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生産者の取り組み

消費者との関係を変えた、世界のwebサイト

情報交換やネットワーキングのみならず、農作物の売買や資金調達の手段として、食や農業の分野でもオンラインプラットフォームの活用が進んでいる。

農業分野でも重視される
オンラインプラットフォーム

あらゆるモノが過剰に溢れている現代、消費者は、価格や機能、品質だけでなく、作り手の思いや背景にあるストーリーをも重視するようになってきた。このように消費者の嗜好が変化するにつれて、作り手が主体的に情報を発信したり、消費者と直接コミュニケーションしたりする手段としてソーシャルメディアが広く活用され、ハンドメイドに特化したマーケットプレイス『Etsy(エッツィ)』のように、作り手と買い手が直接売買できるオンラインプラットフォームも次々と開設された。また、『Kickstarter(キックスターター)』に代表されるクラウドファンディングプラットフォームでは、一般の賛同者から調達した資金をもとに、ユニークなプロダクトが数多く生まれている。

このような消費傾向は、食の安全性や透明性へのニーズの高まりと相まって、食や農業の分野でも広がってきた。とりわけ、農家と消費者を直接つなぐ手段として大きな役割を担っているのがオンラインプラットフォームである。

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<『ローカル・ハーベスト』に掲載されている農場のマップ一覧>

たとえば、米国の『ローカル・ハーベスト』やオーストラリアの『ローカルファーム・プロデュース』は、品質の高い農作物を栽培する農家を集約させた情報サイトだ。facebookグループとして2015年に創設された『ファーム・ハッツ』には、農家、一般消費者、卸売業者、小売業者、研究者、学生ら、6,200名以上が参加し、食や農業にまつわる情報交換やネットワーキングの場となっている。

また、近年、欧米を中心に、地域の農家が農作物を持ち寄り、消費者に直接販売するファーマーズマーケットが人気を集め、米国では、農務省のファーマーズマーケットリストに登録されている件数が2014年時点で8,268件と、2008年に比べて76%増加した。この仕組みをインターネット上で実現しているのが、米国の『バーンズ・トゥー・ドア』やオーストラリアの『オープン・フード・ネットワーク』、インドの『ファーマー・ジャンクション』などの”農作物版Etsy”ともいえるオンラインマーケットプレイスだ。農家が農作物の販売情報をオンラインプラットフォーム上に投稿し、消費者が欲しいものを選んでオンラインで発注する流れ。中間業者が介在しないため、消費者は”顔のみえる農家”から安心して新鮮な農作物を購入できる一方、農家にとっては、より多くの収益を得られるのみならず、消費者に向けたマーケティングやプロモーションにもつながるのが利点といえよう。

資金調達にも活用!
農業のムーブメントを支える仕組み

農家と消費者の関係をさらに進化させ、新しい食や農業のムーブメントを支える手段として注目されているのが、食や農業の分野へのクラウドファンディングの応用だ。2014年に開設された『バーン・レイザー』では、果樹園の整備や都市型農場の建設など、様々なプロジェクトが目標額を超える資金を調達した。また、インドネシアの『アイグロウ』は、都市居住者がスポンサーとなって農作物の種を購入し、郊外の農家がこれを農地に植えて栽培するというユニークな”コラボ農業”の試みとして話題となっている。
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<食と農に特化したクラウドファンディングサービス『バーン・レイザー』>

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<都市居住者と農家とのコラボ農業を実現するインドネシアの『アイグロウ』>

 

インターネットに接続できれば、場所や時間の制約を受けずに、いつでもどこからでもアクセスできるのがオンラインプラットフォームの強み。情報発信やコミュニケーションのみならず、農作物の売買や資金調達の手段として活用されることで、農家と消費者との”顔のみえる関係”がますます多様に広がっていきそうだ。


Text:Yukiko Matsuoka

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