スマート農業加速化実証プロジェクト開始から1年、現在の様子は…?
2020/05/08
全国で一斉に始まった、スマート農業を普及させるための実証実験。それらはいま、どのように進められているのか? プロジェクトの1つである、株式会社誠和をはじめとしたコンソーシアムの動画が公開された。
農業を支える
味方としてのテクノロジー
2019年度から、農林水産省による事業「スマート農業加速化実証プロジェクト」が全国69箇所で開始されている。この事業は、その名の通り、スマート農業の社会実装を加速するために、実際の生産現場で技術実証を行い、2年間で経営効果を明らかにするものだ。
このうちの1つが、株式会社誠和が中心となった9社のコンソーシアムで行われている取り組みである。誠和の実証農場「トマトパーク」にて行われている実証は、どのようなものなのか? また、事業の開始から1年が経ち、実証はどのように進んでいるのか? 先日公開された動画では、プロジェクトが行われている様子を覗くことができる。
トマトパークでは、下記の13のテーマの実証が行われている。
1.プロファインダークラウドの改良、インフラの強化
他コンテンツとの連携をしやすくする。
2.ハウス内のCO2収支(施用-排出=吸収)で光合成量推定
CO2換気回数をもとに、ハウス内の群落光合成料を推定する。
3.ハウス内環境や生育などのデータをもとに収量予測
収量予測ソフトにより栽培環境改善や生産計画を立案(収量5%向上を目指す)。
4.ハウス内環境データをもとに病害虫発生予測
コナジラミ発生予測、農薬散布等を記録(コスト5%削減を目指す)。
5.ハウス内環境を均一にするための多点計測
環境ムラを可視化して、ハウス全体での収量の最大化(収量5%向上を目指す)。
6.環境制御機器のIoT化
他コンテンツとの連動・遠隔動作で、さらなるスマート化。
7.人の管理を可視化・数値化
スマートウォッチで労務管理と、技術の簡単なデータ化を実現(労働生産性20%向上を目指す)。
8.「HACCP」の義務化を見据えた青果物流通
新しいトレーサビリティ野菜で、安心できる青果物を消費者へ(販売単価20%向上を目指す)。
9.気象データから需要予測
日本気象協会の「売りドキ!予報」をベースに、気象が消費活動に与える影響を予測。
10.会計専門企業との連携
経営コンサルティングサービス付き会計ソフトでサポートを受ける(コスト5%削減を目指す)。
11.石油残量の可視化
燃料切れの防止、石油供給の配送効率の向上。
12.人工知能AIによる分析・アドバイス等の各種自動化
AIによる分析で農業に新たな気づきを与える(コスト削減5%を目指す)。
13.ロボット(プリバ社開発)での作業の自動化
労働時間の削減。(摘葉作業時間50%削減=総労働時間1/7削減を目指す)
動画でも触れられているように、この実証は、ハウスのなかの作業の効率化にとどまらない。誠和の「プロファインダークラウド」を軸に、環境、生育、作業、流通、経営等を可視化することで、収量や労働時間当たりの生産量増加やコスト削減を目指している。
トマトパークではすでに、測定器や環境制御機器のほか、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチといった身近な機器を農業に取り入れ、効率化、負担軽減に成功している。13のテーマがすべて現場で実証され、技術が普及するようになれば、全国の農業の多くの部分で経営改善が見込めるだろう。
最先端のテクノロジーと組み合わさって生まれ変わる日本の農業の未来は、さらなる希望に満ち溢れている。