生産者の取組み

農業で地域活性化!ジビエの常識を覆した町の漢たち

農作物の鳥獣被害は年々増加。逆転の発想で「ジビエを地域振興の起爆剤に!」と立ち上がった古座川ジビエ振興協議会。「ジビエでは不可能」と言われた全国ご当地バーガーグランプリで優勝をおさめ、産業・観光振興に成功したのはなぜか……? 農業と地方創生・地域活性化を繋ぐヒントが見えてくる。

ジビエの可能性を
全国に知らしめた町

2017年11月、古座川町の住民を歓喜にわかせるニュースが駆け巡った。農林水産省が主催する、農山漁村活性化の優良事例を選定する「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」(第4回選定)で、見事、ジビエグルメ賞を受賞したというのだ。

ジビエハンターの育成、町内の学校給食でのジビエ提供、ご当地グルメ「里山のジビエバーガー」の開発、狩猟体験やナイトサファリなどの観光客向けツアーの開催など……。新たな食文化の創出や観光振興に成功するまでの道のりは、決して平坦ではなかった。

そこには「産」と「官」の垣根を超え、町役場をはじめ、住民たちが手を取り合ってつないだ食と命の物語があった。

逆転の発想
厄介者を「地域の宝」に

和歌山県にある古座川町は、昭和31年の1町4村の合併当時は1万人いた人口も、現在(2017年12月1日)では2800人程度にまで減り続け、過疎化と高齢化に悩まされていた。

地理は、紀伊半島の最南端に近い内陸部に位置し、名前の由来でもある古座川は二級水系の本流で「日本の秘境100選」「平成の名水百選」「日本の地質百選」に選定されている。特産品は柚子など。

町域の9割ほどを山林地帯が占め、古来より良質の材木を産し「古座川材」と呼ばれていたが、近年林業などが衰退し、山は荒れ、食料を求めてシカが人里へ下るようになった。

「シカ? イノシシ? あいつらかなわんわー。せっかく育てた野菜を食いやがる!」農業従事者は頭を抱える。

野生動物による農作物被害は年々増加し、年間シカ約1,100頭、イノシシ約300頭が捕獲され、そのほとんどが利活用される事なく廃棄処分されていた。深刻な有害鳥獣被害というのは、作物だけじゃなく、農家の意欲さえも奪ってゆく。

これに危機感を抱いていたある男がこんなことを言いだした。「シカやイノシシを資源に、町おこしができないだろうか」。男は、地域を悩ます「厄介者」の鳥獣たちをジビエとして食資源にし、地域の興隆に繋げたいと考えた。

かくして2014年12月、個人会員50名(主婦・飲食店等)と団体会員(古座川町、猟友会、農協、教育委員会、商工会など)が参加し、「古座川ジビエ振興協議会」が発足した。

ジビエはクサい?
地元住民に愛されるために

初年度には衛生的な施設設計・処理方法等を習得。翌年には、狩猟者を対象とした「捕獲個体受入講習会」を開催し、食肉として流通させる為の捕獲・処理方法などを学んだジビエハンターを育成。これにより良質な肉質を確保。

ジビエハンター育成「捕獲個体受入講習会」の様子

同年、パン工房カワ(和歌山・大阪に18店舗を構えている)と共同開発し評判も良かった元祖「ジビエバーガー」を皮切りに、ジビエを学校給食に導入。しかし導入までには、地元住民を置き去りにしない、古座川ジビエ振興協議会ならではの丁寧な広報活動があった。

「ジビエを広めていくにあたり”臭い、美味しくない”というマイナスイメージの先入観をもたれている方の”ジビエの価値観”を変えるところからはじめました」。町役場の振興会会員は、こう当時を振り返った。

「なぜシカ肉を食べるの?」「食べて大丈夫なの?」「どうやって調理していいのかわからない」給食調理員や学校関係者からは不安の声が上がった。ひとつひとつの疑問・不安を理解に変えていかなければ成功はないと、協議会員たちは思った。そして意識改革の戦いは始まる。

1. 地元住民のシカ肉へのイメージを変えるために、古座川ジビエを使った本格的なフランス料理を住民に提供。

オテルドヨシノ手島純也シェフ(第7回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」受賞)

鹿前足の赤ワイン煮込み

2. 教育委員会・学校関係者(校長会等)に給食導入説明

3. 学校への出前授業の実施「鳥獣被害の現状やジビエの取組について」

ジビエバーガー調理実習の様子

4. ジビエ給食導入前調理講習会の実施

給食導入前の調理講習会の様子

5. 保護者にジビエ給食開始文書を送付

地元住民の不安を払拭し理解を得るために、ここまで時間と労力を割いた古座川ジビエ振興協議会の取り組みに、全国から熱い眼差しが注がれた。

現在は、ジビエバーガーのほか、ジビエカレー、ジビエシチュー、ジビエコロッケ等を月1回ペースで学校給食として提供している。

ジビエを使用すると一人あたりの給食費の予算を超えてしまうという課題も、価格の安い部位(ミンチ肉)を使用し、「学校給食地産地消事業補助金」制度を活用し補助を行う(古座川町単独制度)などして解決。平成29年度からは、町内小中学校の「学校給食無償化」も実施された。

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