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サカタのタネとアリスタがバイオスティミュラント分野で協業を発表。GAXY(ギャクシー)が発売へ

2024年6月6日、サカタのタネとアリスタライフサイエンスは、バイオスティミュラント分野で協業すると発表。同時に、協業第一弾のBS資材として「GAXY」の発売が発表された。

種苗メーカー×農薬メーカー
BSの普及と優れた資材開発へ

本題に入る前に、バイオスティミュラント(BS)について復習しておこう。BSとは、日本語に直訳すると「生物刺激剤」であり、植物や土壌により良い生理状態をもたらす資材である。農薬でも、肥料でも、土壌改良材でもない、とも表現される。植物に働き掛けることで、非生物的ストレス(高温・低温・乾燥など)を緩和してダメージを軽減し、収量を維持する役割を果たす。

BSが近年注目されていることは、ご存知のことと思う。日本でも、真夏の異常な高温や豪雨が頻繁に起こるようになった。化学肥料・農薬削減への社会的要望の強まりも、BSを後押しする。「みどりの食料システム戦略」にも、BSが明記された。今までの農業を、このまま続けるのは、難しくなってきている。

こうした背景のもと、サカタのタネが、農薬大手UPLのグループ会社であるアリスタライフサイエンス(以下、アリスタ)と、バイオスティミュラント分野での協業を開始する。UPLはインドに本社を置くグローバルな農薬メーカーであり、BSの開発力にも強みがある。サカタのタネは種苗メーカーだが、『バイオエース』や『高機能液肥 サカタマモルシリーズ』など、BSの名称が世界に広まる前から数十年にわたって生産現場の課題解決に取り組んで来た。農薬メーカーと種苗メーカーがBSで協業するのだ。

協業の発端は、バイオスティミュラント協議会などの活動を通じた人的交流であったという。アリスタの背後に控えるUPLはBSの開発力と生産技術に強みを持つ。サカタのタネは植物生理に関する豊富な知見を持つうえ、日本の全国各地で種苗の講習会を開催するなど生産者に近く、ニーズを把握している。この両社が協業することで、BSの普及や優れたBS資材の開発を目指す。
 



 

低価格でドローン散布可
農薬と混用もOK


記念すべき協業第一弾の商品はUPLがグローバル展開している「GAXY(ギャクシー)」。北大西洋で生育している海藻「アスコフィラム・ノドサム」が原料だ。
サカタのタネ ソリューション統括部の高木篤史さんが説明した。

「水分や養分吸収の改善による高温乾燥、塩害などのストレス耐性向上、光合成能力のサポート、内生ポリアミン生成による花芽誘導および果実の肥大均一化といった、生産者が抱えている課題解決に広く活用できるのが、この『GAXY』です。とにかく効果が凄い!当社の看板BS製品となれると期待しています」

あらゆる作物を対象に使用できるが、果樹での引き合いが特に期待できそうだという。
高木さんは効果の例の一つとして、果樹での果実サイズの均一化をあげた。また、低コストであるため、水稲を含めた穀物での使用にも期待できること、ドローン散布が可能であること、さらに農薬と混用散布が可能であることが特長だ。しかし、同じ海藻を原料とするBS製品は数多くあるのに、「GAXY」だけが高機能で、農薬と混用可能、ドローン散布可能、というのは本当なのだろうか?それについては、ソリューション統括部の大庭一哲さんが教えてくれた。

「それは良い質問ですね(笑)。その秘密はUPL独自の製造技術にあります。生産の過程で、フィルターにより不純物を除去しているんですが(UPLが特許取得済)、一般的な海藻由来BSには広く含まれている一部のアミノ酸を除去しています。それにより農薬混和時に発生するゲル化沈殿の回避に成功しているんです」

なるほど、原料は同じでも、作り方が違うのか。サカタのタネが推すだけあり、明確な理由があった。

「GAXY」は1リットル26,400円(税込)。葉面散布の場合5,000~10,000倍に希釈して使うというから、確かにコスト面での心配はなさそう。全国の種苗店、農業資材店、JAなどを通じて発売される。ご興味を持たれた方は是非、購入して使ってみてほしい。

さらに、高木さんは「第二弾のBS資材を開発予定です。2年以内に、あっと驚く製品をお見せしたいです」と期待を語った。この両社の協業が、BS普及を加速してくれる可能性を秘めている。
 



 


文:川島礼二郎

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