農業のIT人材確保はどうすれば容易になる? 県単位での開発が有効?
2020/01/08
農業におけるIT人材不足は、グローバルレベルの問題になってきている。全国的に共通化している農産物流通の仕組みや、JAのシステムにおいては、メインの部分は各県単位で、ITを活用した効率的なシステム作りを検討していくべきだろう。中央大学教授の杉浦宣彦氏が、JAにおける農業のIT化について説く。
人材確保とシステム開発の
共同化による効率的なIT化を
JAの方々とIT活用について話すと、システム人材の不足が話題に出てくる。今やIT人材不足はグローバルレベルの問題になってきており、農業に限らず、わが国のIT化の進行が遅れている最大の要因の一つでもあるのだ。政策でIT人材の確保や登用、小学生のプログラミング授業など、様々な試 みがされている。しかし現段階では、もともとの人材の母数が少ないため、教育プログラムを変えても人材が育つには相当な年月がかかると予想されている。
そんな中、各地の単協や県中央会からよく聞くのが、「東京とか大都市とは違うし、給与なども差があるから、とてもIT人材の確保なんて。こんな状況で農業のIT化なんてよく言いますよね」という声だ。実際に各地を訪ねると、この話はかなりリアルな話で、自分たちで人材を確保しようとするのは無理があるように感じる。ではどうすればよいのだろうか。
まず農業の場合、各地域で共通して作っている農産物があったり、農産物流通の仕組みやJAのシステムも全国的に共通化している部分が多いため、メインの部分は各単協レベルではなく、各県単位での開発として、人が少なくても動く効率的なシステム作りを検討していくべきだろう。
また農業が盛んな地域では、生育状況や農薬管理に関連する部分まで織り込んだシステム作りをするとなると、作物単位や年単位の細かいシステム作りの検討を進めていかなくてはならない。そこで以前に紹介した「あい作」などを各論的に導入して、農家にも便利かつ、消費者や市場から要請される農作物の情報の透明性に対応できる仕組みのシステムをいれ、メインシステムとのインターフェイスを考える方が効率的だ。さらに、頻繁なサー バーの機能のアップグレードや災害への対策として、自らサーバーを持つのではなくクラウド化を検討することも有効であるだろう。
PROFILE
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
杉浦宣彦
現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。
AGRI JOURNAL vol.13より転載