オレンジ色の加工用サツマイモ「あかねみのり」と「ほしあかね」が登場! 2021年春から供給開始
2020/11/17
農研機構では、チップなどの加工に適した「あかねみのり」と干しいも加工に適した「ほしあかね」の2品種を開発。2021年春から供給が開始される。どちらも肉食の色は綺麗なオレンジで、カラフルな色合いを求める声に応えつつ、育てやすさを目指した。
チップと干しいもの加工に適する
「あかねみのり」と「ほしあかね」
食料・農業・農村に関する研究開発を行う機関「農研機構」は10月20日、オレンジ色の肉色をもつ加工用サツマイモ新品種「あかねみのり」と「ほしあかね」を開発したと発表。
2021年春から、民間の種苗会社などが苗の供給を開始する予定だ。
「あかねみのり」は、チップなどの加工用に適しており、きれいなオレンジ色で、多収性で形状が良い。当面は九州地域でのチップ加工用を中心に普及が期待される。
外観と肉色 左:「べにはるか」、右:「あかねみのり」
一方の「ほしあかね」は、干しいも加工用に適しており、「べにはるか」や「ほしこがね」の干しいもに比べると、淡いオレンジ色で透明感のある干しいもができるのが特徴。
食味や形状にも優れ、茨城県を中心とする干しいも生産地帯での普及が期待される。
外観と肉色 左:「ほしあかね」、中央:「べにはるか」、右:「ヒタチレッド」
「ほしあかね」の干しいもの外観 左:「ほしあかね」、右:「べにはるか」
カラフルで作りやすい品種
求める声に応える
食品加工用のサツマイモ肉色の多くは白や黄色。しかし、消費者の嗜好の変化とともに、紫サツマイモに代表されるカラフルな品種の需要が高まっている。
チップ加工用のサツマイモ品種は、いもの肉色がオレンジ色となるカロテン含有のものは少なく、これまでは菓子などに加工される「ベニハヤト」が使われてきた背景がある。
しかし、製品の生産性や収量が低いなどの問題があり、これらの欠点を改良した品種の育成が望まれていた。
「あかねみのり」のいも収量(鹿児島県農業開発総合センター 2017年~2019年の平均)
S社:2018年~2019年の平均/外観・風味・食感・食味:下(1)・やや下(2)・中(3)・やや上(4)・上(5)の5段階で判定
一方で、干しいもは品質・外観の優れる「べにはるか」、「ほしこがね」などが多く使われているが、これらは黄肉色系。
肉色がオレンジ色の既存品種「ヒタチレッド」は裂開が多いなどの問題があり、カラフルな肉色の品種開発が急がれていた。
同機関では、カロテンを含有し、加工適性の高い多収品種の開発に至ったとのこと。
「あかねみのり」「ほしあかね」の特徴
「あかねみのり」の特徴
●いもの外観が良く食味が優れる「べにはるか」を母、カロテンを含有し多収性の「作系22」を父とする交配組合せから選抜した品種。
●いもの形状が揃い、表面の凹凸が少ないので加工しやすく、カロテンを含有するため製品がオレンジ色を帯びた良好な仕上がりとなる。
●チップ加工適性が優れ、食味・品質が優れる。
●「あかねみのり」は、いもの肉色がオレンジ色の加工用品種「ベニハヤト」や「ヒタチレッド」より大幅に収量が高く、サツマイモネコブセンチュウおよびつる割病に抵抗性がある。なお、立枯病には弱いので、発生圃場では防除が必要だ。
「ほしあかね」の特徴
●カロテンとアントシアニンを含有し比較的病虫害抵抗性が優れる「関東136号」を母、でん粉糊化開始温度がやや低く、干しいも品質が優れる「ほしキラリ」を父とする交配組合せから選抜した品種。
●いもの裂開および形状の乱れが少なく、表面の凹凸も少ないため、加工作業が容易。カロテンを含有するため製品がオレンジ色を帯びた良好な仕上がりとなる。
●干しいも加工適性が優れ、シロタの発生が僅かで、食味・品質が優れる。
●「ほしあかね」は、「ヒタチレッド」や、「べにはるか」より多収性を示す。なお、立枯病にやや弱いので、発生ほ場では注意が必要だ。
育成地およびひたちなか現地における干しいもの品質特徴
育成地:茨城県つくばみらい市/ひたちなか現地:茨城県ひたちなか市
シロタ:障害程度を無・微・少・やや少・中・やや多・多の7段階で判定
食味:下・やや下・中・やや上・上の5段階で判定
肉色:淡橙・橙の2段階で判定
繊維:多・やや多・中・やや少・少の5段階で判定
糖度:10倍希釈液について測定した値(育成地のみ)
肉質:粉・やや粉・中・やや粘・粘の5段階で判定(ひたちなか現地のみ)
「あかねみのり」は、チップ加工用で現在の主力品種「ベニハヤト」と置き換えていくことにより、加工用サツマイモの生産振興に貢献すると期待される。北海道では干しいも用として普及が見込まれている。
一方の「ほしあかね」は、干しいも加工用でオレンジ肉色の「ヒタチレッド」と置き換わることにより、オレンジ色系の干しいもの生産拡大が見込まれ、加工用サツマイモの生産振興に貢献すると期待されている。
2021年春から、民間の種苗会社等を通じて苗が供給される予定だ。
DATA
文:竹中唯