JA全青協、新体制で組織基盤強化へ 青年部員減少に「情熱一心」で立ち向かう
2026.05.18
全国農協青年組織協議会(JA全青協)は5月14日、第73回通常総会を都内で開催し、2026年度の新役員選出と事業計画を決定した。星敬介会長は、組織の喫緊の課題である青年部員の減少に対し、新スローガン「情熱一心」を掲げて組織変革に挑む方針を明らかにした。
メイン画像:選出された2026年度のJA全青協新役員
1.福島出身の星新会長を選出 2026年度の新執行部が始動
2.第8次中期活動目標を承認 学習と仲間づくりを活動の柱に
3.ポリシーブック2026 が完成 浅葱色に込めた「新選組」の覚悟
4.青年部員減少への抜本的対策 食農教育の強化と広報戦略の刷新
5.福島の再生を全国の力に 星会長が語る郷土への熱き想い
福島出身の星新会長を選出
2026年度の新執行部が始動

会長に就任した星敬介氏 (JA会津よつば)
14日の総会では、2026年度の舵取りを担う新会長に星敬介氏 (JA会津よつば・福島)が選任された。副会長には菅原啓介氏 (JA千葉みらい) と藤岡義宏氏(JA山口県)が就任し、理事には各ブロックの代表が名を連ねる新体制が発足した。理事には、菊池一裕氏 (JA東西しらかわ)、大沢知明氏(JA湘南)、川邊孝之氏(JAとなみ野)、西川將平氏 (JAいずみの)、村上淳一氏 (JAしまね)、川田大志郎氏(JAあまくさ)が選出された。
星会長は会見の冒頭、前日の総会で選任されたことを報告し、「情熱一心(じょうねついっしん)」というスローガンを披露した。これは、JA青年部が掲げる綱領の「誇り高き青年の情熱と協同の力」という言葉を根幹に据え、部員全員が心を一つにして活動に取り組む決意を込めたものである。
第8次中期活動目標を承認
学習と仲間づくりを活動の柱に

副会長に就任した菅原啓介氏 (JA千葉みらい)
総会では、2026年度から2027年度を期間とする「第8次JA全青協中期活動目標」が承認された。事業内容の骨子として、自立した組織を目指す「自助」、共生を掲げる「共助」、そして政策提言を行う「公助」の3つの視点から活動を展開する。具体的には、学習面においてポリシーブックを用いた研さんやウェブセミナーの実施、海外研修の継続などが盛り込まれた。
また、仲間づくりにおいては、新規部員の加入促進に加え、ホームページやSNSを活用した情報発信の強化を掲げている。特に、JAの枠を超えた商工会青年部や青年会議所といった他団体との連携も視野に入れ、地域農業のリーダーとしての存在感を高めていく方針だ。
ポリシーブック2026 が完成
浅葱色に込めた「新選組」の覚悟

副会長に就任した藤岡義宏氏(JA山口県)
今年度の活動の指針となる「JA全青協ポリシーブック2026」も披露された。表紙の色には、新選組の羽織を彷彿とさせる「浅葱色(あさぎいろ)」が採用された。星会長は、激動の時代に「誠」を貫いた新選組になぞらえ、現代の農業者が守るべき「協同の精神」や「地域の文化」を貫き通す決意をこの色に込めたと語った。
内容面では、離島農業や都市農業といった各地域固有の課題解決に向けた提言が整理された。各理事が部会の座長を務め、現場の声を吸い上げた具体的施策が並んでいる。このポリシーブックは、国会議員や行政機関との意見交換の場において、青年農業者の声を届けるための強力なツールとして活用される。
青年部員減少への抜本的対策
食農教育の強化と広報戦略の刷新
15日の記者会見で最大の焦点となったのは、青年部員の減少問題である。直近1年間で約2000人の部員が減少している現状に対し、星会長は「ここを底にしたい」と強い危機感を示した。その処方箋として打ち出したのが、中高生をターゲットとした食農教育の拡充である。
これまで手薄だった世代に対し、農業を職業の選択肢として認識してもらうための働きかけを強化する。また、新たに「広報戦略委員会」を設置し、SNSを通じた発信を抜本的に見直す。SNSを活用して、農家の日常や農村風景を魅力的に伝えることで、消費者や若年層からの理解と関心を高め、加入につなげたい考えだ。
星会長は会見で、国の農業政策、特に米問題についても言及した。肥料や燃料などの生産コストが高騰する中、適正な価格転嫁が十分に進んでいない現状に対し、「所得の確保ができなければ定着は進まない」と強調した。食料・農業・農村基本法の改正を受け、新たに示される「コスト指標」が、下落局面においても農家の再生産を支える下支えとして機能するかを注視していく姿勢を示した。
また、2027年度以降の米政策の見直しについても、青年農業者が10年、20年先を見通して営農を継続できるよう、現場の声を反映させた柔軟かつ実効性のある制度設計を求めていく方針だ。
福島の再生を全国の力に
星会長が語る郷土への熱き想い
総会では、1年間の任期を終えた北川敏匡前会長が、全国の部員との対話を通じて得た経験を振り返り、「現場の熱量を政策に結びつける難しさと重要性を実感した1年だった」と総括した。新体制に対しては、「星会長を中心に、恐れることなく新しいことに挑戦してほしい」とエールを送った。自身も一人の農業者に戻り、地域から青年部活動を支えていく決意を述べ、次代のリーダーたちへ組織のバトンを託した。

記者会見するJA全青協 星敬介会長
星氏は会見の最後に、自身のルーツである福島県への特別な思いを語った。東日本大震災と原発事故から15年が経過する中、福島の農業復興はいまなお途上にある。8月の全国理事会を福島で開催し、全国のリーダーたちに被災地の現状を直接見てもらう考えを明かした。
震災直後、牛たちを避難させざるを得なかった苦渋の決断や、再開を待ちわびた人々の思いを共有することで、食と命を守る農業の重みを再確認したいと訴えた。「福島の復興がなければ日本の農業の再生もない」という強い信念のもと、郷土の歩みを全国の青年部員の勇気に変えていく覚悟である。
JA全青協は、星新体制のもとで大きな転換期を迎えようとしている。部員の減少や政策課題といった逆風が吹き荒れる中、星会長が繰り返し口にしたのは「情熱」という言葉だった。農業を、子供たちがあこがれる職業へと押し上げるためには、まず現場に立つ青年農業者自身が誇りを持ち、その姿を発信し続けることが不可欠である。
通常総会と記者会見を通じて示された数々の施策は、日本の食料安全保障を根底から支えようとする若者たちの決意表明にほかならない。情熱を一つに束ね、困難な壁を突き崩していく JA全青協の新たな航海が、いまここから始まった。
DATA
取材・文/アグリジャーナル編集部
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