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スマート農業入門の決定版! 病害予測機能搭載のモニタリングツールを試してみた【結果編】

ハウス内環境を見える化するサービスに、病害予測機能を搭載した、設置が簡単で使いやすい『プランテクト』。その実力を測るべく、農家さんに本製品を試していただく本企画。後編となる今回は、実際に使用した感想をお伝えしよう。

前記事:「スマート農業の入門に最適! 病害予測機能搭載のモニタリングツールを試してみた【導入編】」

 

モニターに応募してくれたのは、青森県下北郡東通村で夏秋いちごを育てている濱田さん。都内で11年間会社員として働いた後、当地のいちご農家での研修を経て、祖父から農業を引き継いだ。

下北地域には、夏場になると、やませと呼ばれる風が吹く。そのため全国的に暑さが厳しくなる夏季でも冷涼だ。この気候特性を活かして、同地域では、国産いちごが市場から減少する時期に出荷できる『夏秋いちご』栽培が盛んである。

濱田さんが管理するのは9棟のハウスで、施設面積は3.3a。濱田さんとご主人、それに季節に応じてパートさんの力を借りて、夏秋いちご『すずあかね』と『赤い妖精』を育てている。

濱田さんのハウスがある東通村は、本州最北端となる下北半島の北東部に位置する。北は津軽海峡、東は太平洋と、二つの海を臨む自然豊かな地域だ。年平均気温は約10度と冷涼。冬季には雪が積もる。

次世代農業ツール導入前に
期待していたことは?

プランテクト』は、センサーによるハウス内環境のモニタリングと、AIのアルゴリズムによる病害の感染予測を提供するサービスだ。対応するパラメータは温度湿度、CO2、日射量など。

ハウス内環境を見える化するサービスは他にもあるが、『プランテクト』は圧倒的な設置容易性と病害予測機能、それにリーズナブルな価格設定も特徴。スマート農業の入門に最適なツールであると思われた。

センサーが取得したハウス内環境の情報は、ハウスから離れた場所にいても、スマートフォンやタブレット端末などを介して確認できる。画面表示の見やすさも秀逸だ。(※画像はトマト農家さんの場合)

使用開始前の濱田さんが『プランテクト』に期待していた機能は3点である。

第一は病害予測機能。過去に農薬散布のタイミングを見誤り病気を蔓延させてしまい、ハウス1棟分のイチゴを失った経験があったからだ。『プランテクト』特有の感染リスクを知らせてくれる機能への期待が最も大きい様子であった。

二番目に期待していたのはモニタリング機能。『プランテクト』は24時間365日、何処に居てもハウス内環境を把握できる。小さなお子さんのいる濱田さんはプライベートでも多忙だ。見える化機能で見回りを減らしたい、と願っていた。

最後の三番目は、家族、特にご主人との情報共有である。いかに夫婦とはいえ別人格だから、同じハウスを見ても考えていることが全く違うこともある。『プランテクト』を使うことで、自宅でスマホ画面を見ながら翌日の作業について相談できたら……と期待していた。

プランテクトの導入によって
日々の農作業はどう変わりましたか?

モニタリング機能が安心を与えてくれました!

「想像していた以上に助けてくれたのが、ハウス内環境のモニタリング機能=見える化でした。

我が家には小さな子供がおりますので、作業の合間に保育園の送り迎えをしています。病気などで急な引き取りが必要になることもあります。そのように否が応でもハウスから離れねばならない時があるのですが、もちろんハウスの様子は気になります。

それが、『プランテクト』を導入したことで、ハウスから離れていても状態を知ることができるようになったので、とても助かりました。ご覧のように当地は昨晩から今日に掛けて急に雪が降りましたけど、天気が急変した時にも『ハウスは大丈夫かな?』とスマホで確認できます。

今日までの間、幸いにも大事は起こりませんでしたが、積雪でハウスの天井が抜けてしまうこともあります。『プランテクト』のお陰で外出時にもハウス内環境を知ることができるので、精神的にラクになりました。朝一番に起きたらスマホで確認、というのも習慣になりましたね。

また、ハウス内環境が分かることで、ハウスの見回りをする回数を減らすことができました。これは期待していた効果の一つで、労働効率の向上という意味で大いに役立ってくれました。私は8つのハウスを管理しているのですが、『プランテクト』を入れた1棟を代表データとして活用しています。来期には、残りの7棟にも入れようかと検討しています。

それに『プランテクト』にはお知らせ機能があるので、ハウス内環境が急変したらメールで知らせて助けてくれると思います」

POINT
・ハウス内環境を何処に居ても知ることができるから安心。
・見回り回数が減らせた分、他の作業や育児に時間を使うことができた。
・お知らせ機能があるから急な変化があれば知らせてくれる。

 

★情報共有できるから次の作業をスムーズにできる!

「想像していた通りに機能してくれたのが、主人との情報共有です。

我が家では、農薬散布は主人が担当しているのですが、これまでは二人のうちのどちらかが葉先を見て『まだ大丈夫じゃない?』とか『早く撒かなきゃ危ないよ!』といった感じで、一方のみが持つ不確実な情報をもとに散布していました。これでは客観性に欠けるし、二人の意見が分かれてしまいがちで、お互いストレスになっていました。

『プランテクト』を導入したことで、普段から二人でハウス内環境を数値とか、病害リスクの危険度合いという客観的な形で共有ができるようになったので、来期からは『病害予測は確認した? まだ大丈夫そうだよね』とか『そろそろ散布しないと危ないかも?』といった作業に関するやり取りがスムーズになりそうです。

POINT
・ハウス内環境情報を複数人で共有できるから、共通認識を得やすくなる。
・情報を共有することで次の作業がスムーズになる。

 

★病害予測機能は来期に期待!

「一番期待していたのが病害予測機能。『プランテクト』を設置してから2ヶ月の間、病害予測表示を客観的に眺めることができました。日増しに危機が高まって行く様子が分かったので、来期はお知らせ内容を確認しながら、計画的な農薬散布ができると確信しています。

前回取材時にお話ししましたが、私は祖父から引き継いで農家を始めたのですが、その祖父は、今はほぼ引退した状態。ですので『こうなったら危ないよ!』とか『ここを見れば散布の必要性が分かるよ』といった判断すべき指標もなく困っていました。来期は『プランテクト』の予測が、指導者の替わりになってくれると期待しています」

「これは私のスマートフォンに表示された、病害予測画面です。ご覧のように、うどんこ病に対するリスクの程度が、大中小の〇の大きさで表示されます。設置したのが最終期でしたので『リスク中』と表示されても、今回は農薬散布を行いませんでしたが、幸運にも病害は発生しませんでした。もしもそれが繁忙期なら、撒いていたかも知れませんね。

薬剤を散布したら、作業日と農薬名を登録しておくことができます。これまでは自分たちの感覚で農薬散布をして、それをカレンダーに手書きで記載していたのですが、今後はデータとして、何時、何を撒いたか残しておけるようになりました。無駄なく効率的に散布ができるので、費用の管理もしやすくなりますよね。コスト低減効果にも期待できます」

POINT
・病害予測で危険の度合いを知らせてくれるから薬剤散布時期が分かる
・危険の度合いを数字で知らせてくれるから、指導者代わりに頼りにできる
・農薬散布日や農薬名記録できる

 

実際にプランテクトを使用してみて…


「最初にインパクトを受けたのは、簡単に設置できたことです。これだけの機能を持った製品が、とても小さな段ボール箱一つに収まっていました。3種類のセンサーと通信機の設置も簡単でした。センサーと通信機を繋げる操作も、普段からスマートフォンを使っている方なら問題なくできると思います。これが最初の驚きでした。以前は、先輩から頂いた”見える化”サービスを利用しようと試みたことがありましたが、その時は配線をはじめとした設置の手間が大変でしたから……。

使い始めてからの感想は、先にお伝えしましたように、見回りの回数が減ったこと、主人との情報共有、それに病害予測機能のありがたさを実感しました。病害予測機能は来期に持ち越しですが、充分に機能してくれると確信しています。

他に『使えるな!』と感じたのは、積算温度(収穫期予測)の機能です。今期は利用する機会がありませんでしたが、定植日や温度などから『プランテクト』が計算して収穫期を教えてくれます。収穫期がわかるということは、何時から、どの位の労働が必要になるのか把握できる、ということ。これも来期には絶対に使える機能だと確信しました。

また、各画面の表示が分かりやすい、というのも嬉しいポイントでした。これは特別な機能ではないのかも知れませんが、利用者にとっては大切な部分です。どんなに良い機能があっても、表示が分かり難いと、どうしても使う頻度が下がってしまいます。『プランテクト』は温度や湿度といった各パラメータを違和感なく把握できるように統一した形で表示してくれますし、操作も直感的に行えます。『これは長く使えるな!』と思わせてくれました。

まだ使えていない機能としては、取得したデータを栽培管理に活かす、というのがありまして……本当は『プランテクト』が集めたデータを上手に利用すれば、より良いイチゴを、より多く収穫できるはず。環境は整ったのですが、それを活用する段階には行きついていないのが正直なところです。ここは自分にとっての課題ですね。

実は今、2021年にハウス8棟を増設する計画を立てているのですが、そこにも『プランテクト』を導入しようと思っています。プランテクトなら必要なセンサーだけを買い足すこともできるんですね。それならコスト的にも合いますから、主人と前向きに検討しています」

 


プランテクトについておさらい

『プランテクト』は、センサーによるハウス内環境のモニタリングと、AIを使った病害予測サービスだ。

独自の技術で開発した、温度湿度センサー、CO2センサー、日射センサーで、全てのハウス栽培作物を対象に、ハウス内環境の見える化ができるだけではなく、生産者が困っている病害の感染リスク予測を提供してくれる。

・直感的な使いやすさでハウス環境を簡単モニタリング
各種センサーから収集したデータは、手元のタブレット・スマートフォン・パソコンで、何時でも何処でも確認できる。温度湿度、CO2、日射量など、各項目ごとにモニタリングできるほか、まとめてダッシュボードで確認することもできる。

過去のデータをさかのぼって見ることもできるから、ハウス内環境の最適化に活用可能。品質・収量の向上に役立てることができる。新たに『積算温度』が見れるようになるなど、製品アップデートも積極的だ。

・AI技術の活用により92%の精度で病気の発生を予測

ボッシュ独自開発のアルゴリズムにより、計測したデータから病害発生に関する要素を解析。92%の精度でトマトの病気(灰色かび病、葉かび病、うどんこ病)、キュウリとイチゴの病気(うどんこ病)の感染リスクを通知してくれる。

リスクの大きさは〇の大きさ大中小で表示されるから分かりやすい。危ないときにだけ農薬を撒けるから、無駄な労働が減り、農薬使用量を抑えることにも繋がる。

・届いたその日からすぐに使える
Wi-Fiでデータを取得するため、ハウスに設置するセンサーにはアルカリ電池を入れるだけですぐにモニタリングを開始できる。電源や通信のためのケーブル工事は一切必要ない。濱田さんは撮影をしながら設置してくださったが、1時間弱で使用を開始できた。

 


今回、夏秋いちご農家の濱田さんが『プランテクト』をモニターしてくれたが、その感想は上々だったと言える。簡単にハウスの見える化を始めることができ、また病害予測機能を搭載。使い勝手も良好。そして価格も決して高くはない。

『プランテクト』はスマート農業入門の決定版と断言できる優れたサービスであると結論付けたい。

 

<製品概要>
Plantect®

DATA

プランテクト公式サイト


Photo >> NATSUKI MATSUO(NAOTO OHKAWA Photography, inc.)
Text >> Reggy KAWASHIMA

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