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行政とクラブの連携で積極的な活動を! 岡山県4Hクラブ会長が目指す”強い農家”とは

桃やぶどう、梨といった果樹に加え、水稲、野菜など、幅広い作物が栽培されている岡山県。県内には、若手農家が中心となり、おおいに盛り上がっている産地もあるという。県の4Hクラブ「岡山県新農業経営者クラブ連絡協議会」の会長、妹尾充さんに詳細をうかがった。

メイン画像:「岡山県新農業経営者クラブ連絡協議会」の会長・妹尾充さん

海外の市場に
積極的に参入する産地も

岡山県は、「晴れの国」と呼ばれ日照時間が長く、気候が温暖な県。清涼な水や、肥沃な土地にも恵まれていることから、多種多様な作物の生産に適した地域といえる。とくに果樹栽培が盛んで、大粒のぶどう「ピオーネ」、高級フルーツの「マスカット・オブ・アレキサンドリア」、白桃などが代表品種として知られている。
 
「県内で良質な果樹が栽培されているのは有名で、岡山県は『くだもの王国』とも呼ばれています。また、こうしたブランド力を生かし、魅力的な取り組みを行っている生産組合や個人農家が多く見受けられますよ」と、妹尾さん。なかでも、総社市を拠点に活動する「総社もも生産組合」が注目を集めているという。
 
「総社もも生産組合」は、およそ10戸の農家によって構成された組合。各々の圃場で栽培した桃を選果場に持ち込み、選別は専任のスタッフに委託するという仕組みが採用されており、高品質な桃のみ市場に出荷される。
 
また、「総社もも生産組合」から出荷される桃の食味や、充実した研修制度などに惹かれ、異業種から新規参入する人も多くいるのだとか。「台湾やドバイなど、諸外国への輸出も積極的に行っているようです。『総社もも生産組合』は、今後さらに注目されると思います」と、妹尾さんは話す。
 
なお、県内の4Hクラブ「岡山県新農業経営者クラブ連絡協議会」も、盛り上がりをみせる団体だ。同クラブは、600名近いメンバーが所属する大所帯。9つある地方協議会では、ソフトボール大会や食育活動など交流事業が行われており、県協議会では、経営研修会、活動発表会、岡山県との意見交換会などが開催されているそう。
 
妹尾さんいわく、当クラブの魅力は、「行政(事務局:県農産課)とクラブの連携が取れており、活動や情報発信が効率よく行われていること」。多くの若手農家が集い、活動が積極的に行われている秘訣は、この点にありそうだ。



“強い農家”を増やし、
地域課題に立ち向かう

妹尾さんは、一般企業での勤務を経て、2012年に新規就農を果たした。現在は、倉敷市玉島地域にある圃場で、主にぶどうやレモンを栽培している。就農8年目を迎えた今は経営も安定しているが、就農した当初は、戸惑うことが多くあったと振り返る。
 
「きちんと研修を受けて就農しましたが、まだまだ知識が足りなくて。病虫害の被害に気がつけなかったのが原因で、品質が下がってしまったり、収量が大きく減ってしまったこともありました」
 
月日を重ねるごとに知識が身につき、病虫害を原因に失敗するケースは減ったが、ある大きな課題が依然として立ちはだかっているという。イノシシや鹿、大型ネズミ「ヌートリア」といった野生動物による、農作物の食い荒らしだ。
 
「経営上、獣害は本当に深刻な問題です。成熟期を迎えたぶどうをイノシシにほとんど食べられてしまい、50万円以上もの損失を被ったこともあります。また、岡山県には『ヌートリア』がとくに多く生息しているのですが、夜間に稲や野菜を食い荒らされる農家が続出しています」
 
こうした状況を少しでも改善しようと、妹尾さんは猟銃免許を取得し、猟友会に加入。自衛に励むほか、猟友会のメンバーとも積極的に情報交換をしているという。
 
獣害に加え、高齢化による生産者の減少、耕作放棄地の増加など、地域には複数の課題がある。また、2018年7月には、豪雨による洪水が倉敷市真備町周辺を襲った。こうした苦境を目の当たりにしつつも、「岡山を支える“強い農家”を増やしたい」と、妹尾さんは意欲をみせる。最後に、こう抱負を語ってくれた。
 
「栽培、経営、災害に強い農家を地域内で増やしたいですね。岡山県の将来のためにも、自分や家族の幸せのためにも。今後も県や関係機関と協力しながら、人と人との繋がりができる活動を行い、クラブを盛り上げていきたいです。」


成熟したシャインマスカットを手入れ中



PROFILE

妹尾充さん

1980年岡山県生まれ。広島県内の大学を卒業後、ドラッグストアに就職。退職後、農業研修を経験し、妻の実家がある岡山県倉敷市にて就農。2018年に「岡山県新農業経営者クラブ連絡協議会」の会長に就任。

※記事中の役職等は取材時のものです。

 

DATA

4Hクラブ(農業青年クラブ)


文:緒方佳子

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