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生産者の取組み

「知識と技術が成功の鍵を握る」4Hクラブ京都府会長が語る、農業の発展と展望とは

京野菜や宇治茶といった伝統ある生産物が、今もなお、盛んに作られている京都府。そんな“温故”の気質が強い土地において、養液栽培という目新しい農法のもと、新規で農業をはじめたのが「京都府4Hクラブ」の会長・小島敬久さんだ。小島さんに、これまでのキャリアや農業における成功の秘訣などについて、お話いただいた。

メイン画像:「京都府4Hクラブ」の会長・小島敬久さん

養液栽培に感じた可能性を信じ
大胆に行動した

京都府の中西部に位置する亀岡市にて、フリルレタスやルッコラなど、葉物野菜を中心に生産する小島さん。生産方法として、養液栽培という少々珍しい方法を採用しているのが特徴だ。

養液栽培とは、養分を溶かした培養液を与え、植物を栽培する技術。その種類として、土の代わりに培地を利用する固形培地耕、培地を使わない水耕栽培などが挙げられるが、小島さんが導入しているのは水耕栽培だ。就農したおよそ4年前から、小島さんは養液を使った水耕栽培に取り組んでいる。

自社で管理しているハウスの様子

小島さんは、大学と大学院で、養液栽培の研究を重ねた経歴をもつ。目新しい栽培方法である養液栽培に惹かれ、研究にのめり込んだが、「現場に研究成果を還元したい」という思いから、卒業後は農業界へ。亀岡市内にある農家のもとで就農研修を終えたあと、可能な限りの資金を投入し、養液栽培を行うための設備を作り上げたという。

「当時は、“養液栽培なんて本当にできるのか?”、“そんなに資金投資して、失敗したらどうするんだ”と、周囲の人から心配されましたね(笑)。でも、養液栽培は、自分が労力と情熱をかけてきた最たるものなので、意地でも成功させてやろうと。なにより研究を通じ、養液栽培には可能性があると感じていました」

結果的に、これまで培ってきた知識が活き、良質な野菜を通年で生産することに成功。さらには、安定した取引と収益の拡大が実現した。やがて事業規模を拡大できるほどの余裕が生まれたため、今夏、新たにハウスを設立し、イチゴの栽培をスタートさせたという。

古くより高いブランド力を誇る、京野菜

 



エビデンスに基づいた知識を
成功のきっかけに

就農した当初から養液栽培に取り組んでいた小島さんの存在は、同世代の農家から注目を集めていたよう。地元の4Hクラブのメンバーから誘いを受け、クラブに加入したところ、いきなり副会長に就任。さらにその翌年には、会長職を任された。また、加入時より、クラブ員から作物の栽培法に関してたびたび相談を受けており、学術的な知識などを共有することもあるという。

就農してから5年弱と、現場でのキャリアは浅いにも関わらず、着実に成功と信頼を勝ち取っている小島さん。そんな小島さんが信条とするのは、「エビデンスに基づいた知識が、農業における成功の鍵を握る」ということ。

「例えば、“自給自足生活がしたいから”、“有機農法にチャレンジしてみたいから”という理由で、下積みなしで農業界に飛び込んでくる人がいますが、うまくいかないケースが多いようです。反対に、きちんとした知識と技術を身につければ、農業で成功できる可能性が上がると思います」と、話す。

また、地域の農業をさらに発展させるためには、新しい知識の習得と情報共有が大切と考えており、今後、研修や会員同士が交流する機会を増やす予定なのだとか。最後に、地域の農業の未来に対する、見解をうかがった。

「京都には、京野菜をはじめ、伝統あるブランド野菜があります。そうした伝統を守ることはちろん大事なのですが、新しいブランドや農法の確立にもっと力を入れるべきなのでは、と思います。新しいブランドや農法ができれば、地域の農業はさらに魅力的になりますし、新規就農者も増えるはずです」

PROFILE

小島敬久さん

1987年京都府生まれ。明治大学農学部、ソウル国立大学院にて、おもに養液栽培について学んだのち、就農研修を経て就農。現在、亀岡市篠町で葉物野菜を中心に栽培している。


Text:Yoshiko Ogata



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