脱サラからの就農。活用すべき給付金は?
2016/09/07
急速に進む就農者の高齢化。課題解決に向けて、農水省では45歳未満の就農者に対して「青年就農給付金」という制度を実施。農水省経営局就農・女性課課長の佐藤氏が語る。
▶︎第1回 就農後5年間の支援が人材育成のカギをにぎる
▶︎第2回 農を担う人材育成を。「雇用」という就農スタイル
年間150万円を最長7年間
給付金で経営基盤の確立を!
ふだん仕事として主に農業に従事している「基幹的農業従事者」は現在175万人ですが、このうち65%を65歳以上が占めます。持続可能な力強い農業を実現するためには、急速に進む高齢化の是正が喫緊の課題です。
そこで農水省では、平成24年度から45歳未満の新規就農者に対して「青年就農給付金」という制度を実施しています。新規就農を目指して研修を行う期間用の「準備型」、就農初期の経営を支えるための「経営開始型」という2本立てで運用しています。
青年就農給付金:準備型と経営開始型
「準備型」は、農業大学校や農家などで研修を受ける際に、年間150万円を最長2年間給付するもの。農業技術や経営ノウハウ習得のため、研修に専念できるように配慮する狙いがあります。
「経営開始型」は、新規就農者に年間最大150万円を最長5年間給付します。
全国新規就農相談センターの調べによると、就農後5年未満では、半数以上の人が農業所得だけで生計が成り立っていません。生計の目処が立たないことから、就農後数年以内に離農する人も全体の3割程度に上るとかんがえられています。
経営が不安定な最初の5年間を支えることで、うまく農業を軌道に乗せてもらうことを意図して「経営開始型」を設けています。
ただし、丸5年間の給付を当てにするようでは、農業の発展に寄与しません。一日も早い自立を促すために、前年の所得が100万円を超えた場合は、その所得に応じて給付金額が変動する仕組みにしています。
また、前年の所得が350万を超えた時点で、経営的な自立を果たしたと見なし、就農5年以内であっても、翌年の給付申請は受け付けません。
本制度開始から今年で5年目を迎えていますが、平成27年度の給付実績は、「準備型」が約2500名、「経営開始型」が約1万1600名で、合計は1万4100名となりました。
7年間の給付を受け取った場合、総額は1050万円にもなりますから、本制度を利用した就農者にはその重みを感じていただき、自立を果たせた暁には、ぜひ地域への還元を目指してほしいものです。
農水省では、こうした制度を生かしながら若年層の新規就農者を支援し、向こう10年間で40代以下の基幹的農業従事者を40万人程度に増やしたいと考えています。
文/小島和子