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【J AGRIレポート】最新のモニタリングシステムや通信回線の登場で農業の課題解決へ

2024年5月22日(水)〜24日(金)、J AGRI(旧農業WEEK)がグランメッセ熊本で開催された。今回は、270社の出展の中から編集部が注目した3つのシステムをご紹介しよう。

<目次>
1.J AGRI開催!農業DXを支える最新デジタル技術
2.畜産業界注目!AIで検知 牛の分娩通知システム
3.農業生産者と一緒に開発!電源・ネット不要の遠隔カメラ
4.スマート農業を支えるソニー独自の通信技術


J AGRI開催!
農業DXを支える最新デジタル技術

5月、九州で二回目となるJ AGRI(旧農業WEEK)が開催された。前回同様、好評を博したJ AGRIは、日本だけではなく世界中からの出展があり最新の技術や製品が集結する。J AGRIは、農業資材、スマート農業製品、畜産資材、6次産業化製品、脱炭素・SDGs製品の5展で構成されており、5月にグランメッセ熊本で開催された展示会では、その中の農業資材、スマート農業製品、畜産資材の3つの構成で270社が立ち並んだ。

農業・畜産の総合展ということで、多くの農業関係者から注目を集め三日間で10,665人が来場した。最新の技術に着目した農業関係者たちは、環境の変化や時代の変化の流れに対応すべく最新の技術を見て学び、各ブースでは活発な商談が行われていた。

今回は、そんなJ AGRIで編集部が注目した3つの農業DXを支える最新システムをご紹介しよう。

畜産業界注目!AIで検知
牛の分娩通知システム

カメラで有名な光学関連機器の大手メーカーであるNikonが、映像の新規ビジネスの立ち上げを目的として設立した「映像ソリューション推進室」にて開発した畜産向けのライブモニタリングシステム「NiLIMo」が今年1月に発売された。

この「NiLIMo」は、ネットワークカメラの映像とAIを活用し妊娠した牛の分娩兆候や分娩開始を検知して通知するシステムだ。繁殖農家向けに開発された「NiLIMo」は、分娩房に2台のカメラを設置し、事務所などにAI演算装置とレコーダーを設置するだけで、分娩の兆候や開始を6つのプロセスに分けて検出しスマートフォンアプリに通知が行われるというシステムだ。さらにライブビューで表示するだけではなく、個体情報、繁殖情報、血統情報を牛の個体ごとに管理することができる。

このライブモニタリングシステムにより、分娩時の事故回避による経済損失、また分娩監視などの労働負担軽減が期待される。さらに、このデータは複数人で同時に離れた場所で牛の状態を観察できるため、家族だけでなく農場スタッフや獣医師と共有することも可能だ。こういったAIの技術を活用した最先端のスマート農業の導入により、農家の労働力不足の解消や経営改善を図る取り組みは、今後どんどん進化していくだろうと予想される。

問い合わせ

株式会社ニコン
NiLIMo

農業生産者と一緒に開発!
電源・ネット不要の遠隔カメラ

栃木県にある株式会社farmoは、IoT製品……つまりインターネットを活用した機器製品やサービスの開発・販売を行う会社。農家のためのIT企業として、数々の製品とサービスを提供している。

たとえば、施設園芸のための温度・湿度・炭酸ガス濃度などのハウス内環境を確認できる「ハウスファーモ」や、水田の水位を確認し入水や給水ができる「水田ファーモ」などだ。

同社が今回新たに開発したのが電源・ネット環境不要で始められるクラウドカメラFIELD SHoT(フィールドショット)。「多くの機能はいらない。ただ1日1回畑の様子が見れたらいい。」そんな農家の声から生まれた商品だ。

このFIELD SHoTは、ファーモアンテナという独自のネットワークインフラを利用して全国で利用が可能で、もし通信エリア外の場合でもファーモアンテナの無償貸し出しがあるため本体購入後、設置してすぐに利用することができる。写真も約1000枚分撮影が可能で、もしそれ以上の写真を撮影したい場合は追加でデータ購入することも可能だ。

生産者の時間も労力も削減できるこちらのFIELD SHoT、今後は畑だけではなく河川の確認や工事現場の確認など様々な場所で活躍が期待できそうな商品だ。

問い合わせ

株式会社farmo
FIELD SHoT

スマート農業を支える
ソニー独自の通信技術

スマート農業に欠かせないIoT機器だが、その機器を使用するためにはネットワーク回線が欠かせない。今回、編集部が注目したのはソニー独自のIoT機器のためのネットワーク「ELTRES™(エルトレス)」だ。

ELTRESはLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる通信規格の一つで、LPWAとは携帯電話などで使用されているLTEとは違い、電話や画像データではなく少しのデータでのやりとりによって、電力消費が少なく通信距離が広範囲であることが特徴だ。ELTRESはデータの送信のみという一方通行の回線。そうすることで他のLPWAとは異なり「安定通信」「長距離伝送」「低消費電力」「高速移動体対応」などのメリットが得られるという。またGNSSという衛星測位システムがデフォルトで搭載されているため、位置情報も特定することができる。

ELTRESを活用したスマートロジック社によるクラウド型データロガー

農業IoTでは、このELTRSを利用した水田の水位を検知するセンサーや罠監視システムなどが活躍している。今回のJ AGRIの開催地である熊本でも米農家が水田水位検知センサーを導入し、水位の可視化・データ化によって害虫や雑草の被害抑制や、田んぼの巡回時間の短縮につながっているという。今後もソニーは、端末・アプリ・クラウド等を活かしたIoTソリューションセットで農業の現場を変えていくだろう。

問い合わせ

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
ELTRES


取材・文/Lato

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