JAと生産部会の線引~独占禁止法に抵触する可能性は?
2018/04/18
JA土佐あきが独占禁止法違反で排除措置命令を受けてから、1年が過ぎた。この事案で浮き彫りになった独占禁止法への誤解について、中央大学大学院戦略経営研究科教授の杉浦宣彦さんにお話を聞いた。
抵触案件と独占禁止法への
間違った理解
JAで独占禁止法問題に焦点が当たるのは今回が初めてではない。農協の施設利用の件や農作物を入れる段ボールの件など、平成に入ってだけでも16件程度、公正取引委員会から警告や法的措置が取られている。
しかし、今回のJA土佐あきの件では、JAそのものではなく、農家が自主的に組織している生産部会での除名とその結果として発生したとされる経済的不利益が問題となった。つまり生産部会と各JAは一体であるという判断がなされたわけである。
実際、生産部会は自主的かつ主体性を持った組織ではあるものの、各JAにとっては、生産量の調整や事業方針等を各部会員(農家)に対して伝える重要なハブ組織でもある。
JAの支店等の敷地内に生産部会が持つ設備機械の倉庫があったり、会合施設等があったりと、外部的な視線で見ても一体感がある場合、生産部会の行為は形式的・実態的にJAの行為と評価され、そのJAの行為が不公正な取引方法を用いる場合、または一定の取引分野における競争を実質的に制限し、不当に対価を引き上げているとみなされる場合、独占禁止法違反される可能性がある。つまり、各JAとも生産部会の規約や生産部会での実態まで確認する必要がある。
また、公正取引委員会は、「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」を公表しており、そこでは主に、組合員の自由・自主的な取引が阻害されたり、競争事業者が組合員と取引する機会を減少させるような行為が行われた場合、独占禁止法が禁止する抱き合わせ販売等、排他的条件付取引、拘束条件付取引に該当するとしている。
したがって、JAが部会に対して、同部会の会員が生産物を全量出荷しなければ部会から除名するように求め、JAに全量出荷させたりすると、法に抵触する可能性がある。
だが、これらの違反行為は公正取引委員会自らが調査を行って、摘発しているのだろうか? 次回以降、この実態と各JAがとるべき対策について解説する。
PROFILE
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
杉浦宣彦氏
現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。
『AGRI JOURNAL』vol.6より転載