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日本の農業が危ない!? 「マネー資本主義」に潜む危険性

今、世界の農業が取り込まれつつある「マネー資本主義」。"より多くのお金を稼ぐ"ことを目的に、大量生産や遺伝子組み換えを行った先に潜む落とし穴とは? 地域エコノミストの藻谷浩介氏にお話を伺った。

持続可能性を欠く
“ハリボテ農業”とは

以前にお会いしたある農業経済学者の言は、筆者にとってまさに目から鱗だった。彼によれば農業とは、「今降り注いでいる太陽エネルギーを最大限に活用して、健康な生き物を育てる産業」である。

それに対し、「化石燃料を使って、不健康な生き物を安く大量に育ててる」やり方を、彼は「ハリボテ農業」と呼んでいた。

現実には、日本でも世界でも農業は、化石燃料の大量消費の上に成り立っている。化石燃料は、太古の地球に降り注いでいた太陽エネルギーが当時の植物の中に蓄積され、これが地殻変動で地下に埋まって変成されたものだ。

元々は同じ太陽エネルギー由来だが、何百万年分が濃縮パックされているので、威力(=カロリー量)が違う。これを使うことで人類は、水を汲み上げて灌漑し、化学肥料や配合飼料を製造し、農薬を合成できるようになった。農業機械の利用で肉体労働の手間も大幅に軽減された。

その学者の方も、化石燃料のなかった江戸時代に戻れと言っているわけではない。彼の本意は、「太陽エネルギーを最大限活用し、健康な生き物を育てることで、ハリボテ農業に依存するのに比べ、人間社会の持続可能性を大きく伸ばせる」というところにある。

目先の安さに
とらわれる危険性

日本の食料の輸入額は年間6兆円程度と、自給率が4割を切っているにもかかわらず、トヨタ自動車の単独売上高の半分に過ぎない。しかしそれは、地力と地下水とを急速に枯渇させつつ行われている豪州や米国の農産品の、低価格のおかげだ。

このままでは早晩、特に豪州や中国において土壌の劣化と水不足が深刻化すると見込まれており、農産物の不足と価格上昇は避けられない。目先の安さだけで輸入食料に依存するのではなく、降水と土壌に恵まれた日本国内で、極力地下資源を用いない農業生産を増やすべきなのだ。

しかしそれに対し国際資本は、遺伝子組み換えにより特定の農薬や渇水への耐性を高めた植物の大量生産、あるいは密閉され酸素濃度を高めた「植物工場」での化学肥料を用いた水耕栽培といったように、金融投資家と組みより大規模かつ効率的に生産を行うことで問題を打開しようとしている。

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