養液土耕+クラウドで低コストで高収益を実現!?
2017/12/18
こうして製品化されたのが”ゼロアグリ”。これまで見えていなかった植物の地下部の状態が、作物に重要な影響を与えることに着目。地下部の環境を制御して、作物の生長状態に合わせ、培養液を自動で供給する。そのうえで、ハウス内に置かれた土壌センサーにて、地温・土壌水分量・土壌EC値を測定して、土壌の状態を把握する。一般的なハウスでは、地上部の把握で終わってしまい、ハウス内のどの場所も一律に管理されていたが、ゼロアグリは複数個所を測定・管理できるから定植時期の異なる栽培が可能である。また、ハウスの外に設置された日射センサーと、ハウス内の土壌センサーからの情報を合わせることで、現在の作物状況にあった最適な培養液量をゼロアグリが判断して自動で供給する。
施設内に配置されたチューブを通じて、根が最も効率よく培養液を吸収する時間に、最適な培養液量を供給することで、収量の向上へと導いてくれる。
こうした高度化された養液土耕栽培である”ゼロアグリ”は、ハウス内の各種測定データ(土壌水分量・土壌EC値・地温・日射量・温度・湿度)のほか、目標土壌水分量データと、それに対して行った培養液供給量データは、クラウドに集約される。それらは、タブレット端末のゼロアグリ画面から確認することができ、グラフから一目で状況を把握することができる。
その効果も絶大だ。ルートレック・ネットワークスが発表したデータ(イチゴ栽培の例)によると、10aあたり地域平均収量4.5tに対して、ゼロアグリの導入により7.6tを確保。しかも品質(糖度)は地域の篤農家を上回り、更に施肥量は地域平均の1/3の量であったという。この事実から、ゼロアグリは高いレベルでかん水施肥が行えるシステムであると言えよう。
本記事冒頭で「ゼロアグリは中小規模施設園芸農家に最適」と明記したが、それには理由がある。それは導入コストが実にリーズナブルだからだ。ゼロアグリが主な対象としている20aほどのハウスの場合で、大まかに200万円程度と月々のランニングコストである。これなら中小規模農家であっても、検討する余地があるだろう。
先日、明治大学黒川農場にて開催されたイベント”黒川Day”にて、ゼロアグリが導入されたハウスを見学する機会を得た。同農場は、研究施設が自然(天然の谷戸)と共生しており、普段は明治大学農学部の学生が学ぶ場であり、同時に農業に関連した各種研究・栽培が行われている。見学させて頂いたゼロアグリ導入ハウスでは、養液を与える時間を変えたり、マルチの使用・不使用といった条件を変えながら、ゼロアグリの実験が行われていた。実際に目にしたゼロアグリは、仕組みもシンプルであるうえ特別な設置スペースも不要であることを確認できた。イベントにて講演を行った小沢教授には、ゼロアグリ導入ハウスのみならず、予定されていなかった農場内各所を丁寧にご紹介くださったうえ、キュウリやゴーヤ、フルーツがお土産として配られた。こうした心配りによるものだろう、イベントではゼロアグリに興味を持った参加者からの質問が絶えなかった。
ゼロアグリは、中小規模施設園芸農家が可能な投資で高収益化を図れる、身の丈に合ったシステムだ。システムを通じて、ベテラン農家が蓄えた知識を範にとることができるから、新規就農者にも適している。施設園芸農家の方には是非ご注目いただきたい。
text:Reggy Kawashima