再エネで収入アップ! 農業×風力発電のすすめ
2017/01/20
太陽光発電を中心に日本各地で導入が進む再生可能エネルギー。農地に太陽光発電設備を設置する「営農型ソーラー」以外にも、風力発電など、農地を利用した再エネの導入は進んでいる。すべての農家が「エネルギー兼業農家」になる日も近い!?
農業+ 発電で
「エネルギー兼業農家」へ!
東日本大震災を契機として、2012年に施行された「固定価格買取制度(FIT)」。再生可能エネルギーで発電された電気を、電力会社が一定価格で長期間買い取ることを国が約束する仕組みだ。地球温暖化への対策が求められている今、CO2を排出せず環境への負荷が低い再生可能エネルギーは、世界中で導入が進んでいる。日本よりも再エネが広く普及しているデンマークやドイツでは、農家や農業団体、地域住民などが主体となって風力発電を行う例も多い。
日本では、農地での再エネ設備の設置について、2013年に農林水産省が規制緩和の方針を打ち出し、導入が加速。農地の上に太陽光発電設備を設置する「営農型ソーラー」(ソーラーシェアリング)の事例が増え、食糧と電気の2つを生み出す「エネルギー兼業農家」も徐々に増えている。
風力発電については、FIT以前から導入している事例もあるが、FIT施行後に収入が大きく増えたケースもある。例えば、山形県庄内町では、「当初、17年〜20年で建設費などのコストを回収する想定でしたが、FITによって売電収入が増え、コスト回収が前倒しになる見込みです」と同町の担当者は語る。
環境への影響を調査する「環境アセスメント」の実施など、太陽光と比べると導入は容易とはいえないが、再エネ導入の支援制度を整えた自治体もある。農業に収入をプラスし、地域にもプラスとなる再エネの導入。「エネルギー兼業農家」が増えることは、農業の活性化のみならず、地域の活性化へ、そして日本全体の活性化へとつながるだろう。
CASE 01
山形県庄内町
事業実施主体:山形県庄内町、株式会社たちかわ風力発電研究所、株式会社酉島製作所
発電出力計:6,200kW(8基)
発電電力量計:1,250万kWh/年
建設費:約16億円
運転開始時期:1996年1月~2003年2月
最上川に沿って吹き抜ける強風を逆に利用する発想から、風力発電事業を開始。1996年に400kWの風車2基を設置したのを皮切りに、最も多い時期で8基の風車が稼働。
庄内米の穀倉地帯である最上川流域に広がる水田の間を縫って風車を設置し、景観的にも風車が田園風景に変化を与えるモニュメントとなったことから、2001年に「風車市場」と名付けた直売所を開設。直売所には、風車を一望できるスペースを設けたことで、観光客の立寄りが増加。特産品のPRや売上げ増につながった。2016年12月現在、6基が稼働中。
CASE 02
高知県高岡郡梼ゆすはら原町
事業実施主体:高知県高岡郡梼原町
発電出力計:1,200kW(2基)
発電電力量計:296万kWh/年
建設費:約4億4,500万円
運転開始時期:1999年12月
町面積の林野率91%。町北部のカルスト高原は風況がよく、水資源も豊富。風車で発電した電気は全量売電し、町の環境基金への積み立てを実施。売電収入は、固定価格買取制度認定前の年間約3,500万円から、認定後には年間約6,000万円に増加した。
基金積立金により、2001~2010年度までは間伐交付金として10万円/haを森林所有者に交付。現在は、ペレット向け間伐材の搬出費用として4,800円/㎥を補助。このほか、公共施設の屋根を利用した太陽光発電、梼原川の有効落差6mを利用した小水力発電など、地域資源をエネルギー生産に活用している。