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畑では誰もが活躍できる! 「農業のダイバーシティ化」への期待

農業は本来、老若男女問わず、また障害者でも外国人でも誰でもが活躍できる多様性がある。「ダイバーシティ経営の農業版」普及への第一歩として、女性が活躍できる環境を整えた農業経営体を法人・個人問わず表彰する「農業の未来をつくる女性活躍経営体100選」に取り組む日本農業法人協会に農業経営について訪ねた。

法人経営を支援する様々な活動

当協会の活動は、農業法人の経営の確立・発展のための調査研究、提案・提言、情報提供を柱としています。調査研究では、毎年、農業法人の実態調査を行い「農業法人白書」を作成し情報公開しています。また政府との意見交換を通じて、毎年6月には政策提言を行っています。それ以外にも、近年は災害が続き、昨年9月の関東・東北豪雨や、今年4月の熊本地震などの緊急要望も行っています。

一方で法人経営に有用な人材を確保するため、年間10回程度行われる合同会社説明会(新農業人フェア)の開催に協力しています。そこでは農業インターンシップコーナーを設置し、学生、社会人、採用内定者向けに制度を紹介し、農業法人には1週間以上の受け入れに協力いただいています。

また、外国人技能実習生の受け入れを行う監理団体の事業も行っています。農業を通じた国際貢献を目的として創設された制度を活用し、現地の送り出し機関と連携して、受入を行う経営者が有望な人材を選定し、受入後は円滑に実習が進められるよう支援を行います。

こうした活動は、農業法人を中心とした正会員約1900社、関係団体の賛助会員7団体、農業以外の金融機関や専門家、資材メーカーなどで構成されるアグリサポート倶楽部会員約140社の会員の皆様に支えられています。全国には約1万9000の農業法人経営体があるといわれており、当協会の会員はその1割ぐらいです。

WAP100で選定
農業版ダイバーシティ経営

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昨年度から「農業の未来をつくる女性活躍経営体100選(WAP100:ワップ100)」に取組んでいます。これは、女性が活躍できる環境を整えた農業経営体を法人・個人問わず表彰するもので、経営者の意識改革、女性の幹部登用やキャリア育成、家庭と仕事の両立支援のための育児休暇や短時間勤務などの制度整備を通じて、経営上の成果である売上や生産効率の向上などといった項目について重点的に審査が行われます。昨年度は32経営体を認定し、今年度は応募を締め切っていますが30経営体程度の認定を予定しており、3年で100経営体を目標としています。

たとえば、ある農業法人で初めてパートの女性が育児休暇を申請しました。その時、男性の社長は頭を悩ませ、役員の奥様は何とか実現させたいと相談されました。抜けた分の補充が必要だからです。そこで社長は、「彼女が帰ってきたとき、その分の仕事を増やしておくような経営方針にすればよい。経営発展のチャンスだ」と頭を切り替え、雇用を断ち切らない環境を整えました。

昔の農家は、一家の中で祖父母や夫婦、子供、それぞれに役割がありました。すでに、いわゆるダイバーシティ経営をしていたはずですが、農業の発展とともに人材不足が問題となっている中、家単位から雇用型へ経営が変化し、今後は外部からの雇用とそれを継続する環境が必要となっています。

こうした課題に早急に対応すべく、WAP100では女性活躍にテーマを絞っていますが、その先に「ダイバーシティ経営の農業版」の普及が期待されているのです。

農業は本来、老若男女問わず、また障害者でも外国人でも誰でもが活躍できる多様性があるのです。


公益社団法人 日本農業法人協会

農業法人の経営確立・発展のため調査研究、提案・提言、情報提供等の活動を進め、日本の農業・農村の発展を目指して1999年設立。会員数1870(2016年12月現在)。47都道府県段階の農業法人組織と連携する。


Text: Kousuke Oneda

※『AGRI JOURNAL』vol.2より転載

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