農業用ドローンのガイドラインが見直しに! 実証研究段階から実用化フェーズへ
2019/06/24
実用化が進んでいく農業用ドローン。活用分野も拡大を続け、これからの農業に大きなイノベーションを起こすことは間違いない。そんな農業用ドローンの現状と課題を見ていこう。
農業用ドローン普及へ追い風!
ガイドラインが見直される
近年、農業分野におけるドローンは急激に実装が進んでいる。作物の生育状況のセンシング、圃場・園地管理、肥料や農薬のピンポイント散布など利用分野はますます拡大。また、小型で機動力の高い機体が登場し、中山間地での活用も期待されている。農業の生産性を飛躍的に上げるための起爆剤として今後、ますます発展を遂げるだろう。
農林水産省では、農業用ドローンの本格的な普及を目指し、ドローンの農業利用時におけるガイドラインの見直しを計画。
従来は、操縦者の他に補助者を配置する義務があり、普及の足かせとなっていた。しかし飛行する農地周辺に人の立ち入らない「緩衝区域」を設置することにより、「補助者」なしでの飛行を容認。また、自動操縦による目視外飛行、夜間における飛行も可能になる。6月中には、ドローンを飛行させる際に必要となる既存の国土交通省の飛行マニュアルに、上記を盛り込んだ「空中散布を目的とした飛行マニュアル」を新設する予定だという。
農業用ドローン活用例!
7つの現状と課題
①人工授粉
リンゴの授粉について、民間企業と農業高校が連携している実証例がある。プロペラによる吹き下ろし気流で散布作業をする「ダウンウォッシュ」の強化や散布ノズルの改良等の技術開発、実証が課題だ。
②農薬散布
水田、畑、飼料作物など土地利用型作物を中心に、急激に利用が拡大。農水省では、2022年までに散布面積を100万haまで拡大することを目標にしている。露地野菜や果樹栽培等へのニーズも高く、ドローン用農薬の登録拡大が急務。必要な箇所にだけ農薬を使用し、効率的かつ環境に優しい「ピンポイント散布技術」の普及に期待が高まる。
③収穫物運搬
現在は実証段階だが、実用化すれば作業労力の大幅な軽減につながるだろう。課題は、重量物運搬時の機体の安定性、長時間&長距離飛行のためのバッテリーの最適化、ハイブリッドエンジンの開発などだ。
④肥料散布
ドローンを活用することで、生育ムラをなくし、収量の拡大、品質の向上が期待されている。農薬散布用ドローンと、機体を共有することが可能なため、今後さらなる普及が見込まれている。ドローン散布に適した肥料資材の開発や、技術実証が現在の課題だ。
⑤センシング
ドローンに搭載した高精細カメラなどの画像をもとにした、施肥や収穫適期を判断する生育状況分析、病害虫の診断など、様々な技術の実用化が進んでいる。広範囲でのセンシング効率や解析精度の向上、対象品目の拡大等、技術の進展によって今後、費用対効果がより明らかにされることが求められる。
⑥播種
水田に種を蒔いていく『湛水直播機』での作業が難しい中山間地域の活用による省力化が期待されている。一部の農業法人やJAにおいて、直販栽培で活用、実証が進んでいるが、今後は、均一散布技術の開発、実証が課題になる。
⑦鳥獣被害対策
高性能な赤外線カメラを搭載したドローンで、シカやイノシシなどを撮影し、鳥獣被害対策に役立てる。生息域や生息数、行動状況把握等を行う技術の確立が課題だ。
text: Yukiko Soda
AGRI JOURNAL vol.11(2019年春号)より転載