注目キーワード

生産者の取組み

気候変動対策につながる『リジェネラティブ農業』とは? 進む再生型農業・海外3事例

農業においての新しいキーワードである『リジェネラティブ農業』。十数年も地球環境保全が叫ばれる中で出てきたこの農法は、どのようなもので、どのように地球環境に作用していくのだろう?事例とともに解説する。

土壌を修復し
自然環境を回復させる

リジェネラティブ農業とは、土壌の有機物を再構築し、土壌の生物多様性を回復させることで、二酸化炭素の大気中への排出を抑制する炭素隔離や水循環の改善をもたらし、気候変動対策にもつながる農法で、「再生農業」や「環境再生型農業」とも呼ばれる。

環境負荷の低減に主眼を置く有機農業に対して、リジェネラティブ農業は、より包括的なアプローチのもと、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復につなげる。土壌を健康な状態に戻すことで、化学肥料を用いることなく栄養価の高い農作物を栽培でき、農業の生産性を向上できるのも利点だ。

その具体的な手法としては、農地を耕さずに作物を栽培する「不耕起栽培」や同じ圃場で異なる種を年毎に循環させて栽培する「輪作」、樹木を植栽して樹間で農作物を栽培する「アグロフォレストリー」などがある。

海外ではどんなふうに
進んでいるのだろう?

リジェネラティブ農業に
特化した教育機関

『リジェネラティブ・アカデミー』は、スペイン南東部ムルシアの標高1100メートルに位置する1100ヘクタールの農場「ラ・フンケラ」に併設されているリジェネラティブ農業に特化した教育機関だ。

© 2018 FUNDACION REGENERATION ACADEMY 『リジェネラティブ・アカデミー』が併設されている農場「ラ・フンケラ」

「ラ・フンケラ」では、有機農業からリジェネラティブ農業への転換をはかり、穀物やアーモンドを中心に、多種多様な果物や種実類、野菜を栽培しながら、土壌を修復し、水循環を改善させ、生物多様性を回復させている。『リジェネラティブ・アカデミー』は、「ラ・フンケラ」が培ったリジェネラティブ農業にまつわるノウハウを次世代人材に伝え、リジェネラティブ農業を推進することで、よりよい食システムの実現につなげようとしている。

リジェネラティブ農業の基本的な理論から土壌管理、水管理、生物多様性管理といった実務知識までを1週間で集中的に学べる実地トレーニングのほか、リジェネラティブ農業について研究する学生を対象とした専門プログラム、起業家を志す地域の若者に向けた起業家育成プログラムなどを定期的に開催している。

© 2018 FUNDACION REGENERATION ACADEMY 『リジェネラティブ・アカデミー』の実地トレーニングの様子

▶▶▶『リジェネラティブ・アカデミー』のサイトを見てみる



リジェネラティブ農業を
実践する農家と事業者をつなぐ

『ソイル・ヒーローズ』は、リジェネラティブ農業を実践する農家とリジェネラティブ農業を推進したい事業者とをつなぐプラットフォームのような役割を担っている

© Soilheroes BV 2021 リジェネラティブ農業を実践する『ソイル・ヒーローズ』の農園

『ソイル・ヒーローズ』では、オランダ南西部アウト=バイエルラントの農園でリジェネラティブ農業を2012年から実践。その知見やノウハウを活かし、リジェネラティブ農業に取り組む農家に向けて実用的なツールキットの提供やサポートを行う一方、メーカーをはじめとする事業者に対して気候変動に伴う事業リスクを評価し、リジェネラティブ農業を推進する効果や利点についてアドバイスしている

英国では、独自の完全栄養食を開発・販売する「ヒュエル」やプラントベースフード(植物由来の食)に特化したミールデリバリーサービスを展開する「オールプランツ」といったフード系スタートアップ企業が『ソイル・ヒーローズ』に賛同し、イングランド中部ノーサンプトンシャーでリジェネラティブ農業への転換に取り組む「ショーズレイ・ファーム」を支援している。

▶▶▶『ソイル・ヒーローズ』のサイトを見てみる



アグロフォレストリーに
特化したソリューション

デンマークのスタートアップ企業『リジェン・ファーマー』は、人工知能(AI)やビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、リモートセンシングといったデジタルテクノロジーの活用によってリジェネラティブ農業への転換を後押ししている。

『リジェン・ファーマー』では、アグロフォレストリーに特化した2種類のソリューションを開発。1つ目のアグロフォレストリーのためのプランニングソフトウェア「リジェンワークス・プラント」は、圃場をマッピングし、アグロフォレストリーを診断して、その設計を最適化できるほか、財務分析や予算策定のための機能も備わっている。

© 2021 Regen Farmer 「リジェンワークス・プラント」アグロフォレストリーのレイアウトページ

2つ目は、「リジェンワークス・グロー」は、土質試験など、圃場のデータを収集して分析し、アグロフォレストリーの農場を適正にマネジメントするソリューションだ。

© 2021 Regen Farmer 「リジェンワークス・グロー」のデータ解析ページ

これらのソリューションによってこれまでに200ヘクタール以上の農地がアグロフォレストリーへと転換した。「リジェン・ファーマー」では、2025年までにその規模を500万ヘクタールに拡大させることを目標に掲げ、自社のソリューションを積極的に展開していく方針だ。

▶▶▶『リジェン・ファーマー』のサイトを見てみる


文/松岡由希子

関連記事

特集企画

アクセスランキング

  1. 最初に混ぜるだけでOK!? タマネギ栽培に欠かせない便利な肥料
  2. 課題にあわせた肥料を提供! データ分析であなた専用の処方箋が得られるウェブサービス...
  3. ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いは? メリットを専門家が解説
  4. 成功する農業! 有機肥料と化成肥料の基本とやり方を徹底解説
  5. 草刈のプロに聞いた! 農家のお悩み別「刈払機選び」のポイント
  6. 10年掛かる土壌改良が短期間で可能に! 天然腐植物質に含まれる「フルボ酸」の効果とは...
  7. アゲトラ・コンプリートからDIYペイントまで! 軽トラカスタムがアツい
  8. いま人気なのはコレ! 押さえておきたい「売れ筋トマト品種」15選
  9. 手押し一輪車を電動化へ! 作業負荷を軽減できる改造キット「E-cat kit」とは...
  10. “食料自給率”を上げるのは誰? 生産者の努力だけで自給率は上がらない...

フリーマガジン

「AGRI JOURNAL」

vol.21|¥0
2021/10/13発行

お詫びと訂正