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近未来の物理的防除は「振動」が担う? コナジラミ防除技術、2025年度にトマト用で製品化予定

先月開催された「アグリビジネス創出フェア2023」の出展物のなかから、近未来の物理的防除として期待される「振動」を使用した新しい防除技術を紹介しよう。

振動でコナジラミを退治し
受粉を促進する

アグリビジネス創出フェアとは、産学官が有する農林水産・食品分野などの最新の研究成果を、展示やプレゼンテーションによりわかりやすく紹介することで、研究機関同士や研究機関と事業者との連携を促す場として開催されている「技術交流展示会」のこと。今年は東京ビッグサイト南2ホールにて、11月20日(月)~22日(水)の3日間、開催された。

そんなアグリビジネス創出フェア2023の展示のなかから、「近未来の物理的防除技術」に注目した。物理的防除とは、物理的に行う病害虫・雑草対策技術のこと。侵入防止ネット、粘着板、紫外線などの光といった物理的防除技術は普及しているが、まだ活用されていない物理的防除技術が開発されていた。

本稿でご紹介するのは、農研機構生物系特定産業技術研究支援センターのイノベーション創出強化研究推進事業で立ち上げられた「振動農業技術コンソーシアム」の展示。「SDGsに貢献する新たな植物保護技術研究開発プラットフォーム」の一角に出展していた。

令和2年度イノベーション創出強化研究推進事業(基礎研究ステージ02006A)により、電気通信大学を代表機関として立ち上がった「振動農業技術コンソーシアム」は、トマトの株に振動を与えることでコナジラミ類を防除する技術を開発している。振動には、害虫の発生抑制のみならず、トマトの授粉を促進する効果もあるという。この技術は2022年に「農業技術10大ニュース」に選ばれていたから、ご存知の方も少なくないはずだ。

開発している装置は「磁歪振動装置」と呼ばれる。


コイル中心から手前に伸びた金属を良く見ると、左側の色は濃く、右側の色は薄い。2種類の金属を貼り合わせていることが分かる。

磁場の変化により異なった伸縮をする2種類の金属を貼り合わせた材料を通したコイルに電流を流すと、大きな振動が発生する。2018年の夏期に4週間宮城県のトマト栽培施設で調査したところ、この振動がコナジラミ類の行動制御に有効であることが分かった*1。

「磁歪振動装置」でトマトの誘引パイプに特定の振動を加えると、ワイヤーを伝って作物が振動する。この振動により、コナジラミ類のコミュニケーション阻害や交尾、産卵の阻害に効果が期待できるという。2018 年の冬期に行った実証では、振動を与えることで、振動を与えない場合やホルモン剤を与える場合よりも、果数が多くなることも分かった。




 

施設園芸トマトへの導入は近い!

この「磁歪振動装置」は、コンソーシアムの構成員であり、装置開発の切っ掛けとなった金属材料を東北大学とともに開発した東北特殊鋼から、2025年度中に市販される予定である。東北特殊鋼高機能材料事業部開発営業部主査の藤澤秀麿さんが教えてくれた。

「プロジェクトとしては、トマトなどの野菜を対象に、振動による害虫防除効果と増収効果を実証して、さらに生産性向上も目指しています。また製品販売に向けた事業展開と普及啓発により、社会実装を進めており、イチゴ・きのこ用としての製品化も視野に入れています。

いまだ開発中のため製品に関しては不確定要素が多いですが、コンセプトとしては『農家さんがポン付けできる仕様』を考えています。農家さんがご自身で簡単に脱着でき、しっかり効果を体感できる製品に仕上げたいと思っております。

標準仕様をどのようにするか、が悩ましいところです。極端に言えば、100軒農家さんがいらっしゃれば、100通りのハウス構造や栽培資材、栽培方法があります。1台の『磁歪振動装置』で基本的には奥行50mまで振動が伝わるのですが、間に鉄骨があると減衰してしまい、振動が伝わらなくなります。実証実験では、それぞれ施設に最適化して振動が伝わるように設置していますが、製品化にあたっては標準化が必須。それに向けて試行錯誤しています」

現在、コンソーシアムは、令和5年度オープンイノベーション研究・実用化推進事業 開発研究ステージ(開発重要政策タイプ:05021c3)*2へと発展しており、研究期間は令和5年度~令和9年度の5年間に定められ、新たにきのこの振動農業技術の開発が進められている。今後の研究と社会実装に期待したい。

DATA

*1 令和2年度イノベーション創出強化研究推進事業 振動農業技術コンソーシアム
電気通信大学、森林総合研究所、東北特殊鋼株式会社、宮城県農業・園芸総合研究所、琉球大学、神奈川県農業技術センター、兵庫県立農林水産技術総合センターと、静岡県農林技術研究所、日本工業大学等が構成員。期間は令和2年から令和4年。

*2 令和5年度オープンイノベーション研究・実用化推進事業 振動農業技術コンソーシアム
九州大学、農研機構野菜花き研究部門、宮城県農業・園芸総合研究所、兵庫県立農林水産技術総合センター、静岡県農林技術研究所、福岡県農林業総合試験場、森林研究・整備機構、電気通信大学、東北特殊鋼株式会社が構成員。期間は令和5年から令和9年。


取材・文/川島礼二郎

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