農家との交流が視野を広げる契機に! 青森県4Hクラブ会長が考える農業との向き合い方
2020/05/14
「青森県4Hクラブ」の会長を務める木村将瑛さんは、豊かな自然観の持ち主。4Hクラブへの参加をきっかけに視野が広がり、やがて農業の本質について考えるようになったという。地域で撮影された美しい写真を交えながら、自身が考える農業の魅力などを話してくれた。
メイン画像:「青森県4Hクラブ」の会長・木村将瑛さん
4Hクラブをきっかけに、
地域の魅力を再認識
青森県の西部にあり、日本海に面した鯵ヶ沢町。世界遺産・白神山地など、貴重な自然環境が残された地域だ。県内のほかの地域同様、リンゴの栽培が盛んで、町内にはリンゴ農家が多数ある。
鯵ヶ沢町で、代々リンゴ農家を営む木村さん一家は、主力であり晩生品種の「ふじ」を筆頭に、鮮やかな赤色が特徴の「スターキング」、甘みと酸味のバランスがいい「ジョナゴールド」、アップルパイをはじめスイーツに使用されることが多い「紅玉」などを手がける。10〜11月にこれらの品種を収穫し、閑散期を活用して梱包した後、関東の市場やジュースメーカーに出荷しているという。
出荷を控えたスターキング
木村さんが管理する圃場。写真は、2019年10月下旬に撮影した主力品種の「ふじ」
「1年の仕事内容にサイクルがあり、作業に過不足がないうえ、収益も安定しています。ただ、長年このスタイルで栽培と出荷をしているので、地元や他県の市場の情報がほとんど入ってこなくて。また、自分にとっての農業が”生活の糧”でしかないことに、疑問を感じた時期がありました」
そんなとき、情報収集と気分転換のため4Hクラブに参加したところ、意外な“収穫”があったと話す。
「4Hクラブで活動していると、他県の農家と話し合う機会がたびたびあります。彼らと交流するうち、他地域の風土や農業に興味を抱くようになりました。また、客観的な視点が得られたことで、鯵ヶ沢町の魅力を再認識でき、より周辺地域が好きになりました」
“地域で季節が移り変わる様子を記録したい”という思いから、現在木村さんは、周辺の各種スポットで自然をモチーフにした写真を撮影している。
農業は、古くより
各国で受け継がれてきた仕事
他県の農家との交流をとおし、視野が広がったのをきっかけに、農業という仕事について考えるシーンが増えたという。
「農業は、世界中ではるか昔から受け継がれてきた仕事です。海外では農業という仕事がどのように捉えられているのか、そして往年は農業がどんなふうに行われていたのか知りたくなり、農業をモチーフにした小説を読んだり、農場を写した古い写真を眺めたりするようになりました。
なかでも米国の作家、ジョン・スタインベックが書いた『怒りの葡萄』という小説に感銘を受けましたね。世界大恐慌と、農業界における資本主義に直面し、故郷を追われた農家の姿を描いた作品です。ストーリーはもちろんですが、農業のディテールがきちんと描かれている点にも興味を惹かれました」
現代の現場では、各種農業機械が導入されており、農薬や肥料も充実しているが、土作り、施肥、収穫といった基本的な作業内容ははるか昔から変わっていない。また、世界各地の農家が、同じようなステップを踏んで作物を栽培している。「こうした事実を前に、“農業は、時も場所も超えて受け継がれてきた稀有な仕事なんだ”と気がつきました。自分自身がまるで、古人や海外の人と繋がっているような感覚も得ましたね」と、木村さんは話す。
自然への畏怖や自然との共存など、現代においては忘れがちなマインドのもと、木村さんは日々の仕事に向き合っている。
「成功を目指して努力するのももちろん大切なことですが、自然への畏怖や感動など、人として忘れたくない感覚も、同じように大切にしたいと思っています」
PROFILE
木村将瑛(しょうえい)さん
1983年青森県生まれ。2001年にリンゴ農家を営む実家で就農し、以降、各種リンゴの栽培を手がける。2017年4月より「青森県4Hクラブ」の会長。趣味は読書、映画、ゲーム、写真(カメラ)、ドライブ、道の駅巡り
※記事中の役職等は取材時のものです。
DATA
文:緒方佳子