干ばつ被害が多かった地域の農家所得が3倍に!?
2018/05/02
近年、全国各地で成功事例が上がってきている、農林水産省の土地改良事業。内陸性気候のため、年間の降水量が少ない干ばつ被害が課題となっていた岩手県二戸郡一戸町での事例をご紹介。土地改良事業を利用し、全国有数のレタス産地となり、農家の安定した所得を確立することに成功した。
天候に左右されない収穫が可能に
全国有数のレタス産地へ
近年、国内では農業従事者数の高齢・減少化により、農作物の国内生産量は減少傾向にある。そこで、農林水産省は国の事業として、日本全国の農村地域で土地改良事業を進めている。土地改良事業とは、農林水産省の管理のもと、主に土地改良施設(かんがい排水施設、農業用道路など)の新設、更新、管理などを行っている事業のことである。
現在は全国有数のレタス産地でもある岩手県二戸郡一戸町。土地改良事業を利用して開始した取り組みが実を結び、地域のレタス農家の大幅な所得向上を実現した。
一戸町は内陸性気候※のため、年間の降水量が少ない。かんがい設備の整っていないほとんどの農家では、たびたび干ばつ被害が発生し、安定的なレタスの収量を確保することや品質を維持することに難しい状況だった。土地改良事業を利用して、水源を確保するため、ダムの水を利用した畑地かんがい施設を整備した。畑地かんがいとは、作物に必要な水をダムに蓄え、近隣の畑にかん水する仕組みのこと。干ばつ被害を未然に防止し、天候に左右されずにかん水を行うことが可能となり、レタスの収穫量と品質が向上した。それに伴い、市場からの評価も向上。主に首都圏へと販路が拡大していき、現在のような全国有数のレタス産地となった。
※内陸性気候とは、海から離れた内陸部に見られ、気温の年変化や日変化が大きく、降水量・湿度ともに低い気候のこと。
作業の省力化で余力が生まれ、
レタス以外の収入源も確保
2015年、一戸町の地域全体のレタス販売額は11年ぶりに10億円突破した。15年前、レタス農家の平均所得は200万円だったが、実施後(2016年現在)は平均所得600万円にまで増加した。一戸町では、農家の更なる経営の安定化を目指しているという。
かんがい設備の導入によりかん水労力を大幅に削減することができ、レタス栽培の省力化によって生み出された労力で、ミズナなどハウス葉物野菜等レタス栽培以外の栽培にも挑戦しはじめている農家もいるという。一戸町では、農家の更なる経営の安定化を目指している。
参考:農林水産省ホームページ 高収益な農業の実現に向けた取組事例集