【農業初心者でも安心】雑草識別&病害診断ができる、AIアプリの実力とは!?
2020/07/07
農作物に被害を及ぼす病害虫や雑草を、写真からAIが診断し、有効な薬剤情報を提供するスマートフォンアプリ『レイミーのAI病害虫雑草診断』。その実力を探るべく、栃木県大田原市の若き水稲農家・阿久津清尚さんがアプリを初体験。実際の使い心地について訊いた。
農業と学業の二足の草鞋を履き
農業の楽しさを伝える
栃木県大田原市にある稲作・畑作農家の家に生まれ、物心ついたときから農作業に親しんできたという阿久津清尚さん。
中学時代から本格的に農業に取り組み、農業高校では農業経営について勉強。栃木県農業大学校に通う現在は、学業の傍ら、実家の農家仕事を引き受け、12町歩の水稲を祖父と2人で管理しているという。18歳という若さながら、熱意、行動力、経験を備えた、将来有望な若手農家だ。SNSを積極的に使い、農カルチャーの情報発信にも余念がない。
「高齢化が進む農業に強い危機感を持っているので、同世代やその下の世代に農業に興味を持ってもらい、若いネットワークを増やしたい。そして、非農家の若い子たちに農業を体験してもらって、農業の面白さ、かっこよさに触れてもらい、農家を目指してもらえたらいいな、と考えています。そのために自分にできることは、なんでもやっていきたい」(阿久津さん)
同世代の農家達と立ち上げた「有志団体農と共に」の代表も務める阿久津さん。未来の農業のために、積極的な活動を行う。
農業は、長らく「経験値」がものをいう世界だと考えられてきた。そのため、新規就農者や若手は苦労も多く、仕事の大変さが楽しさを上回ってしまうケースも少なくない。
そうした状況を打開するツールとして近年、注目を集めているのが、ICT技術だ。阿久津さんもドローンを用いて圃場を撮影し、雑草状況を把握するなど、気になる道具や技術があれば、積極的に取り入れているという。
写真を撮るだけで
AIが稲の異変を診断
そんな阿久津さんが興味を持ったのが、2020年6月にリリースされたスマートフォン用アプリ『レイミーのAI病害虫雑草診断』(開発:日本農薬株式会社)だ。農作物に被害を及ぼす病害虫や雑草を、写真からAIが診断。有効な薬剤情報を提供してくれる、スマートフォン用の防除支援ツールである。
ベテランでも苦労する病害虫・雑草の識別、薬剤の選別について手助けをしてくれるという画期的なアプリケーションで、“経験値”の少ない新規就農者にとって強い味方になるのはまちがいない。阿久津さんも「実用レベルなら、すごい技術」と、お試し前から大きな期待を寄せていた。
早速体験スタート!
雑草を発見して撮影
瞬時に診断してくれる
いつもはドローンで撮影し、大まかに雑草状況を把握しているという。早速小さな芽生えを発見し、スマホで撮影!
早速、圃場でアプリの実力を体験することに。判別の難しそうな小さな芽生えを撮影し、「AI診断」をタップすると、AIの自信度順にいくつかの雑草が表示された。さらに、その診断結果にもとづき、防除に有効な薬剤の一覧が表示される。その手軽さに、阿久津さんも驚く。
診断結果から雑草の生長ステージを選択してタップすると、有効な薬剤情報を一覧表示。
食害痕から害虫をつきとめる
山際の圃場へ移動すると、きれいに整備され、雑草はほとんど見当たらないものの、稲の所々に食害痕が確認できた。
食害痕だけでどの虫によるものかを判別するのは、新規就農者には高いハードルだが、そんなときも簡単に診断が行えるのがこのアプリの強み。食害痕だけではなく、もちろん、虫生体の写真から診断することも可能だ。
稲を食害していたイネミズゾウムシ。生体、食害痕のいずれからも診断可能。
診断結果は、イネミズゾウムシ。例年、被害は少ないため、特別な防除はしていないそうだが、「よくよく観察すると、けっこう痕があるのだと思った。うちの圃場では病気や虫はあまり出ないんですが、もしも出てしまったら、経験がないだけに識別も難しいし、焦るだろうなと思いました。そういうときにも、このアプリは活用できますよね」と阿久津さんは、手応えを感じていた。
有効な薬剤を一覧表示
比較検討もカンタン!
薬剤は、日本農薬株式会社、日産化学株式会社、三井化学アグロ株式会社、日本曹達株式会社の四社製品から、多彩な選択肢を提案。農薬の簡単な解説や注意事項が確認でき、その場でお気に入りに登録できるため、あとからの比較検討も容易だ。今後は、すぐに購入したい人に向けて、位置情報から最寄りの販売店を紹介する機能も追加される予定だという。
アプリの開発元である日本農薬株式会社の農学博士・岡田敦さんが、新機能について説明。「アプリから、最寄りの販売店が見られる予定なんですよ!(岡田さん)」「それは便利ですね! 今からリリースが楽しみです(阿久津さん)」
「今は、雑草が出るとJAさんを頼って、現場を見てもらい、アドバイスをもとに薬剤を買っています。でも、農繁期はすぐに対応していただくのは難しいですし、タイムラグが生じる可能性もあります。雑草が育ってしまうと、その分、まける農薬も限られてしまう。アプリによって時間のロスを防げるとしたら、非常にいいですよね」(阿久津さん)
阿久津さんの感想
通常、除草剤は初期剤、中期剤の2回かけています。JAさんに相談して、オススメの薬剤を入手し、それがよかったら翌年も使う。抵抗性雑草発生対策のため2年経ったら、また違うものに変えるということを繰り返しています。
雑草のAI診断では、瞬時に色々な可能性を示してくれるので、診断結果をもとに対策を検討できるのは便利ですね。そうすれば早期に対応できますし、有効な農薬を適正な時期にまくことができれば、結果的に減農薬にも繋がると思います。
若い担い手を増やすことが自分の目標の1つであり、現在は、不登校の子ども達と一緒に耕作放棄地の再生プロジェクトを計画しています(クラウドファンディング実施中)。非農家で未経験の若い人たちにとってもこのアプリは実用性が高いし、知識習得の手助けにもなると思いました。
撮影場所、診断場所の履歴をマッピングして記録する機能がとても便利ですが、自分はドローンを使って撮影することも多いので、今後、ドローンの履歴にも対応してくれるようになったら嬉しいです。
阿久津さん(左)、岡田さん(右)
問い合わせ
『レイミーのAI病害虫雑草診断』
日本農薬 技術普及部カスタマーサービス
TEL:03-6361-1414
問い合わせの際は、「アグリジャーナルを見た」とお伝え下さい。
文・写真:曽田夕紀子(株式会社ミゲル)
Sponsored by 日本農薬株式会社