生産者の取組み

「課題があるからこそ意欲的になれる」4Hクラブ長野県会長が語る、新規事業への挑戦

ほうれん草やレタスといった葉物野菜の一大産地として知られる長野県。そのなかで目新しい視点のもと新境地を切り開く、長野県4Hクラブ「PALネットながの」の会長を務める山浦昌浩さんに、ご自身の活動や「長野県4Hクラブ」と農業の未来について、語っていただいた。

メイン画像:長野県4Hクラブ「PALネットながの」の会長 ・山浦昌浩さん
県内に本社を置く「株式会社アグレス」も、葉物の生産・販売を手がける農業法人の一つだ。株式会社アグレスには、「未来開発室」というユニークな部門があり、新規事業の開発などが積極的に行われている。山浦さんは、この「未来開発室」の室長を努めている。

農業の未来を見すえ、
今できることをやる

「日本農業を革新する」という経営理念のもと、農場経営や関連事業を手がける「株式会社アグレス」。標高1300mほどの場所にある野辺山で、ほうれん草を中心とする葉物野菜を生産するほか、農業に特化した海外スタディツアー「農スタ」の企画・運営など、興味深い事業を展開している。

「『農スタ』は、私が所属する『未来開発室』が主催しています。若手農家や農業に関心のある学生に、豊かな経験と広い視野を育んでもらうことを目的としたツアーで、農業現場の訪問や農産物の加工場の視察などを行います。近年のおもな渡航先は、カンボジアです」と、山浦さん。


カンボジアで実施された「農スタ」の様子

また、「農スタ」は、農業共同組合をはじめとする法人からも注目されているよう。

「カンボジアには、実習生のための日本語をはじめとする教育機関がいくつかあります。今年の1月には、『農スタ』チームのアテンドのもと、静岡農業振興協同組合さまを、こうした教育機関へ案内させていただきました。実習生とのリアルなコミュニケーションなどが叶い、充実した視察となりました」


山浦さんは、国際協力NGOのメンバーとして、カンボジアで活動した経歴をもつ。トータルで3年ほどカンボジアにいたことから、「農スタ」をはじめとする海外事業を展開する発想が生まれたという。強い海外志向が、海外事業に着手するきっかけとなったが、今後の世界情勢や農業の動向を考慮すると、将来的に海外事業は経営を左右するのでは、と話す。

「今後、日本国内で植物工場が普及していった場合、従来の方法で作られた物量の安定しない葉物野菜の需要はどんどん減っていくでしょう。それに伴い、農家も淘汰されていくはずです。その一方、今後、世界の人口がアジア・アフリカを中心に爆発的に増えるという見方があります。つまり、日本だけでなく世界をフィールドに勝負すれば、従来の農家が生き残れる可能性があるということ。現在は、そうした未来を予測し、広く海外事業を展開するための地盤を整えている段階です」


長野県・野辺山にある、「株式会社アグレス」が管理するレタス畑

 

課題を前にして
思考停止してはいけない

「農業における課題は多くありますが、課題があるからこそ意欲的になれます」と話す、山浦さん。「長野県4Hクラブ」の会員からも複数の課題が挙がっているが、そうした課題にも積極的に取り組んでいる。

例えば県内には、比較的高い標高に位置し、冬場には雪が深く積もる地域が多い。自ずと冬場は閑散期となるため、農家でスタッフを通年で雇用し続けることが難しくなるという。反対に、夏場は作業量が大幅に増えるため、人手不足に悩まされる農家が急増するのだとか。こうした人材に関する課題を解決しようと、現在山浦さんは、農業に特化した人材マッチングアプリ「シェアグリ」を運営する企業にも籍を置き、現場からの声を届けている。

「やるべきことが山積しており、実際に運用できるか模索している段階なのですが、来年からの運営を目標に動いています。繁忙期に必要な分だけ手伝いがあれば、地域の農家の負担は大幅に軽減されるでしょう」


課題を前にして思考停止するのではなく、情報を集め、学び、そして行動することが大切である、というのが山浦さんの信条だ。最後に、農業に秘められたポテンシャルと魅力について語ってくれた。

「農業には、無限の可能性があることは間違いありません。広い視野を持ち、新たなことに挑戦する、柔軟に考え、常識の範囲を超える、といったことを心がければ、大きな可能性が生まれるでしょう。まずは、自分の得意分野や能力を客観的な目線で見直してみるのがおすすめです。どんな経験からも農業の世界で勝ち抜いていくためのヒントを必ず見出だせると思います」


「長野県4Hクラブ」で恒例的に開催されている「クラブ員研修会」

 

PROFILE

株式会社アグレス

山浦昌浩さん

1981年福岡県生まれ。国際NGO法人、海外農業に特化したベンチャー企業を経て、「株式会社アグレス」に入社。現在は、「未来開発室」にて室長をつとめるかたわら、「長野県4Hクラブ」の会長、全国4Hクラブの事務局次長としても活躍中。
株式会社アグレス
株式会社シェアグリ 

DATA

農業青年クラブ(4Hクラブ)
 


Text:Yoshiko Ogata
 

関連記事

特集企画

アクセスランキング

  1. ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いは? メリットを専門家が解説
  2. 水耕栽培と養液土耕栽培、養殖まで同時にできる!? 話題の鉄骨ポリカハウスの設備を見学
  3. バラ・トマト・イチゴ農家が語る 低温CO2施用機『真呼吸』の実力とは
  4. 農家の新しいつながりを作る! プラットフォーム6選
  5. スマート農業はここまで進化した! 今後の課題と未来とは……?
  6. 成功する農業! 有機肥料と化成肥料の基本とやり方
  7. 増税対策、あなたは万全? 農家が知っておくべき「軽減税率」と注意点とは
  8. 農産物の国際基準・グローバルGAP認証取得とは?
  9. あのランボルギーニから最新モデル!? クールな「高機能トラクタ」5選
  10. 無駄なコストを削減! 農業用ハウス強度の考え方
 

フリーマガジン

「AGRI JOURNAL」

vol.13 / ¥0
2019年10月8日発行

お詫びと訂正

ロクジカチャネル