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「無人での完全自律走行」が実用化!? 2020年、スマート農機は大きく進化する

いよいよ現実味が増してきた、自動運転型の農業トラクター。農業機械のスマート化は、実際どこまで進んでいるのだろうか? 現状と未来について、本分野研究における第一人者である北海道大学・野口伸教授に伺った。

日本のスマート農業は
世界をリードする立場に

日本農業に固有の問題として、農業従事者の急減と高齢化があげられており、それに対応するため農作業の省力化・軽労化などが求められています。

そこでロボット技術や人工衛星を活用したリモートセンシング技術、それにICTなどの農業への活用が期待されています。それを実現するため、法整備や安全性に関するガイドラインの策定といったソフトの対応も進められています。

この日本農業に固有の問題は、内閣府直轄の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)課題として取り上げられています。

SIPとは府省の枠や旧来分野の枠を超えて科学技術イノベーションを実現するために創設されたプログラムのこと。2014年から始まった第1期では、農業のスマート化と農林水産物の高付加価値化の技術革新を実現し、農家に貢献することを目指していました。

その成果は着実に表れています。直進自動操舵機能だけでなく、有人監視下での無人自律運転が可能なトラクターも市販化されています。これは極めて大きな進歩です。



直進自動操舵機能を搭載したモデルは国内4メーカーから出揃いました。対象機種も広がりを見せており、トラクターのみならず、田植機にも搭載され、さらにコンバインにも搭載されました。搭載形態も多様化しています。

機体としての販売だけでなく、手持ちの農機に後から組み込むことができる後付けシステムも販売されました。このように直進自動操舵機能を搭載したモデルは、今まさに普及期に入ってきています。

こうなると生産者はニーズに見合ったモデルを選びやすくなります。メーカー側としても、販売台数が伸びることで量産効果が得られるため低価格化が可能となり、さらに普及すると予想されます。

一方で、現在のロボット農機では、安全性を確保するために装備している赤外線センサーや超音波ソナーなどの装置が高価であり、これがロボット農機の高価格の要因の一つとなっています。自動車分野で使用している画像認識などの安全対策技術を取り入れることができないか、研究が進められています。

このようにロボット農機が社会実装されたことで、日本のスマート農業は世界からも注目される存在へと成長しています。

本年5月に新潟市で開かれたG20農相会合では、日本の吉川貴盛農林水産大臣が、日本の先進的なスマート農業技術が課題解決に寄与できる、と述べています。

スマート農業で世界をリードする立場が明確になってきています。



SIP第2期でも継続して
スマート農業を推進

SIPの第1期は2019年3月末に終了して、現在はSIP第2期『スマートバイオ産業・農業基盤技術』の下に寺島一男農研機構理事が座長を務めて、ロボット農機の高度運用ワーキンググループ(以下、WG)を設置して、行政・メーカー・研究機関で開発技術の円滑な社会実装に向けた議論を進めています。

農水省が設置した「スマート農業の実現に向けた研究会」が設定した農業機械の安全性確保の自動化レベル(概要)で見ると、既にレベル2まで実現しています。

» 関連記事:無人自動運転がアツい! 「レベル2」のスマート農機が本格販売開始

そして現在は、次の目標である2020年のレベル3『無人状態での完全自律走行』モデルの実用化に向けて取り組んでいるところです。

ハード面の取り組みの一つとして、農道の3Dマップ化があげられます。これは協調領域とされており、各社バラバラに3Dマップを開発するのではなく、協力体制を組むことで効率化を図っています。

そして北海道開発局が整備中の遊水地(閉鎖空間)を利用して、圃場間移動を含む遠隔監視による自動走行の実証試験に向けて動いています。

農道の3Dマップ化は自動車(公道)と同じ技術で実現可能ですから、今後は自動車分野とのコラボレーションが鍵になりそうです。それでも、農道と圃場の取付道の標準化など、まだまだ社会実装となると、残された課題は少なくありません。

SIPで開発している準天頂衛星システム(QZSS)に対応した高精度受信機の開発は、既に実現しました。その核となる、みちびきは、2018年11月に4機体制で運用が開始されました。将来7機体制となることが決まっており、ビルや樹木などで視界が狭くなる都市部や山間部でも、より安定した測位を行うことができるようになります。

今のところ受信機の超低価格化は実現していませんが、今後その有用性が認知されればメーカーの採用が増え、量産メリットによる低価格化が期待できます。これもハード面の取り組みの成果です。

ソフト面として、無人状態での完全自律走行に向けて法整備を進めています。農業ロボットの圃場間移動や電波の問題など、実用化に向けて調整が必要な事項は数多くあります。それに対して、関係省庁と議論を進めています。

また2019年6月に開催したWGでは、圃場間移動の法整備において対象とする農業機械などについて議論しました。また「農業機械の公道走行に向けた具体的方策についても検討しています。また電波利用についても、関係省庁間で議論を進めています。



持続可能な農業を目指して
中山間地に普及させたい

ここまではSIPにおける取り組みを中心としたロボット農機の現状と将来について解説しましたが、私個人としては、もう少し遠い将来を見ています。

最近、SDGsという言葉を聞くようになりました。これは2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さないことを誓っています。

日本のロボット農機をはじめとしたスマート農業は海外、特にアジア諸国の農業の近代化に大いに貢献することでしょう。

このSDGsの視点に近いのですが、私は日本農業を支えてきた中山間地の農家を助けることができるスマート農機を社会実装したいと願っています。それには今より小型化、高性能化、低価格化したロボット農機を核にしたスマート農業の推進が必須です。

もしも棚田管理できるようなスマート農機が出てくれば、極めて少ない労力で中山間地の農業を続けることが出来るようになります。

生産性を追うだけでなく、日本固有の文化を守ることができる……そんなスマート農機が活躍する社会を実現することが私にとってのゴールです。


プロフィール

野口伸氏

北海道大学教授。内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」プログラムディレクターを務める。食料生産システムのロボット化やICTに関わる研究に取り組んでいる。

製品・問い合わせ

①ヤンマー ロボットトラクター
YT488A・YT498A・YT4104A・YT5113A(88.0~113.0馬力)
価格:1,214万5,000~1,549万5,000円

問/ヤンマーアグリジャパン 農機推進部
TEL:06-7636-6264

②クボタ アグリロボトラクタ
SL60A(60馬力)
価格:970万~1,100万円

問/株式会社クボタ
TEL:0120-131391

③井関農機 ロボットトラクタ
TJV655R(65馬力)
価格:1211万円(モニター販売)

問/井関農機株式会社
TEL:03-5604-7602(代表)

④ヤンマー オートトラクター
YT488A・YT498A・YT4104A・YT5113A(88.0~113.0馬力)
価格:1,072万5,000~1,407万5,000円

問/ヤンマーアグリジャパン 農機推進部
TEL:06-7636-6264

⑤クボタ アグリロボトラクタ
MR1000A(100馬力)
価格:1,124万7,000円〜(ホイル仕様)、1,212万7,000円~(パワクロ仕様)

問/株式会社クボタ
TEL:0120-131391

⑥クボタ NB21
GS仕様(21馬力)
価格:226万3,000円~

問/株式会社クボタ
TEL:0120-131391

⑦三菱マヒンドラ農機 GAシリーズ
GA301・GA/GAK331・361・451・501・551(30馬力~54.4馬力)
価格:353万3,000~742万4,000円

問/三菱マヒンドラ農機


text: Reggy Kawashima

AGRI JOURNAL vol.12(2019年夏号)より転載

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