2023年度政府予算案が決定 大豆、麦、米粉専用品種の生産を拡大
2022/12/29
政府は12月23日、来年度予算案を閣議決定した。農林水産関係の予算案では、ウクライナ侵攻や円安などの影響で価格が高騰している大豆、麦の生産拡大や肥料の国産化など、食料安全保障の強化施策に重点配分している。
食料安全保障の強化に重点配分
大豆・麦を海外依存からの脱却へ
大豆や麦の海外依存からの脱却を目指す
政府は23年度予算案を閣議決定し、22年度第2次補正予算と合わせて、今後の農業政策の方向性が固まった。農林水産関係の23年度予算案は総額2兆2683億円で、前年度当初予算案に比べて94億円のマイナスである。
野村農相は「補正予算案で食料安全保障などに関して8206億円を確保しており、23年度当初予算案と合わせると3兆円を超える予算となった。この予算で農水省として食料安保に資する政策を進めたい」と述べた。
農林水産関係の予算案では、海外からの輸入に頼っている大豆、麦の生産拡大、輸入が大半を占める肥料原料の備蓄といった食料安全保障対策に283億円を充てるそうだ。
食料安全保障の強化に向けた構造転換対策としては、肥料原料の保管経費などを支援する肥料原料備蓄対策に1億円、米粉の利用拡大支援対策に新たに8億円、飼料作物の生産・利用拡大、安定供給確保対策として22億円が盛り込まれた。このうち肥料は、備蓄と国産化を促進する。
政府は12月20日、肥料の原料を経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資」に指定。年間需要量の3カ月分の肥料原料を民間備蓄する体制を整備するため、22年度補正予算案に160億円を計上し肥料メーカーなど民間の保管費用や保管施設整備を支援する。
水田の畑地への転換を促進
農産物の保護を担う機関を設立
水田の畑地化促進助成を上積み
主食用米の需要の減少が続いていることから、水田を畑地に転換し、大豆や麦などの生産に取り組む農業者を支援する。水田での大豆、麦の本作化など支援する「水田活用の直接支払交付金等」に22年度当初予算と同額の3050億円を計上した。
内訳は、大豆、麦などの本作化を支援する直接支払交付金に2918億円、水田の畑地化促進事業には補正予算の250億円に加えて、新たに畑地化促進助成として22億円を上積みした。パンや麺の製造に適した米粉用米の専用品種での転作に、10アールあたり9万円を交付するなどの「コメ新市場開拓等促進事業」に110億円を計上している。
国産穀物の備蓄にもチカラを入れる。これまで麦の備蓄は海外からの輸入品だけだったが、22年度補正予算案では国産の大豆、麦を長期保管できる施設整備を支援する。豊作時に備蓄した国産穀物を安定的に供給し、高騰する輸入穀物への依存からの脱却を目指す「産地生産基盤パワーアップ事業」に306億円を計上した。
農産物などの輸出額を30年までに5兆円とする目標を達成するため、輸出支援体制の確立などに109億円を充てる。国内で品種開発されたブランド農産物が、海外に持ち出され無断で栽培されるのを防ぐため、知的財産の保護を担う管理機関を設立する。最先端のテクノロジーを活用し、新しい食品や調理方法、食に関する環境を変える「フードテック」の推進に1億円を計上している。
食料安全保障強化政策大綱を決定
国会提出を目指す
政府は12月27日、大豆、麦や肥料、飼料の国内供給力の強化を目指す「食料安全保障強化政策大綱」を決定した。岸田首相が本部長を務める食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で議論した。大綱を踏まえ、23年度中に農政の基本方針となる食料・農業・農村基本法改正案の国会提出を目指す。
大綱では、30年の数値目標を示している。水田を畑地にすることで、農作物の栽培面積を21年比で小麦は9%増、大豆は16%増、トウモロコシや牧草などの飼料作物は32%増、米粉用米は188%の大幅増とする。下水汚泥や堆肥といった国内にある資源を活用した肥料の割合を21年の25%から40%に高める。
日本は、21年度のカロリーベースの自給率が38%と、先進国で最低の水準にとどまっている。大綱では、「近年の急激な食料安定供給リスクの高まりに鑑みれば、早期に食料安全保障の強化を実現していく必要がある」と指摘した。
DATA
文:高橋健一