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データ共有で収量アップ&地域農業の活性化! 話題のハウス内環境制御システムの実力は?

ハウス内環境を見える化して、そのデータを仲間で共有することで地域全体の収量を上げ、農業を盛り上げようと、JA福岡市いちご部会に所属する若手イチゴ農家で行われている取組み。気になる「見える化」の効果とは?

福岡市で“あまおう”を題材に
実証実験継続中

JA福岡市いちご部会に所属する若手イチゴ農家の有志『Strawberry Discussion Club(SDC)』が、『福岡市実証実験フルサポート事業アグリテック』の一環としてスマート農業の実証実験を行っていることを前号でお伝えした。

19人いるSDCメンバーのうちの3人(藤野さん、中尾さん、楢崎さん)のハウスにディーピーティー株式会社が提供するe-minoriを設置。ハウス内環境データを残りのメンバーに共有して、それを参考にすることで地域全体の収量を上げて、あまおう産地を元気にしよう、という取組みだ。

『e-minori』は、温度・湿度・CO2濃度などのハウス内環境のほか、土壌の情報、それにハウス外の一部情報を測定できる。取得データはクラウドにアップされるが、それを設定により許可した複数端末で閲覧できる。またスマホ等で制御ノードを操作することで暖房機やCO2発生器、電磁弁等の遠隔操作が可能。これは設置したメンバーのみが得られるメリットだ。その効果について、SDC会長の藤野さんが教えてくれた。

「私は自動換気を入れていないから、ハウスをそれほど頻繁に開閉しません。自動換気を入れている他の2人と見比べると、それが温度やCO2濃度に影響していることが分かりました。来期からは自動換気にして、より小まめに制御していきます」。

一方、メンバーの中尾さんは別のメリットを感じていた。「楢崎さんのデータを参考に土壌水分・ECを管理してみたら、イチゴの味と食感が上がり、輝きも増しました。収量はこれからですが、品質向上は確実に実感できています。また、一度、換気システムに不具合があって、ハウス内温度が40℃を越えてしまったことがありました。それにメンバーの藤野さんが気付いて電話をくれたお陰で、被害を最小限に留めることができたんですよ。

データを共有している16人のメンバーとは、より具体的で高レベルな話が出来るようになりました。前提条件の説明が不要だから、『何故あの設定にしたのか』『どんな結果だったのか』といった、今までより一歩踏み込んだ話題で盛り上がっています。産地としての実力が確実に一段上がりました」。


中尾さんのイチゴは、「世界一重いイチゴ」としてギネス世界記録に認定されている。

今後メンバー全員の収量増を目指していくが、開始半年の現状でも品質の向上は実感できている。また、情報共有により収量減を防げたこと、高いレベルでのコミュニケーションが増えていることなど、当初期待していた以外のプラス効果も出ているようだ。福岡市の都市型農業のさらなる活性化に期待したい。
 

 

実証実験スケジュール

Start! 『e-minori』を設置


それぞれの圃場にe-minoriの各種センサーを設置。

作業内容を日誌機能に記入


ハウス内環境をクラウドでチェック・遠隔操作。日誌機能では作業記録を記入。

メンバー内でデータを共有


それぞれのハウス内環境のデータをメンバー内で公開し、参考にする。異常に気付けるメリットも。

収量を確認


公開し合ってきた環境設定の結果である収量を、メンバー間で確認。SDCの楢崎さんは、「データを公開する代わりに他のメンバーのハウス内環境を参考にできます。持ちつ持たれつです」と語る。

収量の多い圃場に環境を合わせる


同地域の生産者がメンバーだから環境条件は比較的近いが、CO2 濃度と土壌水分には個人差がある。その2つのパラメータを主に参考にしつつ、メンバーがトライアンドエラーを繰り返している。

省力化などの事例共有


『e-minori』を設置したメンバーは、制御ノードを操作することで遠隔操作を実施しており、省力化を体感している。換気システムの不具合による被害を食い止められたのは、離れた場所でもハウス内環境を知ることができた結果だ。

全体の収量をアップさせる


GOAL!
収益率UPへ!

 

 

福岡市実証実験フルサポート事業


福岡市は社会課題の解決や生活の質の向上などを目的とした「福岡市実証実験フルサポート事業」のなかで、AIやIoT等の先端技術を活用した「アグリテック」に関する実証実験プロジェクトを全国から公募。優秀なプロジェクトについては、福岡市での実証実験を全面的にサポートしている。
 

右から
福岡市農林水産局 政策企画課 坂本係長/ディーピーティー株式会社 R&D事業部 事業開発室 営業グループ 石原さん/Strawberry Discussion Club(SDC)石田さん、楢崎さん、会長の藤野さん、中尾さん/福岡市農林水産局 政策企画課 吉村さん
 

e-minori

ハウス内設置イメージ

ハウス内環境の測定と制御をリーズナブルに実現するのが『e-minori』。ハウス内外と土壌の情報をセンサーで測定してクラウドにアップ、スマホ等から確認できる。スマホ等の画面で制御ノードを操作して暖房機やCO2発生器、電磁弁等を遠隔操作できる複合環境制御サービスだ。工事不要の簡単設置も長所。
 
システムイメージ

 

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TEL:0120-004-018
dpt-shop@dpt-inc.co.jp

 

 

問い合わせ

ディーピーティー株式会社

TEL:0120-004-018


写真: Yuki Katsumura 
文:川島礼二郎

AGRI JOURNAL vol.15(2020年春号)より転載

Sponsored by ディーピーティー株式会社

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