高年収の農家も輩出!高機能・高品質トマトのフランチャイズ経営の仕組みは?
2022/03/24
「なかなか儲からない」ことが、農業人口が減少している理由の一つ。では、農業を儲かる仕事にするための、仕組みを作ってはどうか。こうした発想のもと、独自の買取システムを確立したのが「株式会社Happy Quality」だ。代表の宮地誠さんに、その詳細などをお話いただいた。
メイン画像:「株式会社Happy Quality」の代表、宮地誠さん
農業経営におけるポイントは
“確実に作物を買ってくれる人”
「多くの農家が求めているものは、安定収入です。また、安定収入を実現するうえで必要なのは、“ふさわしい価格で、確実に作物を買ってくれる人”です」。
取材の冒頭、「Happy Quality」の宮地さんはこう、農業経営における本質を口にした。しかし、現在の農業の市場では、“ふさわしい価格で、確実に作物を買ってくれる人”はほぼ存在しないと話す。
「多くの場合、価格の決定権は受託販売を行う組織にあり、相場に合わせて作物の買取価格が変わります。また、市場の状況によっては、農家が在庫を抱えてしまう場合もあります」と、宮地さん。
農業経営を困難にする可能性をはらむのが、現在のおもな流通システムだ。「Happy Quality」は、こうした流通システムを甘んじて受け入れることなく、まったく新しい流通システムを生み出した。その流通システムの詳細は、「Happy Quality」が提案している「Happy式マーケットイン農業モデル」というサービスを知れば見えてくる。本サービスの詳細を述べる前に、まず、宮地さんが考える「マーケットイン」の定義をご紹介しよう。
一般的なマーケットインは、「消費者のニーズを把握したうえで、自社のプロダクトに落とし込み、販売すること」を指す。しかし、宮地さんは「消費者のニーズを反映したプロダクトを作るだけでは不十分です。なぜなら、プロダクトが確実に売れるという確証が、どこにもないからです」と鋭く切り込む。
「売れるプロダクトを作ることと、確実に買ってもらえるプロダクトを作ることは大きく違い、作り手側に全く異なる結果をもたらします。私は、確実に買ってもらえるプロダクトを作ることこそ、マーケットインの真髄だと考えています」
絶えず求められる商品を
安定的に栽培するという戦略
「Hapitoma」は、生鮮食品では日本初の、GABA・リコピンのダブル成分の機能性表示食品
こうした前提のもと、生まれたのが「Happy式マーケットイン農業モデル」だ。その仕組みはシンプルで、「Happy Quality」のFC農家が作った作物は、すべて同社が規定の価格で買い取り、前もって契約していた小売店や飲食店に作物を転売するというもの。つまり、FC農家は作物の価格変動や在庫に悩まされることはない。しかも、「Happy Quality」が設定している買取価格は一般的な買取価格よりも高額なため、同社のFC農家になったのを機に年収1千万プレーヤーになった農家(※)もいるという。
(※)30a程度の農地をもつ農家の例
Happy式マーケットイン農業モデル。① 買ってくれる商品をリサーチして『完売品コンセプト』を構築→② データドリブンにより「栽培技術」を開発→③ Happy式栽培手法をマニュアル化→④ 栽培指導による安定栽培→⑤ 農作物の全量買取による収益基盤の確立
作物の高額買取を可能にするポイントの一つが、取り扱っている作物が高品質で、なおかつ市場で絶えず求められる商品である点。「Happy Quality」がFC農家に栽培を依頼している作物は、「ハピトマ」という甘くてジューシー、なおかつ高機能なトマト。生鮮食品では日本初の、GABA・リコピンのダブル成分の機能性表示食品だ。消費者から好まれる作物を通年で扱える点にメリットを感じ、「ハピトマ」を求める小売店や飲食店は数多くいるという。
なお、食味が抜群で、高機能な「ハピトマ」の安定的な生産を支えているのが、「Happy Quality」が開発したマニュアルと技術だ。同社は、データ・ドリブンを活用して高品質なトマトを作るための栽培技術をマニュアル化し、FC農家に共有している。また、病害を最小限に抑える「ロックウール栽培」、AIが算出した量の水が自動で潅水される「AI潅水システム」など、安定した生産を助ける技術と機器の導入も積極的に進めている。
2015年に「Happy Quality」を設立して以降、多岐にわたる取り組みを推し進めてきた宮地さん。同氏を駆り立てるのは、「農業の衰退を食い止めたい」という想いだ。
「後継者が少ないだけでなく、就農してもすぐに辞める人が絶えないのが、農業界の現状です。この現状が作られた理由として、農業が金になりづらい点が挙げられます。ならば『Happy Quality』で、農業で稼げるシステムをつくろうと。農業を年収1千万プレーヤーが続出するビジネスにすれば、たくさんの若手が参入するはずです」。
DATA
株式会社 Happy Quality
住所:静岡県浜松市南区飯田町1567-1(本社)、静岡県袋井市久能1887
2015年に静岡県浜松市を拠点に設立された、青果卸機能も持つコンサルティング会社。「誰でも“稼げる農家”になれるFC式経営モデル」である「Happy式マーケットイン農業」を確立し、個人農家などに提供している。また、農業AIを⽤いた製品開発にも取り組んでいる。
取材・文/緒方佳子