地域と畑は自分で守る! 花農家が選択した”農家ハンター”の活動に迫る
2020/08/14
くまもと☆農家ハンター
が実践するイノシシ対策
イノシシ被害から地域と畑を守るために試行錯誤を経て、様々な対策を実施。環境整備、防護柵、IoT技術まで総合的な対策が成果に繋がっている。
箱罠を設置
狩猟にも様々な方法があるが、多頭捕獲ができること、安全性が高いこと、搬出時間が短くジビエ活用に最適であることなどの利点から箱罠猟を採用。
イノシシの捕獲は頭脳戦。ただ箱罠を置くだけでは捕獲できない。そのため、研究者や地域の猟友会など専門家の協力を得ながら、捕獲場所の選定をする。現在は、猟友会とともに約200機もの箱罠を地域に設置。罠の仕掛け方や安全な捕獲の仕方など、専門家による勉強会も随時実施。
餌付けSTOP&鉄壁の守りを
農家は、知らず知らずのうちに「餌づけ」している状態であることが多い。農作物の残渣をきちんと処理したり、草刈りをすることで隠れられる場所をなくしたり、野生動物が近づきにくい環境を作ることが大切。
電気柵もきちんとプロの指導を受ける講習会で習い正しく設置している。防護柵を隙間なく設置することを徹底して行うことで効果が現れる。「くまもと☆農家ハンター」では、防護柵は、隙間の出にくいロールタイプの鉄柵を使用。
通知システムの構築
農家とハンター活動を両立させるため圧倒的な効率化に貢献しているのが、通信機能を持つ通知システムだ。九州農政局と共同開発したオリジナル通知機は、ゲートが閉まった時に通知するだけのシンプルなシステム。低コストであること、ガラケーにもメール発信により通知できることから高齢者の猟師にとっても実用性が高いのが特徴。今後、市販化する予定だ。
カメラを設置して見える化
見回りを軽減するため、そして、イノシシの行動状況を把握し分析するために、通信機能付きのカメラや赤外線カメラを活用。警戒心が強く、賢いイノシシは、なかなか罠に入らない。罠の周りでどんな動きをしているのかを知ることで、イノシシとの駆け引きに活かすことができる。
また、各地の発生状況を画像付きで共有できるので、メンバー間の捕獲に対するモチベーションを上げることにも繋がる。
データ分析とクラウド化
ICT技術を活用することで、データ分析が可能に。例えば、前述の赤外線カメラでの画像を蓄積し、出産、幼獣の行動変化など、季節ごとのイノシシのライフサイクルを分析。
また、メーカーとの共同で、箱罠のクラウドマップを現在、開発中だ。箱罠の設置状況と、イノシシの出現および捕獲データを地図上に落とし込んでいくことで、今後、イノシシの出現予測ができるようになるという。
電気ショックによる止め刺し
箱罠で捕獲したイノシシは、止め刺ししなくてはならない。銃や槍を使われるのが一般的だが、精神的負担を軽減するため、「くまもと☆農家ハンター」では、電機ショッカーによる止め刺しを行っている。
電気ショッカーは「エレキブレードポータブル ELBP-S200シリーズ」を使用。電気ショックでイノシシを痺れさせ、その間に血抜きを行うことで、ジビエ肉としての品質も安定する。
写真・文: 曽田夕紀子(株式会社ミゲル)
AGRI JOURNAL vol.15(2020年春号)より転載