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生産者の取組み

「果樹作りなどをとおし、地域を盛り上げたい」 岩手県4Hクラブ会長が語る夢ある農業とは

この10年ほどの間に、様々な自然災害に見舞われた岩手県。その影響は長引いており、過疎化が止まらない地域も見受けられるという。そんななか、高いモチベーションをもって農業に励み、地域おこしに努めているのが、「岩手県4Hクラブ」の会長、山崎慎弥さんだ。

メイン画像:「岩手県4Hクラブ」の会長・山崎慎弥さん

父の後押しで決意した、
長野での進学

「物心がつく頃から、『将来は、家の畑でおいしいリンゴを作る』と話していました。農家になるのは、当たり前のこととして捉えていたんです」
 
こう話すのは、「岩手県4Hクラブ」の会長であり、岩手県宮古市で果樹の栽培を手がける山崎慎弥さんだ。山崎さんの実家の家業は、リンゴをはじめとする果樹の生産・販売。圃場で祖父母と父母が働く姿をみていたことから、“いつかは家業を継ぐんだ”と子ども心にも思っていたという。「でも、当時の農業に対する思いは、決して強いものではなくて。“家業を継ぐのが無難な道なんだ”と、考えていたふしがあります」と、山崎さん。
 


山崎さん一家が管理するリンゴ畑

 
中学を卒業した後は、県立盛岡農業高校へ。その後、同校の特別専攻科に進み、住み込みで農業研修を受けながら、学校の講義にも参加する生活をスタート。しかし、さらに多様な知識や広い世界への欲が生まれたのをきっかけに、特別専攻科を退学し、長野県農業大学校の果樹実科・研究科に進学することに。
 
「同校の果樹実科・研究科の教室は、果樹試験場にあります。現場ですぐに役立つ実技から果樹の研究まで、幅広いカリキュラムを受けることができるんです。同校への入学が決まった時、“果樹のスペシャリストになるそ”と、ようやく気合いが入りました」
 
しかし、入学準備を進めている真っ最中の3月11日、あの大きな地震が起きた。
 
「うちは高台にあるため、大きな被害を免れましたが、津波に襲われた後の街の様子は、忘れることができません。また、家族をふくめ、地域の人々が大変な目に遭っているのに大学校に行けるわけがない、とも思いましたが、父が『お前は長野に行って勉強してこい』と背中を押してくれたんです」。
 



 

温暖化の進行を見すえ、
帰郷後は早々と対応

果樹実科・研究科で得た学びと長野県内での滞在は、山崎さんにとって大きな収穫となったようだ。山崎さんは、当時を振り返りながらこう話してくれた。
 
「果樹試験場で学んでいると、国内各地のリンゴを食べることができます。結果的に、さまざまな品種の知識を身につけることができました。また、現地で食べたモモが驚くほどうまくて。その味にすっかりほれ込んでしまい、“宮古の圃場でも、この味を再現しよう”と決意しました」
 
加えて、山崎さんの関心をひいたのは、長野県における温暖化の影響だ。東北地方よりも南部に位置する長野県では、温暖化の影響が如実に表れており、農家も例年にはない対応を迫られているそう。遅かれ早かれ、岩手県をふくむ東北地方にも温暖化の影響がおよぶことを直感した山崎さんは、帰郷後、早々と対策を導入している。
 
「リンゴに関しては、品種の入れ替えを進めています。今後、既存の品種にうまく色が乗らなくなることが予想されるので、色がつきやすく、なおかつ味のいい品種と差し替えているんです。また、モモの栽培にも力を入れています」
 
モモを栽培品種に加えたことは、将来性のある方向転換だったよう。モモには寒冷地ではうまく育たない性質があるが、今後、東北地方でも作りやすくなる可能性が十分にある。主要な栽培品目をリンゴからモモへ転換することも、視野に入れているという。
 



 


「岩手県4Hクラブ」の活動の一環として、マルシェを開催したことも

 
温暖化の影響は各所に出ており、2019年秋には、記録的な大雨などを伴う台風19号が日本各地を襲った。東北地方も例外ではなく、宮古市周辺ではひどい水害に見舞われている。さらに、今年に入ってからは、新型コロナウイルスの流行も。不測の事態が次々と発生しており、「岩手県4Hクラブ」の活動実施がままならない状況だが、大崎さんの地域に対する思いは熱い。
 
「震災後、宮古市の周辺地域ではさらに過疎化が進んでいます。その反面、果樹作りなどをとおし、地域を盛り上げたいという気持ちが強くなっていて。数年前より、地域おこしを目指す宮古市在住の人々と協力し、宮古のアピール動画の制作などを行なっています」
 

PROFILE

山崎慎弥さん

1991年岩手県生まれ。県立盛岡農業高校、長野県農業大学校で学んだのち、実家が経営する「南澤果樹園」で就農。果樹栽培を行うかたわら、地域おこしを目的に、地域の人々と共同してイベント開催、動画制作など、さまざまな活動を行なっている。2019年より「岩手県4Hクラブ」の会長

※記事中の情報は取材時のものです。

DATA

4Hクラブ(農業青年クラブ)


取材・文:緒方佳子

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