津田大介に聞く「稼げる農業」のつくりかた
2018/03/07
農家にとって長年の課題である「収益安定」。季節や天気によって収穫量が左右される農業は収入のコントロールが難しいとされるが、「稼げる」農家にはどのような仕組みがあるのだろうか。モデルケースと併せて紹介。
農業は「儲からない」?
持続可能な経営に必要なこと
日本の「食」に関する問題について、農産物流通コンサルタントの山本謙治さんの『日本の「食」は安すぎる』というご著書がありますが、まさに僕の考えもこの題名の通りですし、本の内容が今の食の状況を表すほぼ全てではないかと思います。
あまりにも大型量販店のバイイングパワーが強くなり過ぎて、食のデフレ化が深刻だからです。結局、そのしわ寄せが生産農家や漁師に行ってしまっている状況があるため、そこは変えていく必要があるでしょう。
そんななか、農業に企業が参入するのは良いのですが、儲からないとやめてしまう場合もあるでしょう。規制緩和は一定の合理性もあると思いますが、それで農地が荒らされてしまっては本末転倒です。
企業が農業に関わる際には、持続可能性について現地の農家とうまくマッチングするルールがあった方がいいと思います。
起業家マインドと柔軟性が
「稼げる」農業を生む
一方で、企業が農業に参入するメリットとしては、最初のステップとして誰でもサラリーマン的に農業を始められるという点があります。
宮城県山元町で、ブランドイチゴ「ミガキイチゴ」を生産する株式会社GRAは、暗黙知のようなノウハウをきちんとITで管理して誰でも参入できるようにしています。ノウハウのデジタル化で生産水準を高めていこうというIT世代のコミュニケーションにより、地域活性化にも一躍買っています。
それとは別に、日本発で面白そうなのはソーラーシェアリングです。農業はどうしても気候によって生産が安定しません。そのリスクを、太陽光発電の売電収入である程度軽減できます。そしてその収益を、営農のための資金や6次産業化のための資金に当てることもできるのです。だから、政策的な推進やロビー活動は必要です。
地域で農業をしながらかつ若い人が集まって、そこから新しい町や文化を作ろうというコミュニティができれば、お互いの弱点を補いながら農業で稼げるようになるのではないでしょうか。だからこそ、起業家マインドを持った若い人が就農すべきだと思います。
DATA
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト
津田大介さん
1973年生まれ。ポリタス編集長。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター。
インタビューまとめ/大根田康介
AGRI JOURNAL vol.06(2018年冬号)より転載