生産者の取組み

世界に広がるりんごの「クラブ制」のメリットとは? 品種開発力の輸出がグローバル化の鍵に

クラブ制を導入したりんごの生産量が各国で増えている一方で、日本政府は、自国で育成した品種を海外に持ち出さないという方針をとっている。クラブ制を積極的に取り入れるメリットとは一体何なのだろうか? 農業ジャーナリストの青山浩子氏によるコラム(後編)。

» 前編「世界で広まるりんごの「クラブ制」とは? 生産者や販売業者を守る工夫」はコチラ

クラブ制によるりんごの生産が拡大

前編では、りんごの生産・販売システムとして世界的に広まっている「クラブ制」を紹介した。りんごの新品種を生産・販売するためのライセンスが会員だけに与えるシステムをいう。苗木を入手し、栽培ができるのは会員となった生産者のみで、出荷されたりんごの販売も、会員の販売業者だけに許可される。りんごの生産及び販売量がコントロールされ、品質管理やマーケティングも一括でおこなわれる。このため、大量に市場に出回ることによる値崩れが起きにくく、生産者及び販売業者は利益を確保しやすい。

このクラブ制を導入したりんごの生産量が各国で増えている。クラブ制を代表するりんごのブランド「ピンクレディー」のように、世界各国で生産されるブランドもあれば、ひとつの国だけで生産・流通するブランドもある。

りんごの品種構成に変化

ところで、どの国にも、圧倒的なシェアを誇る看板商品的なりんごの品種がある。日本であれば「フジ」であり、フランスには「ゴールデンデリシャス」、チリには「ガラ」という品種がこれにあたる。しかし、フランスやチリ、さらにニュージーランドでは近年、クラブ制りんごの生産が増え、りんご全体の品種構成が変わりつつある。
 増えた理由は、国によってそれぞれ異なる。チリは近年、財政事情が悪化し、政府はりんごの生産振興に消極的で、生産者に機械などに助成金を出さなくなった。生産者はせめて利益が確保できる品種に切り替えようと、クラブ制品種を導入するようになったそうだ。

また、ニュージーランドでは、消費者の志向が酸味のある品種から甘みのある品種に移っており、甘みのあるクラブ制の品種の作付けが増え、輸出向けにもこれらの品種を充てているそうだ。

クラブ制は、日本のりんご生産者にとっても無縁ではない。ピンクレディーを生産している農家が日本にも40名ほどいる。また、長野県が開発した品種「シナノゴールド」は、イタリアでクラブ制のもと販売されている。すでに「イエロ」という商標登録で売り出されており、イエロの関係者は「今後はイタリアのみならず全世界でブランドを広めていくことになる」と話していた。

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クラブ制の仕組み導入で、日本農業の強みを出す

日本政府は、自国で育成した品種を海外に持ち出さないという方針をとっている。近年、シャインマスカットの苗が不法に中国や韓国に持ち出され、生産されたり、和牛の精液が不当に中国に輸出されたりといった出来事が相次いだこともあり、知的財産権や育成者権の保護の強化に乗りだしている。この動きは、複数の国で生産・販売を許可するクラブ制とはきわめて対照的だ。

ただ、日本のように果物や米、和牛などすぐれた品種開発力を持っている国こそ、クラブ制を積極的に取り入れるメリットがあるのではないか。何年もかけて、自国で開発した品種を国外に出すことに抵抗感があるのは当然だろう。だが、グローバル化の進展は避けられず、ヒトとモノの往来が活発になればなるほど、農産物も国の垣根を超えて自由に往来する。こうした環境をむしろ有効に活用し、育成者権を保護した上で、生産量を増やし、ロイヤリティとして見返りを得ることにそろそろ目を向ける時期だ。品種開発力に長けた日本だからこそ、自国の農業の強みを世界にアピールする手段でもある。日本政府はいま、農産物そのものの輸出に力を入れているが、品種開発力という強みをいかし、品種と農産物をセットにした輸出も真剣に考えていく必要がある。

PROFILE

農業ジャーナリスト

青山浩子


愛知県生まれ。1986年京都外国語大学卒業。1999年より農業関係のジャーナリストとして活動中。2019年筑波大学生命環境科学研究科修了(農学博士)。農業関連の月刊誌、新聞などに連載。著書に「強い農業をつくる」「『農』が変える食ビジネス」(いずれも日本経済新聞出版社)「2025年日本の農業ビジネス」(講談社現代新書)など。現在、日本農業法人協会理事、農政ジャーナリストの会幹事などをつとめる。2018年より新潟食料農業大学非常勤講師。

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