地域活性につながる! 農業DXを活用した都市農村交流の新たな動き
2021/10/18
DXにより、人は時間と場所の制約から解放され、どこにいても社会に参加できる。データでつながる農業DXがもたらす、都市農村交流の新たな動きとは。最新事例を紹介しよう。
メイン画像:スマホで遠隔地のロボットを操作し、農業参加するシステムRaraaS(ララース)の将来展望イメージ。今後H2LのBodySharing技術を組み込み、細かな指の動きや力の入れ具合などの作業をロボットに伝達し、果実の重さまでユーザーにフィードバックするシステムの実現を目指す。(画像提供:H2L株式会社)
農業DXによる技術革新で
促進する社会課題の解決
コロナ禍で、日本のデジタル化の遅れと従来の「つながり」の分断など、農業・食関連産業分野での課題が明らかとなった。そんな中で2021年3月、農林水産省が「農業DX構想」を発表した。目的は「デジタル技術を活用したデータ駆動型の農業経営により、消費者の需要に的確に対応した価値を創造・提供できる農業」の実現である。
農村地域では、高齢化や担い手不足により個々の集落が単独での継続が困難となる中、農業生産や農地の保全といった地域の課題に、DXによって取り組む事例が広がってきている。例えば、インターネットやSNSを活用してグリーンツーリズムや農泊といった滞在型交流を図ったり、農場と物理的距離の離れた地域の消費者とがオンラインでつながり、Zoomで農場見学や農業体験なども行われるようになった。
さらに、従来の発想では実現できなかった新しい商品・サービスも生まれている。例えば、農作物の育成状況を映像で視聴できる新たな購買体験だ。
つくばみらい市のふるさと納税サイトでは、空間データプラットフォーム「KOTOWARI™」上に構成した消費者向け農地映像配信サービスを活用し、田植えから収穫まで作物の日々の成長を観察することができる。消費者が農作物を購入する際に「どのように生産者がこだわって栽培したのか」「どのような環境で育ったのか」などの情報を届けることで、付加価値が高まり、購買意欲の向上に繋げていく。
また、「農業従事者数の減少」や「都市一極集中型の社会構造」「障がい者の社会参画機会の制限と低賃金」という3つの社会課題の解決に期待されているのは「RaraaS(ララース)」というシステム。ユーザーがスマートフォンの操作画面から、農地に設置されたロボットを制御して農作業を行えるとして注目されている。どこにいても農作業に参加できる画期的なシステムだ。今後一般のユーザーにも体験会が公開される予定だという。
画像提供:H2L株式会社
このように、農業DXによって今後ますます時間と場所の制約から人を解放し、居場所はもとより社会的役割や仕組みが物理的に分散したままデータでつながることが可能となり、新たなコミュニケーションの機会がもたらされている。今後はますます技術革新に向けた投資による好循環が活性化されていくだろう。
文:脇屋美佳子
AGRI JOURNAL vol.21(2021年秋号)より転載