「ICT箱罠」でイノシシを撃退! 最新の鳥獣対策とは
2018/03/29
農家にとって深刻な問題のひとつである鳥獣被害。ここ数年で件数は減少しているものの、狩猟者の高齢化や担い手不足により、捕獲に悩まされている自治体は多い。そこで、新たにICT技術を駆使した最新の鳥獣対策が注目を浴びている。被害の多い九州地方の2市町で行われた、実証実験による効果は?
深刻な鳥獣被害と、
増える狩猟者の負担
農家にとって大きな痛手となる、鳥獣被害。中でも、熊本県高森町、福岡県直方市では鳥獣による農作物の被害が多発しており、特にイノシシによるダメージが深刻だ。
対策として、最近では狩猟者の高齢化や担い手不足の面から「箱罠」による捕獲が推進されているが、捕獲確認のための見回りは広域にわたるため、作業者への負担が課題となっていた。
これらを解決すべく、2市町において富士通が開発したシステム「ICT箱罠」を活用した広域鳥獣クラウドサービスを導入し、実証実験を開始した。
見回り作業を軽減し
効率的な捕獲が可能に
「ICT箱罠」とは、日本初の画像解析技術を活用し、指定したサイズ以上の獣が入ると自動的に柵を閉じて捕獲するシステムだ。捕獲した際には自治体や地元の猟友会にメールが配信されるため、細かな見回りが不要となり、効率的な鳥獣対策が可能となる。
現在、高森町では29基、直方市では30 基の箱罠がクラウド上で監視されており、導入後かなりの成果が得られているという。
共同でシステム開発を行った、福岡県農林業総合試験場畜産部専門研究員の村上徹哉氏は、生息頭数の削減について「成獣(体重20 キロ以上)の捕獲率は、2008年~2013年度の平均46%から、ICT箱罠を設置後には65%まで向上した」といい、導入後の変化に喜びの声をあげた。
実際にシステムを運用するためには、生態調査費用および機器の保守などに年間200万円のランニングコストがかかるが、それ以上に被害低減が見込めるため費用対効果は絶大だそう。
広域鳥獣クラウドによって被害低減を立証した高森町と直方市だが、まだまだ深刻な鳥獣被害に悩まされている自治体は多い。今後もこういったICT技術の活用例に注目しつつ、農作物の被害削減に期待したい。