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パン製造でコメ需要を創出!? 6次産業化に新展開

地元農産物を使って、6次産業化ビジネスモデルの構築を目指すJAが増えてきている。「生産・加工・流通」の新モデルとは? 中央大学大学院教授の杉浦さんに話を聞いた。

民間企業と提携し商品開発
生産・加工・流通に新モデル

地元農産物を使って、6次産業化ビジネスモデルの構築を目指すJAが増えてきています。そんななか注目されているのが、今年3月1日に締結された「JA会津よつば」と福島市のパン製造販売会社「銀嶺食品」による包括的業務提携。両者は今後、戦略的パートナーとして共同で商品開発を行い、新たな地域ブランドの確立や地域経済活性化に向けた取り組みを進めていくことになります。

まず計画されているのが、会津で生産された米を、銀嶺食品の工場でパンに加工して、会津の農産物直売所で販売するという試み。原料米には、米どころ会津にあってダブつき気味の業務用米を用います。将来的には、米以外の農産物や畜産物についても加工食品化を図っていきたい考えです。



ここで重要なのは、この取り組みが、たんに原料となる農産物の消費を増やそうというだけのものではない点です。1次産業・2次産業・3次産業が一緒になってシナジー効果を上げる、6次産業化の流れに乗っているところがポイントなのです。もちろん、これがうまくいけば、結果として農産物の消費拡大はついてきます。

一般にJAには、農産物の生産(1次産業)や集荷・流通(3次産業)のノウハウはありますが、加工製造(6次産業)のノウハウは不足していました。今回の事例のように、この不足している2次産業を民間企業と提携することで補い、地元農産物の6次産業化を実現していく取り組みは、これからますます増えていくものと思われます。

加工製造を意識することは、生産される農産物のスタイルや流通方式を変えていくことにも繋がるでしょう。例えば、ケーキに使われるイチゴなら、形や大きさは生食用ほどこだわる必要はありません。農産物の約80%が何らかの加工用だったり、外食用である現状においては、もっと加工を前提にした生産に目を向けるべきなのです。JA会津よつばの取り組みが、福島の農業だけでなく、日本の農業の生産のあり方をどう変えていくことになるか、注目されるところです。


プロフィール

中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授

杉浦宣彦

現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。


text: Kiminori Hiromachi

AGRI JOURNAL vol.03(2017年春号)より転載

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