実施。防犯カメラの購入費の3割、上限2万円~10万円で補助する制度を設けた。
農業分野だけでなく、防犯分野の補助金も含めて、自分が住む自治体に対象となる制度がないか確認してみよう。
テクノロジーと地域の目で
夜間の畑を守る
防犯対策で使われるドローンには、人と周囲の温度差で侵入者を捉える赤外線(サーマル)カメラ、わずかな光を増幅して暗闇でも撮影できる暗視カメラ、不審者を照らし出して威嚇する強光スポットライトなどを搭載するタイプがある。運用も、人による手動操縦から、自動航行、専用基地局から離発着して自動で巡回する自律巡回まで多彩だ。ドローンを使った果実盗難対策を実施しているJAもある。
一方、JA・警察・自治体・地域団体が連携した「人の目」による監視も欠かせない。山梨県笛吹市は、モモ・ブドウの栽培面積・収穫量がともに市町村単独で全国1位を誇る高級品種の産地だ。その産地を支えるJAふえふきは毎年5月中旬から、警備会社に委託して夜間の防犯パトロールを実施している。
地域の連携は、防犯機器が拾いきれない「人の気配」を補う。テクノロジーと地域の目、その両輪が産地を守るカギになる。
入りづらい・その気にさせない
県と警察が広める「見せる防犯」

茨城県警がHPで活用を呼び掛けている警戒チラシ(出典 茨城県警)
最新技術や大規模パトロールが難しい産地でも、低コストで誰でも始められる対策がある。それは「見せる防犯」だ。
群馬県は、県庁の野菜花き課が中心となって2つの枠組みで生産者向けの啓発を進めている。「犯罪者が入りづらい農場づくり」として園地のネット・柵設置と保管庫の確実な施錠を、「その気にさせない農場づくり」として「園内立ち入り禁止」「盗難対策実施中」の看板や防犯カメラ作動中のステッカー掲示を、それぞれ推奨している。
群馬県警が配信する地域防犯情報の登録制メールサービス「上州くん安全・安心メール」の活用と組み合わせ、産地全体の監視の目を増やす仕組みを整えている。茨城県警も同様に、「防犯カメラ作動中」の表示や看板を用いた見せる防犯を推奨対策として明記している。
防犯カメラを取り付けたり「盗難対策実施中」の看板を掲げたりするだけで、その畑は「狙いにくい場所」に見える。犯人は事前に下見をしてから盗みに入るとされるが、その下見の段階で「ここは面倒だ」と思わせれば、犯行を諦めさせる効果が見込める。最新のシステムを導入しなくても、見せ方ひとつで心理的なハードルを高められるのが「見せる防犯」の強みだ。
まとめ
農作物の盗難対策には、最新技術と地道な防犯活動を組み合わせる取り組みが重要だ。
AIカメラやセンサーなどの機器による監視と、JA・警察・住民によるパトロールを重ねる。こうした取り組みを重ねることが、農作物を盗難から守る現実の備えになる。機器の導入には、青森県鶴田町のように補助金制度を設けている自治体もある。
まずは地元の支援制度をいま一度確認してみよう。土台になるのは、収穫物を畑に残さない、保管庫を確実に施錠する、出荷時期や保管場所をSNSに不用意に発信しないという日々の心がけだ。先進事例といっても、いずれも今日から手をつけられる対策の積み重ねにほかならない。
DATE
農作物の盗難に注意(茨城県警)
農作物・農業機械等の盗難防止について(群馬県)
取材・文/佐藤美紀
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