生産者の取組み

農業の印象向上を! 発想力を武器に、地域活性化を図る石川県4Hクラブ会長の取り組みとは

「石川県は、農業においては弱小県。しかし、若手農家を中心に、柔軟な発想をもって意欲的に農業に取り組む人が増えています」と、「石川県4Hクラブ」の会長・池野翔吾さんは話す。県内で行われているユニークな取り組み、そして農業に対するビジョンをお話いただいた。

メイン画像:「石川県4Hクラブ」の会長・池野翔吾さん(写真中央)。写真は、池野さんが主催する農業体験イベント時に撮影されたもの。池野さんは、近年の耕作放棄地問題を受け、担い手不在の棚田を活用し農業体験イベントを開催している。

農業を“カッコイイ仕事”にするために

「農業に“カッコイイ仕事”、“モテる仕事”といったイメージをもたせたいですね。もっと農家は、外見磨きや他業種の人たちとの交流に、時間とお金を使ってもいいんじゃないかと思います」
 
こう、理想の農家の姿について語る池野さん。この理想像が生まれた背景には、農業界が抱える課題があるようだ。
 
「国内の各地域で、後継者不足が問題になっています。後継者不足を解消するには、さまざまな対策が必要ですが、“農業=カッコイイ仕事”というイメージをつくることで、わずかながら後継者不足が解消されるのでは、と思います。浮いた時間とお金を使い、新事業を生み出すのも素晴らしいことです。でも、視点を変えて、ファッションや交流などに注力してみるのも有効だと思います」
 


「第58回全国青年農業者会議」での発表時の様子

 
外見磨きや交流に時間とお金を投資するには、物理的な“余裕”が必要。“余裕”を生み出すうえでは、新しい農法と技術の導入がマストです、と続ける。池野さんは、2019年2月に開催された「第58回全国青年農業者会議」でも、こうした考えを発表している。発表のタイトルは、『水稲栽培における「高密度苗」の「条抜き移植」による省力化及びコスト削減の検討』。「密苗(みつなえ)」という新技術の特長、「密苗」がもたらす余暇の活用方針が、発表のおもなテーマだ。
 
「『密苗』は、2016年頃、『石川県農林総合研究センター農業試験場』などが中心となって開発した育苗技術です。『密苗』を取り入れると、育苗箱一つあたりにまく乾籾の量が倍になるので、1アール当たりに使用する苗箱数が大幅に減ります。つまり、育苗にかかるコスト、移植作業にかかる労力が削減されます。また、『密苗』の導入によって生み出された余暇、余剰金を事業拡大にだけでなく、農業という仕事へのイメージアップに費やそう、といった趣旨の内容を発表しました」
 
ちなみに、余暇と余剰金の活用方針は、2016年頃より「石川県4Hクラブ」で行われてきた「モテ活」という活動に起因しているそう。「モテ活」は、おもに異業種の人々を招いた交流会で、収穫体験や野菜の試食などをとおし、農家の魅力をアピールすることを目的としている。
 


 

「密苗」の導入時の様子。導入にあたり、地域の農業青年とも情報共有した。



柔軟な発想力を武器に、
地域の農業を盛り上げる

実家が稲作農家である池野さんは、子どもの頃から農業に触れてきた。休日に父と一緒に圃場に行き、農作業を手伝うこともあったという。学校を卒業後、7年ほどほかの業界で働いたが、やがて再び家業を手伝うように。ほどなくして農業法人「株式会社JAアグリサポートかほく」に就職し、数年後には役員に就任している。
 
一人の農家として、あるいは農業法人の役員として、さまざまな視点のもと農業に携わってきた池野さんは、農業界に残るある風潮について、こう指摘する。
 
「農業界の一部では、効率よりも文化としての農業を大切にする傾向が残っています。つまり、効率を上げるよりも、目の前の仕事をきっちり行うことを優先する人が一定数いるんですね。例えば、除草機で取りきれなかった草を手で刈ったり、田植機を使えない圃場に手で苗を植えたりする場合がありますが、手作業だとどうしても時間がかかってしまう。”手作業は徹底的に省き、条件がいい場所に新たに圃場を作った方が賢明では?”と、思うんです」
 
中山間地域が多い石川県は、農業に向いているとは言いがたい県。また、農家戸数も少ないうえ、家族経営の小規模農家の存在も目立つという。農業においては弱小県にあたるものの、近年、若手農家たちの士気は高まっているようだ。
 
「農業法人に勤める人が『石川県4Hクラブ』に加入するケースが増えています。彼らが持つ特有のビジネス感覚、発想力が、メンバーにとっていい刺激になっているようです。実際、会議では、意欲的でユニークな議論が交わされることが多いですね。今後も発想力などを武器に、県の農業を盛り上げていきたいと思います」



PROFILE

池野翔吾さん


1986年石川県生まれ。新潟県内にある専門学校でを卒業後、一般企業での営業職などを経て、2011年に就農。現在、農業法人「株式会社 JA アグリサポートかほく」の役員を務めるかたわら、実家の圃場でも水稲を生産している。2019年4月より「石川県4Hクラブ」の会長。
 

DATA

4Hクラブ(農業青年クラブ)


文:緒方佳子

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