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日本初、バイオスティミュラント適正利用への自主規格を公表。正しい効果の測定方法の確立に期待

地球温暖化による栽培課題の対策として期待されているバイオスティミュラント。日本国内では評価基準に関する認識が曖昧なことで、使用時などで課題が生じている。そこで、「Eco-LAB」は日本初の適正利用に関する自主規格を公表した。

「資材が満たすべき基準」により
効果を発揮する資材が特定可能に

地球温暖化による栽培課題の対策として期待されている、バイオスティミュラント(以下、BS)。栄養成分の取り込みや利用効率を改善したり、高温などの環境ストレス(非生物的ストレス)に対する耐性を改善する。

先行研究が充実する欧米諸国において、BSは「成分や原料ではなく、明確な効果の実証に基づいて評価すべきである」というように、客観的に効果を確認することが共通認識として求められている。

一方、日本国内では、BSの効果の測定方法や資材の評価基準に関する認識が曖昧であることから、生産者が目的にあう適切な資材を選択しづらく、安心して使用できないという課題が生じている。その結果、農作物の生育や、品質・収量が改善せず、投資効果がみられない事例も発生している。

そういった背景を踏まえ、今回、BS活用による脱炭素地域づくり協議会「Eco-LAB」は農林水産省が発表した「BSの表示に係るガイドライン(案)」に準拠する「BS資材の適正利用に関する基準(自主規格)」を公表した

2023年9月の発足以降、農業共同組合を中心としたネットワークを活かし、BS資材の正しい知識の普及と農業現場への活用を推進してきたEco-LAB。株式会社AGRI SMILEが協議会代表者を務め、3つのコンソーシアムから構成されている。

今回発表された、BSの正しい効果の測定方法の確立と標準化は、農業現場におけるBSの正しい情報普及につながると期待されている。

以下、株式会社AGRI SMILEのリリースより

日本初、バイオスティミュラント資材の適正利用に関する自主規格を公表

2025年4月15日、バイオスティミュラント活用による脱炭素地域づくり協議会(Expert COuncil for Low carbon Agriculture in Biostimulant technology、以下、Eco-LAB)」は、農林水産省が発表した「バイオスティミュラントの表示等に係るガイドライン(案)※1」に準拠する「バイオスティミュラント資材の適正利用に関する基準(自主規格)」を公表しました。

本自主規格は、農業現場が求めるバイオスティミュラント資材※2の基準として、資材の要件と、その試験方法および判定基準を定めたものです。資材の効果を発揮させる条件を特定するための試験方法として、実験室試験(ラボ試験)、圃場試験、安全性試験の手順を示しています。これにより、資材の製造販売事業者様は農林水産省のガイドラインに準拠した商品表示ができるようになり、資材を使用する農業生産者様は科学的根拠をもとに目的にあった商品を安心して選択できるようになるため、農業現場におけるバイオスティミュラントの正しい情報普及が期待されます。

※1:農林水産省(2025年3月)https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000288163
※2:植物への接触によって刺激を与えて、植物自らの作用を促す資材の総称。詳細:https://eco-lab.gr.jp/biostimulant-definition

背景

先行研究が充実する欧米諸国において、バイオスティミュラントは「その成分や原料ではなく、明確な効果の実証に基づいて評価すべきである」という共通認識が確立しています※3。すなわち、原料と、資材を構成する最終混合物の効果は必ずしも因果関係がなく、同一原料であっても、混合物や製造方法の影響によって効果が異なる可能性があるため、製造後に調査分析を行い、バイオスティミュラントとしての効果を客観的に確認することが求められています。

一方、日本国内においては、「使用している原料が同じであればバイオスティミュラントである」という解釈が広まっていたり、バイオスティミュラントではない商品に「バイオスティミュラント」の表記があったりするなど、効果の測定方法や資材の評価基準に関する認識が曖昧であることから、本来想定されるバイオスティミュラントの効果が十分に発揮されず、農業生産者様が目的にあった適切な資材を選択しづらく、安心して使用できないという課題が生じていました。その結果、農作物の生育や、品質・収量が改善せず、投資対効果がみられない事例も発生しています。

こうした背景のもと、日本でもバイオスティミュラントの正しい効果の測定方法の確立と標準化が求められており、より科学的かつ的確な評価が重要となっています。

※3:The science of plant biostimulants(2012年)
https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/5c1f9a38-57f4-4f5a-b021-cad867c1ef3c

Eco-LABの取組み

Eco-LAB(エコラボ)では、2023年9月の発足以降、農業協同組合を中心としたネットワークを活かし、バイオスティミュラント資材の検証結果や効果に関する知見を会員間で共有するとともに、海外の政策や研究事例の勉強会も重ね、正しい知識の普及と農業現場への活用を推進してまいりました。また、本自主規格に基づいて評価されたバイオスティミュラント資材のみを使用することを基本方針とし、生産現場での判断基準に役立ててきました。

このたび、農林水産省によるガイドライン案の発表を契機に、業界の関心が急速に活発化した反面、生産現場では情報の混在が見受けられるようになったことを受け、正しい情報の整理と発信を行いガイドラインの普及を推進するために、本自主規格の公表(※4)に至りました。

※4:日本国内において、農林水産省の「バイオスティミュラント表示等に係るガイドライン(案)」に準拠するバイオスティミュラントに関する民間規格として日本初である。農林水産省および関係官庁サイト内の調査、関連団体の調査、およびGoogle Scholarを用いたバイオスティミュラントに関する文献・民間規格調査(自社調べ 2025年4月)

自主規格について

Eco-LABの自主規格、およびガイドライン解説記事は、Eco-LABの公式Webサイトで公開しています。

【バイオスティミュラント資材の適正利用に関する基準(自主規格)】
自主規格は、農業現場においてバイオスティミュラント資材を利用するために、現場が求める資材の基準を定めるもので、農林水産省の「バイオスティミュラントの表示等に係るガイドライン」に準拠しています。
バイオスティミュラント資材の適正利用に関する基準(自主規格)はこちら

【バイオスティミュラントのガイドライン解説】
農林水産省の「バイオスティミュラントの表示等に係るガイドライン(案)」の内容について、具体的な解説やバイオスティミュラント資材を選ぶ際の注意点などをわかりやすくまとめています。
監修:東京大学名誉教授 渡邊 雄一郎 
バイオスティミュラントのガイドライン解説はこちら

Eco-LABは、今後も農林水産省が掲げる2021年の政策指針「みどりの食料システム戦略」の高い生産性と持続的生産体系への転換を推し進めるため、バイオスティミュラントの適切な利用と健全な市場形成に寄与してまいります。

バイオスティミュラントとは
バイオスティミュラントは、植物への接触により植物に刺激を与えて、植物自らの作用を促す資材の総称です。バイオスティミュラントを植物に散布すると、植物の「生理機能」に刺激を与えます。植物の組織はその刺激を受けて、自ら生理機能を活性化して、環境ストレスを乗り越えるための体づくりを行います。その結果、栄養成分の取り込みや利用効率を改善したり、高温などの環境ストレス(非生物的ストレス)に対する耐性を改善します。

バイオスティミュラントは、地球温暖化による栽培課題の対策として期待されており、特に欧米では、気候変動対策による普及が拡大しており、2012年に、世界で初めて政府関連文書として、欧州委員会(European Commission)が、バイオスティミュラントの基礎となる定義を発表して以降、バイオスティミュラントに関わる定義やルール化が進められてきました。

バイオスティミュラントの定義はこちら

Eco-LABについて
協議会代表者は株式会社AGRI SMILEで、3つのコンソーシアムから構成されており、それぞれ代表者はきたみらい農業協同組合、はが野農業協同組合、とぴあ浜松農業協同組合が務めており、バイオスティミュラントの普及と、環境に優しい栽培体系を目指しています。
農業現場のニーズに対応したバイオスティミュラントの適切な活用支援や、農林水産省ガイドラインの勉強会など、農業現場にわかりやすく情報提供するための普及活動を実施しています。
公式Webサイト:https://eco-lab.gr.jp/

株式会社AGRI SMILEについて
AGRI SMILEは、「テクノロジーによって、産地とともに農業の未来をつくる」を経営理念に据え、豊かな経験を持つ産地と、進化を続けるサイエンステクノロジーを融合することで、環境に優しい魅力あふれる農業の実現に取り組んでいます。

国内最大規模の産地ネットワークを活かし、最先端のバイオテクノロジーによる生産技術開発、データサイエンスによる農業DX支援、産地のブランディング支援などを展開しています。今後も、産地と調和した革新的なサービスを通じて、笑顔(SMILE)のある未来を創造し続けてまいります。

【会社概要】
代表者:代表取締役社長 中道 貴也
事業内容:農産業DXサービス、脱炭素に資するバイオテクノロジーの開発及び提供
設立:2018年8月31日
所在地:〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3丁目28-5 Axle御茶ノ水
会社URL:https://agri-smile.com/

引用:日本初、バイオスティミュラント資材の適正利用に関する自主規格を公表

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