2024年農業技術10大ニュース決定! 有機水稲や新品種開発、スマート農業技術がランクイン
2025/01/07
農水省が2024年の農業技術10大ニュースを発表した。この1年間に新聞記事となった民間企業、大学、公立試験研究機関及び国立研究開発法人の農林水産研究成果のなかから、農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など30社加盟)の加盟会員による投票を得て選定された。
縦横の機械除草が可能に!
「両正条植え」で省力化
-省力的な機械除草が有機栽培の拡大に貢献-
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)は、水稲の苗を等間隔の碁盤の目状に植える「両正条植え」の技術を開発した。従来、乗用除草機では一方向の除草しかできなかったが、この技術により、タテとヨコの二方向から乗用除草機が走行できるようになった。
除草の手間が課題となっていた水稲の有機栽培において、省力的な機械除草が可能となることで、有機栽培の取り組み面積拡大への貢献が期待される。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC1)
除草回数が約6割減!
「アイガモロボ」でらくらく除草
-水稲の有機栽培で除草回数を約6割削減、収量を約1割増加-
自動抑草ロボット「アイガモロボ」は泥を巻き上げることで生じた濁りが雑草の光合成を阻害して生育を抑制する。
農研機構、株式会社NEWGREEN(旧有機米デザイン)、井関農機株式会社及び東京農工大学が、全国各地で2年間行った実証試験で、人が機械を使って行う除草の回数は従来の有機栽培と比べて約6割減少すること、雑草による減収が回避されて収量が約1割増加することが確認された。
十分な効果を得るためには、圃場の均平を確保し、「アイガモロボ」が稼働できるだけの水位(5cm程度)を維持することがポイント。
⽔稲の有機栽培において⼤きな負担となる雑草防除が省⼒化されることで、⽔稲の有機栽培の⾯積拡⼤への貢献が期待される。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC2)
スラリと直立したりんごの新品種
「紅つるぎ」を開発!
-りんご栽培における管理作業を省力化-
農研機構は、枝が横に広がらないコンパクトな樹姿(カラムナー性)のりんご新品種「紅つるぎ」を育成した。果実の管理、収穫等の多くの管理作業で作業性が改善され、省力化が可能だ。カラムナー性と高糖度、良食味を両立した品種の開発は国内初。わが国のリンゴ生産を革新する品種として注目したい。
列状に植えた「紅つるぎ」は壁状に果実がなるので、果実の管理、収穫等の多くの作業で省⼒化に貢献。
スマート農業技術との相性も良く、規模拡⼤・収益向上が期待される。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC3)
国内初!
農業特化型の生成AIを開発
-三重県で実証実験開始 将来的には全国規模で農業情報を提供-
農研機構、北海道大学、キーウェアソリューションズ株式会社、三重県農業研究所、株式会社ソフトビル及び株式会社ファーム・アライアンス・マネジメントは、高度な農業知識を学習させた生成AIを開発し、10月から三重県での実証実験を開始した。
インターネット上の情報だけでなく全国の農業機関や生産現場が持つ専門的な情報を収集して、より精度の高い回答を提供することができるようになった。
全国初の農業特化型生成AIの開発。精度の⾼い⽣成AIを活⽤したサービス提供を全国規模で⾏うことを通じて、より⾼度な技術指導や農業情報を受けられる環境整備、ひいては新規就農者の育成など農業の持続的発展への貢献が期待されている。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC4)
餌探しをあきらめない
タイリクヒメハナカメムシ
-行動特性を生かした天敵昆虫の育成-
農研機構は、害虫・アザミウマ類の天敵となるタイリクヒメハナカメムシで、餌となるアザミウマ類が見つからなくてもすぐに飛び立たず、粘り強く探し続ける系統を育成した。
生物農薬としての利用には、長時間にわたり害虫を粘り強く探索して捕食する「すぐにあきらめない」性質が向いていることを発案し、天敵昆虫として選抜・育成する技術の開発に至った。
あきらめない天敵昆虫を育成することで、作物への定着性を向上させ、害虫に対する防除効果の発揮が期待される。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC5)
生産性向上!
多収大豆品種「そらみずき」「そらみのり」を開発
-国産大豆の安定供給や自給率向上に貢献-
農研機構は、従来品種より3割以上多収の大豆の新品種「そらみずき」と「そらみのり」を育成した。両品種とも莢がはじけにくいため、コンバイン収穫でも収穫ロスが少なく、豆腐への加工に向いている。
栽培適地は「そらみずき」が関東から近畿まで、「そらみのり」は東海から九州までだ。これに、「そらひびき」「そらたかく」をあわせた多収大豆の4つの品種「そらシリーズ」で、東北南部から九州での栽培をカバーする。
この「そらシリーズ」を多くの⼤⾖産地に普及させることにより、⼤⾖収量を向上させ、国産⼤⾖の安定供給や⾃給率向上への貢献が期待される。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC6)
【酪農家向け】ズバッと計算!
飼料設計支援プログラムを開発
-最も低コストな飼料メニューと飼料作物の作付け計画を提案-
農研機構は、酪農家向けに最も低コストな飼料メニューと飼料作物の作付け計画を同時に提案するプログラムを開発し、Google Colaboratory上に公開した。
目標乳量、頭数、購入飼料の単価、自給飼料の生産費とほ場面積等の前提条件を入力したファイルをアップロードすれば、試算結果が表示される。
輸⼊飼料の価格が⾼⽌まりし、国産飼料の⽣産・利⽤の拡⼤が望まれる中、本プログラムの利⽤により、国産飼料を利⽤した新たな飼料設計や作付け計画の⽴案が容易になり、酪農家の経営安定への貢献が期待される。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC7)
カラス被害9割減!
「ハウスにテグス君」
-安価な資材で簡単施工-
農研機構は、警戒心が強く見えにくい障害物でも避けるカラスの性質を利用し、ビニールハウスの上部にジグザグ状にテグスを張ることで、カラスにビニールを破られることを防ぐ技術をまとめた。脚立も必要なく、農家自ら張ることが可能。試験では、カラスが開ける穴の数を9割減らすことに成功した。
本技術により、簡易かつ安価にカラス被害を防⽌することで、保温効果の維持とフィルムの⻑期利⽤が可能になり、農業⽣産費のコスト軽減が期待される。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC8)
霜やひょうをピンポイントで予測!
高精度の気象予測システムを開発
-気象リスクをタイムリーにアラート通知-
気象予報を行う株式会社ウェザーニューズは、霜やひょうなど農業で注意が必要な気象の予測情供する新たなサービス「ウェザーニュース for business」を開始した。
畑やハウス周辺の1時間ごとの予報を1kmメッシュの高解像度で提供する。アラート通知で迅速に対応、農作物への被害を最小限に、作業中の従業員の安全も確保。頻発化する気象による農業被害の回避への活用が期待できる。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC9)
「アニマルック」が実現する
家畜遠隔診療の新たな形
-診療予約管理、診察履歴管理、ビデオ通話による診療等を一括管理-
SBテクノロジー株式会社は、スマートフォンなどを通して家畜の遠隔診療を受けることができる新サービス「アニマルック」の提供を開始した。ニーズが高い北海道や沖縄を中心に順次導入される。ビデオ通話も活用し、診療サービスの質を落とさずに遠隔診療の現場への導入が促進されることで、産業動物獣医師不足や農場への病原体の持ち込み防止等にも効果が期待される。
獣医師と農業者の新たなコミュニケーション手段としても有効なツールを提供する。
【添付資料】2024年農業技術10大ニュース(TOPIC10)