成功例から見る! ソーラーシェアリングで地域活性
2018/03/06
ソーラーシェアリングのモデルケースとして日本で最も知られる、千葉県匝瑳市。かつて耕作放棄地だった土地を見事に再生させたという、ソーラーシェアリングの成功事例から見えた、地域活性プロジェクトの全貌とは?
ソーラーシェアリングで
耕作放棄地の解消を実現
「この土地は、40年以上前に、山を削って畑にした場所でした。しかし、水はけが悪く、痩せていて、畑には不向きで、15年ほど前からずっと耕作放棄地になっていました」。
そう話してくれたのは、匝瑳(そうさ)ソーラーシェアリング合同会社の椿茂雄代表。この地域代々の農家でもある椿さんにとって、拡大する耕作放棄地は心の痛む問題だった。それは、同社の母体である市民エネルギーちば合同会社の東光弘代表にとっても同様。東さんは、「ソーラーシェアリングの意義は地域活性化の切り札になるところにある」と断言する。
匝瑳市が
生まれ変わった!
地域のお荷物になりかけていたその土地は、いまでは大きな自慢の種だ。2017年4月に誕生した「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」は、本格的なソーラーシェアリングとしては日本初の1MW級大規模太陽光発電所。そしてなにより、耕作放棄地だった土地を、農地として再生させることに成功した日本随一の事例なのだ。
匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所
この土地には複数の所有者がいたが、まずは地元農家である椿さんが、地権者の賛同を得るべく奔走した。こうしたビッグプロジェクトにおいては、地域の合意形成が最も重要な立脚点だからだ。発電設備の構想は東さんが中心となって練り上げ、トラクターも自在に動ける大規模ソーラーシェアリング設備をつくりあげた。
太陽光パネルの下での農作業は、地域の農業生産法人であるThreeLittleBirds合同会社に、年間200万円の耕作委託料を支払い、請け負ってもらう。もちろん、この原資には、ソーラーシェアリングによる売電収益の一部が充てられている。
売電収益は、この他、地域の協議会に環境保全基金として年間200万円拠出される。このお金の使い道は、受け取った協議会の自由。本年度は、廃棄物が不法投棄されている場所をきれいに整備し、花を植えて憩いの場所にするために用いられるという。
DATA
匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所
場所:千葉県匝瑳市
設備容量:1MW
土地面積:約32000㎡
導入年月日:2017年3月
導入費用:約3億円
年間の売電収入:約4700万円
パネルの下で育てている作物:有機大豆、有機麦
text : Kiminori Hiromach
photo : Kumiko Saotome
AGRI JOURNAL vol.06(2018年冬号)より転載